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アイ・ピー・エスとスカパーJSATが、フィリピン国内における衛星インターネット接続サービスを開始

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衛星通信×風力発電でSDGsへ貢献

 アイ・ピー・エスとスカパーJSATは3月22日、スカパーJSATの衛星によるインターネット接続サービスを、アイ・ピー・エスの連結子会社であるInfiniVAN (インフィニバン)を通じて、フィリピン国内で提供を開始したと発表した。

 導入第1号となるフィリピン北部のバタネス州バタン島では、風力発電設備の遠隔監視システムに加え、周辺地域のデジタル・ディバイド解消のための回線として利用が進められている。
 スカパーJSATとアイ・ピー・エスは「この取り組みを通じて、衛星通信と再生可能エネルギーを組み合わせ、地域のデジタル・ディバイドを解消することでSDGsの達成に貢献していく」との考えを示している。

展開エリアの風景

 フィリピンの農村地帯や島しょ部には、光ファイバなどの高速通信網が未整備なエリアが多く存在している。新型コロナウィルスの感染拡大を機にオンライン授業やテレワークが普及するのに伴い、ブロードバンド環境を速やかに設置し利用開始できる衛星インターネット接続サービスの需要も増加している。
 これまで、InfiniVANはフィリピンの都市部を皮切りに大容量インターネットサービスのための基幹通信回線網を拡大してきたが、スカパーJSATが提供する衛星インターネット接続サービスがサービスラインアップに加わることで、携帯基地局の建設などの大規模な設備導入を行わずに、都市部と地方の広域で高速インターネット需要に応えることができるようになる。

 今回の衛星インターネット接続サービスでは、2020年に運用を開始したスカパーJSATの新衛星「JCSAT-1C」が使用される。JCSAT-1Cは、High Throughput Satellite(高速大容量衛星:以下、HTS)システムの採用により、従来型の衛星に比べ通信容量を大幅に拡張させた次世代型の衛星で、高品質かつ低コストで衛星インターネット接続サービスを提供することができる。
 スカパーJSATはJCSAT-1C用にインターネット ゲートウェイを含むサービス制御設備を横浜衛星管制センターに構築した。この設備とHTS回線で構成するインターネットバックボーンをInfiniVANにVirtual Network Operator(仮想通信事業者、以下VNO)方式で提供する。これにより、InfiniVANは、最低限の設備投資で衛星インターネット接続サービスをラインアップに加えることが可能となる。
 スカパーJSATが整備したサービス制御用設備は、100%再生可能エネルギー由来の電力を使用して運用されるという。

スカパーJSATのJCSAT-1C衛星


サービス概念図

 今回の衛星インターネット接続サービスは、日本の風力発電ベンチャーであるチャレナジーがフィリピン北部バタネス州バタン島で取り組む「再生可能エネルギー導入プロジェクト」向けに3月から導入され、風力発電機の遠隔監視システムで利用されている。チャレナジーの風力発電技術は、強風下でも安定的に発電できることが強みで、強い台風に見舞われることの多いフィリピンに適した再生可能電力インフラとして期待されている。
 アイ・ピー・エスとスカパーJSATは「今後チャレナジーとも連携を進め、電力・通信インフラが脆弱な地域へ、クリーンな電源と衛星インターネット接続サービスを組み合わせたソリューションを検討し、通信と電力供給の安定化による生活基盤改善や災害対応力の強靭化、教育・医療の充実などに貢献することで、SDGsの達成をめざす」との方針を示している。