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CIOE2016レヴュー

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 中国の多くの重工業系市場は「新常態(ニューノーマル)」という名の停滞期を迎え、多くの産業界で激しい競争と淘汰が起こっている。そして、その中の政府援助を受けた勝ち組は海外大手企業まで買収し、新興国を含む世界市場を見据えた販促活動を既に展開している。中国の大手家電メーカーグループの美的集団が、今年になって東芝の白物家電事業や自動車用FA・ロボット業界トップと言われるKUKAを買収したのはその代表的な例だ。いずれにせよ、中国大手企業の動向は、そのスケール(規模)性において世界市場に実に大きな影響をもたらすものとなっており、今回のCIOEではそのことを改めて痛感させられた。

 昨年までのFTTHブームを反映してFTTH関連製品の展示が多く見られたが、中国国内のFTTH需要は減退の様相を見せ始め、データコムや10~100G超の光通信デバイスなどその他の市場展開を見据えた展示も多く見られた。国内光通信の設備投資は減退しても、華為(ファーウェイ)や中興(ZTE)の大手SIerは新興国向けに輸出好調なので、内需と外需を区分する視座が必要となるだろう。

FTTH製品ベンダの台頭と価格下落

会場風景

会場風景

 中国政府が「寛帯中国(ブロードバンドチャイナ)」戦略のもとに、一昨年から昨年にかけて推進してきたFTTH需要の名残を受けて、今年の会場内でもFTTH用途の光融着機や各種部材の展示が目立っていた。しかし、昨年こそ遅れていたFTTH投資を優先するために基地局建設数を減らしてはいるが、ブロードバンドチャイナの本筋はあくまでモバイル投資だ。今年以降は中国国内のFTTH投資は減速していき、それに伴って携帯基地局或いは北米データコム及び次世代PON向けのコンポーネント・デバイス製品の出荷が目立ってくると見られている。それを裏付けるように、光各種コンポーネントのキーデバイスとなる光アイソレータの原材料であるガーネット結晶出荷の動きは、一昨年及び昨年に大きく動いたFTTH向けの1310μm帯にブレーキが掛かり、携帯基地局、LH、次世代PON向けと思われる1550μm帯結晶の動きが活発になっている。また、会場内でもデータコム向けMTフェルール/MPOコネクタの他に、ファーウェイやZTEに向けた光デバイス各種の展示が年々増加してきていた。
 チャイナテレコムやチャイナモバイル等の通信キャリアは、公式発表や日中のメディアで見られるほど業績好調という空気は無く、出展企業からも特にFTTH関連製品の出荷量は明白に前年より減少しているとの声が目立った。既に出ている入札案件も、現地企業からは昨年出荷し切れなかった在庫を宛がう話もある。また、別キャリアの設備投資案件の噂も現状ではローカルベンダの希望的観測に過ぎず、確たる根拠が見えてこないのが実情だ。しかし、通信キャリアの動きが活発でなくとも、展示会のメイン来場者となるファーウェイやZTEが北米のSaaSや新興国向けに出荷好調であることは昨年までと変化が無い。今年のOFCでもユーザ、サプライヤ、製品トレンドの変化が顕在化していたが、ユーザが(北米)通信キャリアから民間のデータコムへ主役が移り変わったのを契機に、サプライヤの主役は中国SIerへとまた移り変わっていた。北米のデータコム市場は相変わらず順調で、近年ではハイパースケールデータセンタ(HSDC)間を結ぶ400G/1T伝送の話が市場を賑わせている。今回の会場でも、ファーウェイやZTEに向けたハイエンド製品から10~25Gデバイス向けモジュール等は多く展示されていた。中国国内のデータコムは、昨年より中国の大手サービスプロバイダBAT(百度; Baidu、阿里巴巴; Alibaba、騰訊; Tencent)向けに動いてはいるが、まだHSDC程の規模とは言えない。しかし、BATは資金が潤沢ゆえ今後の成長が期待されるだろう。
 また、来年は選挙イヤーの終わる米国で通信キャリアの10G-EPON或いはNG-PON投資が動くと目されているが、一方で各国の通信キャリア主導のもとにFTTH化が進んでいた欧州が選挙イヤーに突入することでキャリアの設備投資減が見込まれており、欧州通信キャリアと深い関わりを持ち、共依存関係ともなっている中国SIerにも少なからぬ影響はあると思われる。

