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1Mのサンプリングを高速・高感度で実現し、25G/100Gの光モジュール・デバイスの生産効率を飛躍的に改善【アンリツ】

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 世界的な通信トラフィックの増加、特に海外データセンタへの活発な投資により、100GbEで使われる光モジュールや光デバイスの需要は好調に推移している。2016年の100GbE需要は供給を上回り、市場価格の下落を抑制。そして2017年は中国市場の低迷(エンドユーザの需要減ではなく生産調整)が見られるものの、ハイパースケールデータセンタで注目を集めている北米クラウドベンダからの光需要は高い水準を維持している。この状況を2000年の光バブルと重ねて危惧する声もあるが、今回の光需要はクラウドビジネスのためのインフラ投資であることから、世の中のクラウド需要と連動したビジネスチャンスと見て良さそうだ。また、中国市場が再び動き出せば、需要は更に拡大する。
 世界的な需要が高い水準を維持していることから、光モジュールやデバイスを提供しているベンダは、生産効率の改善による市場への対応、および利益率の向上が喫緊の課題となっている。そうした中で注目を集めているのは、アンリツが今年2月にリリースした測定器「BERTWave MP2110A」(以下、MP2110A)だ。これは100GbEで使われる25G帯の光モジュールやデバイスの製造ライン向けの測定器であり、既存の競合製品より価格を抑えながらも、従来比6倍という世界最速レベルのサンプリング性能により製造ラインの効率化を実現している。
 MP2110Aは、サンプリングオシロスコープとBERT機能を一筐体に組み込みこむことができるAll In One測定器で、どちらか一方の機能だけを組み込むこともできる。今回は、光モジュールやデバイスの生産効率に直結するサンプリングオシロスコープ機能の特長について話を聞いた。

MP2110A。PC機能を内蔵しており、モニタを接続するだけで使用できる。

250 ksamples/sという画期的な高速サンプリング

 光モジュールの製造工程は、
1,測定環境の初期設定
2,製品を規格範囲に収める調整
3,製品として問題ないことを確認する本測定
の3段階に分けることができる。
 工程3の本測定で行われる出力波形の検査では、十分なサンプリングを実施した後にマスクマージンなどの性能を評価するので、サンプリング速度が生産時間に直結する要素となる。例えばアイ波形データのサンプル数が1Mの場合、従来機種ではサンプリングに約30秒を要していたが、MP2110Aでは250 ksamples/sという世界最速レベルのサンプリング能力により約5秒(測定開始停止にかかる時間を含む)で完了できる。1ヶ月あたり数万個を製造することを考えれば、製品1個あたりのサンプリング時間を1/6に短縮することによる製品原価の低減は非常に大きいだろう。
 アンリツは10G帯向けの「BERTWave MP2100B」でもサンプリング速度が市場で高く評価されていたので、今回のMP2110Aも同社が培ってきた技術の強みを活かした製品と言える。アンリツ 計測事業ブループ 計測器営業本部 第2営業推進部 課長補佐の多田哲也氏は「MP2100Bの頃の技術を更にブラッシュアップし、創意工夫している。ハードウェアの性能も向上しているが、それだけではなく、ソフトウェアの処理も含めて様々な工夫を組み合わせて250 ksamples/sという速度を実現した」としており、「実際にお客様の出荷検査条件に合わせたデモをさせていただくと、1Mサンプルの場合でも10Mサンプルの場合でも、一目で早いことが判るとご感想を頂いている」と説明している。

250 ksamples/sの高速サンプリング

消光比の測定値を約0.3秒で取得

複数回の測定を繰り返す調整作業において、一回あたりの測定時間を低減できるメリットは大きい。

 工程2の光モジュールの調整では、消光比や出力平均パワーの値が規格値を満たすまで製品を調整しながら測定を繰り返す必要がある。例えば、光モジュール内部にあるレーザのバイアス電流、変調器の出力振幅/出力波形などの様々な調整パラメータと、消光比、出力平均パワー、出力ジッタなどの規格項目は互いに関連がある。これはどの個体に対しても同じパラメータを与えて動かすわけではないので、その個体にとって最適なパラメータを探るために様々な値を試す作業を繰り返すことになる。
 MP2110Aはサンプリング速度だけでなくリモートコマンドの応答速度も速いため、光モジュール調整の工程で繰り返される測定の一回あたりの時間を低減する。多田氏は「製造ラインで使用する測定器に求められるのはリモートコマンドの応答速度だ。MP2110Aであれば約0.3秒(消光比を取得する場合の代表値)と一瞬で測定結果が得られる」と話しているので、測定回数を重ねるこの工程において作業時間の大幅な低減に繋がる可能性がある。

PC内蔵の安定した測定性能による正確な出荷計画

 MP2110AはPC機能を内蔵しているので、ユーザはモニタを用意するだけで良い。多田氏は「CPUのスペックは現状のベストなものを採用したので長くお使い頂ける。特にリモートコマンドの応答速度はPCのスペックに依存する部分が大きいので重視した」と話す。
 このPC内蔵という特徴は、出荷数量を想定する上でも重要な要素だ。外部PCを使う場合はその性能によりタクトタイムが変わってしまうが、PC内蔵タイプの場合は常に同じ測定処理速度、応答速度となるので、安定した数値を基に出荷の計画を立てることができる。

-15dBmの高感度O/E採用により、生産効率の良い複雑な測定系にも対応

 オシロスコープに対する要求の一つに、測定物から出てくる光信号のパワーが小さい場合でも、きちんと信号として認識し、波形を表示できるスペックがある。MP2110Aは-15dBmの高感度O/Eを採用しているので、減衰した信号でもノイズの少ないアイパターンを表示できる。また、従来よりもEye開口が狭い場合の測定も可能だ。

マスクマージン(Hit Count 0)が0%に到達する光パワーの推定値


測定系のイメージ。更に複雑な測定系にも対応できる。

 -15dBmという感度の高さは複雑な測定系にも対応できるので、製造ラインの効率化を図ることもできる。例えば2つの品種を同時に測る、もしくは4つの品種を交互に測る測定系を構築して効率化を図る場合、光スイッチを2段、3段と組み合わせるので、測定物から出てくる光信号は光スイッチを通るたびに減衰する。ここで必要な感度を満たしていない測定器を使った場合は光信号を受信できないが、-15dBmのスペックであれば複雑な測定系にも対応できる。多田氏は「-15dBmという数字は、実際に測定器をお使いになるお客様から大変ご注目頂いている。被測定物の出力が-5dBmなので-15dBmの測定器は不要だとおっしゃるお客様も、複雑な測定系を組むことによる生産効率の改善には意欲的だ」と話している。

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