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世界のコネクティビティを支えるアダマンド並木精密宝石【1】

INTERVIEW 有料

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 2023年1月より社名を「Orbray(オーブレー)株式会社」に変更する、アダマンド並木精密宝石。同社の主力部門の一つであるフォトニクス事業は、1980年代以降、光ファイバ通信の普及とともに拡大し、工業用宝石の加工技術を応用したフェルールは世界トップシェアを獲得したこともある。
 フェルール市場は固定通信にとどまらず、多様な光デバイスに広まっており、多くのアンテナ基地局を必要とする5Gでも需要は急速に拡大。また、リモートワークや動画配信サービスの普及、GAFAMやBATHといった米中巨大テクノロジー企業によるデータセンタ構築でも、フェルールの需要は増加の一途を辿っている。
 アダマンド並木精密宝石はフェルール単体の生産にとどまらず、フェルールを組み込んだコンポーネントや光デバイスの生産に進出し新製品を市場に送り出してきた。最近では、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)によるBeyond 5G研究開発促進事業の委託研究や、海底等のULHやデータセンタ、IOWN構想に向けたMCF用調心コネクタといった新技術も注目を集めている。
 今回のインタビューでは、アダマンド並木精密宝石 代表取締役社長の並木里也子氏より、同社の近況と今後の展望について伺った。

世界の光通信を支えているコネクティビティ

アダマンド並木精密宝石
代表取締役社長
並木里也子氏

OPTCOM:御社の光通信市場での取り組みを教えてください。
並木氏:
光通信市場における弊社の出発は、光コネクタで使われるフェルールです。国内外で恵まれた顧客層からご要望を頂いており、技術開発、製品化を実現するというマーケットインを基本のスタイルとして取り組んできました。
 光通信分野における弊社の強みは、このフェルールの技術をベースにした接続技術、いわゆるコネクティビティにあると考えています。開発の方向性は単なる部品販売に留まらず、上位レイヤの付加価値にも注力しています。ただ、付加価値に注力すると言っても、高価格の製品をリリースするということではなく、例えばリリースできなくても顧客やその先のエンドユーザの技術的立ち位置を理解して、自社製品や次のビジネス展開に活かすことができると考え、取り組んでいます。フェルールから製品を広げるビジネス活動の中、エンドユーザの満足度に重きを置く方針が揺らぐことは無かったので、これがマーケットにおいて弊社が生き残っている背景の一つであると考えています。
 また、弊社は非上場のオーナー企業ということもあり、顧客やエンドユーザから見てどこの企業グループにも属していない点も特徴と言えます。IEC、IEEEといった標準化団体にも参加しています。

アダマンド並木精密宝石の光通信用フェルール。同社がその開発を始めたのは1978年。同社には、電気メーターや時計に使われる軸受け宝石の製造によって培った硬い素材に正確に穴を開ける技術があり、国内通信事業者からその技術を活かしたフェルール製造の依頼があったという。光ファイバ通信の黎明期だった当時、加工する機械、検査する装置など、市場に無いものは全て内製し、加工方法に工夫を重ね、精度を高め、2年後の1980年に要求された精度のアルミナ製フェルールの製造を開始。そして、1987年にはアルミナよりも強度・粘り強さのあるジルコニアセラミックスを使ったフェルールが誕生し、現在に至る。日本が世界に先駆けてFTTHを展開できた背景として、こうした日本企業の匠の業があったことも欠かせない。

――:光通信を支えるコネクティビティは、世界で大量に必要とされています。競争の激しい中、どういった展開をしているのでしょう。
並木氏:
光ファイバ通信の黎明期から、当社のフェルールとスリーブは幹線系、メトロ系、海底通信、データセンタと幅広く導入いただいています。昨今のコロナ禍におけるリモート環境、巣ごもり需要によるデータトラフィック増加、そして、デジタルトランスフォーメーションやAIへの移行といった市場変化の中でも、引き続き光通信用部品をワンストップで提供できる体制を継続しています。
 正直、中国企業との価格差は埋められないところではありますが、ゼロコロナ政策のロックダウンといったこともあり、サプライチェーンにおいて中国一社購買は相当なリスクであると顧客も認識されていると感じています。また、特に特殊通信用途を中心に地政学的な影響も顕著になってきていますので、海外のお客様にも弊社の重要性は十分に認識していただいていると考えています。
 弊社フォトニクス事業の工場は秋田県にあり、アキタ・アダマンドとして稼動しています。海外ではタイに自社工場がありますので、光コネクタの組み立てなど人手が要る業務の移行を進めていこうと考えています。海外の工場はロックダウンなどのリスクも有りますが、このタイ工場は感染者が出た場合の仕組みがしっかりしていたこともあり、稼働が止まることはありませんでした。
 海外の営業拠点は、アメリカではニュージャージー、シカゴ、カリフォルニアの3拠点、ヨーロッパでは今年の秋口にスイスの拠点からドイツのデュッセルドルフに移り稼働する予定です。

――:光通信事業を含めた、御社全体の前年度の実績および今年度の見通しについて教えてください。
並木氏:
21年度(12月決算)の連結業績は、売上高は179億円で前年比24%の増加、連結の営業利益は16億円と前年比8倍の増加となりました。売上を事業別で見ると光通信が40%、工業宝石が25%、モーターが20%、医療ポンプが15%となります。この医療ポンプ事業はシンガポールにある子会社が取り組んでおり、これを21年度から連結に加えたことが前年比プラスの要因の一つです。また、コロナ禍においてモーター事業が医療向けに伸びたことも顕著でした。
 22年度の見通しについて、連結の売上は現状の見込みとして23億円で前年比32%増です。営業利益は現時点で約26億円となっており、前年比約60%の増加となっています。4事業すべてが好調に推移しており、中でも光通信の売上は前年比で10億円ほど増えると予測しています。また、円安の影響がどこまで出るか分かりませんが、短期的には利益の上振れがあると見ています。
 特に光通信の輸出が増えると予測しています。現在、輸出先のメインとなるのが北米です。そして興味深い市場動向としては、EMS企業が多く進出している東南アジア向けの輸出が、北米と同じくらいに増えています。東南アジアでは日系企業の工場も多く稼動していますので、ユーザベースで見ていくと日系や北米系となります。

――:今年度後半の光通信市場をどのように見ていますか?
並木氏:
国内の光通信部品は堅調に推移していますが、エンドユーザの動きや半導体電子部品の不足が起因と思われる、弊社顧客への影響が少し出てきています。また、巨大テクノロジー企業を中心とした北米の減速を懸念する声も出てきていますので、これが光通信部品に影響が出てくるかもしれないというネガティブな要因もあります。これが杞憂で終われば年内は堅調に進むと思いますので、今はその点を見極めているところです。

インタビュー目次

1:世界の光通信を支えているコネクティビティ
2:新社名に込められた想いと、今後の展望