規模を追求する中国大手ベンダと価格破壊

 現在、中国において以前より問題になっているのは過剰供給と価格下落であり、近年は中国大手ベンダが世界規模でそれを一層推進している感がある。潮州三環(スリーサークル)は光コネクタ用フェルールの最大手で、生産能力は世界全儒(月あたり推定1億数千万本)を超える2億本と言われており、現在も1億本の在庫を抱えつつ1億2千万本を生産している。それにも拘らず、スリーサークルは世界シェア9割を確保するために昨年の1人民元/本から0.5人民元まで価格を引き下げており、もはや日本企業はもちろんスリーサークルを含めたどの企業も利益確保が出来ない状況となっている。つまり、一時の利益確保よりもスケール(規模)によるシェア確保を優先しており、新興国への進出もかまびすしい。この市場戦略に規模で劣る日系企業が対抗するのは容易ではない。さらにスリーサークルは、企業買収によりMTフェルール/MPOコネクタの自社製造(現在8心のみ)も開始しており、今後の精度次第ではこちらの価格破壊も懸念される。圧倒的シェアを誇るUS Conecを除きMTフェルールの供給は日本企業で占められているが、スリーサークルがシェア簒奪に乗り出してくることはほぼ確実だろう。製品群拡大を続ける規模至上主義のビッグベンダが主導する価格競争は、今後地域的にも製品群的にも広範囲でますます熾烈を極めることが予想される。

日系ベンダの展示風景

 昨年同様、日系企業では多心コネクタ関連製品の展示が目立っていた。MTフェルール/MPOコネクタについてはSENKO、日新化成、三和電気工業、サンコール、古河電工(OFS)、研磨機等の関連製品ではNTT-ATや精工技研が展示をしていた。従来のフェルール/コネクタに関しては、従来の48心までのラインナップの他、今年のOFCやFOEで散見されたように16心や32心のラインナップを拡充する準備を進めている会社も多いようだ。古河電工は「特殊MTフェルール」と銘打って薄型タイプ、底面フラットタイプ、ファイバ選択タイプ等を紹介していた。MTフェルール/MPOコネクタも一部の品種では近年価格下落が進んでいるが、付加価値をつける提案をすることで顧客へのアピールを図る構えだ。
 住友電工とフジクラは光融着機の展示がメイン。FTTH市場は今後の減速が心配される上に、ローカルベンダを巻き込んだFTTH向け融着機の価格下落が激化しているが、両社によると直近の出荷の動きはまだそれなりのようだ。ローカルの中には「藤友」といった住友・フジクラ両社の企業名を連想させる製品ブランドを立ち上げたり、中国国内では最大シェアを誇ると噂されている韓国のInno Instrumentが横河メータ&インスツルメンツのベストセラー製品を模倣したOTDRを出してくるなど、海外企業各社は形振りを構わなくなってきた感がある。まだまだFTTH市場は低価格帯の各製品群で混迷を極めそうだ。
 出展常連組の三菱電機は、メトロ/アクセス/データセンタ間向けに各種デバイスを紹介していた。新製品で10G-EPON向け「10G DFB/APD TO-CAN」、2017年2Qに市場投入を見据えた、データセンタ間向け「100GコンパクトインテグレイティッドEML-TOSA/APD-ROSA」、データセンタ&フロントホール向けに「25G DFB TO-CAN for SFP28」等に注目が集まっていた。京セラは初出展。データセンタ向け(データセンタ間含む)、PON向け、イーサネット、DWDM(メトロ&ロングホール)など各市場向けに各種セラミックパッケージの製品群やロードマップを展示、コンポーネント内製化に余念が無い中国大手SIerには好評だったようだ。同社の割スリーブとレセプタクルと併せた「LD/PD ミニテイルドパッケージ」(10G,25G.QSFP28)や「LD/PD TO-CANパッケージ」等に注目が集まっていた。17~18年には、400G向けのオンボードモジュール(データセンタ向け)、PAM-4(PON向け56GBaud)、16QAM(ロングホール向けMicro ICR)等への見通しも紹介していた。

                        OPTCOM 井上 政基

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