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発光/受光する半導体超薄膜をシリコンウエファ上にスタック【MIT】

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 MITの研究によると、ここ数10年のコンピュータ性能の大きな進歩は、マイクロチップに、より多くのトランジスタを詰め込むことによって達成されているが、このようなダウンサイジングの意味するところは、マイクロプロセッサ内の配線の密集である。これは、コンポーネント間で信号漏洩などの効果を引き起こし、チップの異なるパーツ間通信のスローダウンになり得る。「インタコネクトボトルネック」として知られるこの遅延が、高速コンピューティングシステムで、ますます大きな問題になりつつある。

 インタコネクトボトルネックへの対処の一方法は、マイクロチップの異なるパーツ間の通信にワイヤではなく光を使うことである。MITの物理学准教授、Pablo Jarillo-Herreroによると、これは容易ではない。チップ作製に使われる材料シリコンは簡単には発光しないからである。

 Nature Nanotechnologyに発表された論文では、研究者は、シリコンCMOSチップに集積可能な光エミッタとディテクタについて報告している。

 デバイスは、モリブデン・ジテルリドという半導体材料から造られている。この超薄半導体は、2D遷移金属二カルコゲン化物として知られる新しい材料グループに属する。
 従来の半導体と異なり、Jarillo-Herreroによると、その材料はシリコンウエファ上にスタックできる。

 「研究者は、シリコンに適合する材料を見つけようとしてきた。目的は、オプトエレクトロニクスと光通信をチップ上で実現することであるが、これまでのところ、これは非常に難しいことが分かっている。例えば、GaAsはオプティクスには極めて適しているが、両方の半導体に適合性がないので、シリコン上に成長させることはできない」とJarillo-Herreroは説明。

 シリコンに他の半導体を集積することのもう1つの難しさは、材料が一般に可視光で発光することだが、これらの波長の光は簡単にシリコンによって吸収される。

 モリブデン・ジテルリドは赤外光を発する、これはシリコンに吸収されないので、オンチップ通信に使うことができる。

 その材料を発光体として使うために研究者はまず、それをP-Nジャンクションダイオードに変換しなければならなかった。片側がPサイドでプラスに帯電、他方はNサイド、マイナスに帯電しているデバイスである。

 通常の半導体では、これは一般に材料に化学的不純物を導入することで達成される。しかし、その新しい種類の2D材料では、材料上部に並べて置いた金属ゲート電極に電圧を印加するだけで達成される。

 「それは極めて画期的なブレイクスルーである、ダイオードを造るために材料に化学的不純物を導入する必要がないからである。それは電気的にできる」と同氏は説明している。

 ダイオードが造られると、研究チームはデバイスに電流を流し、発光させた。

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