Oscilloquartzが、米国における航空宇宙、防衛、政府機関向け事業を拡大し、高まるレジリエントPNTへの需要に対応
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Oscilloquartzは8月19日(スイス ヌーシャテル)、米国における航空宇宙、防衛、政府機関向け事業を拡大するため、6社の専門販売代理店(ProTEQ Solutions、Southern Marketing Associates:SMA、Testech、TMS Sales、Contech Marketing Associates、Ward/Davis Associates)と契約を締結したことを発表した。
Oscilloquartzは「これらのパートナーシップにより、地域的な事業範囲が拡大し、顧客との関係が強化され、ミッションクリティカルなアプリケーションにおける耐障害性(レジリエント)タイミングおよび同期への高まる需要に対応する」としている。
Southern Marketing AssociatesのプレジデントであるTim Weathers氏は「航空宇宙、防衛、政府機関向けアプリケーションにおいて、耐障害性タイミングと確実なPNTへの需要は加速し続けている。Oscilloquartzは、競合環境やGNSSが利用できない環境での運用を想定して設計された、非常に差別化された同期技術ポートフォリオを提供している。当社は、お客様の運用上の耐障害性強化を支援する大きな機会があると確信しており、米国市場における同社の継続的な事業拡大を支援できることを大変嬉しく思っている」とコメントを出している。
新たに契約した代理店企業は、防衛および政府機関の主要分野において深い専門知識と確立された関係を有しており、Oscilloquartzの高精度タイミング製品群へのアクセスを拡大する。これには、セシウム原子時計、マルチソースcPNTおよびゼロトラスト アーキテクチャをサポートするPTPグランドマスター、GNSSが信頼できない状況下でも精度と可用性を維持するように設計された高可用性同期ソリューションなどが含まれる。
Oscilloquartzのグローバルセールス担当ヴァイスプレジデントであるPaul Zweers氏は「確実なPNT機能への需要が高まる中、米国における代理店ネットワークの拡大は、高度な要求環境下で事業を展開するお客様へのサポート体制を強化する」とし、「これらのパートナーシップは、お客様のニーズへの対応力を向上させるとともに、当社のエンド・ツー・エンドの高可用性タイミングおよび同期ソリューションへのアクセスを拡大し、より強力な現地での連携と長期的な運用パフォーマンスを実現する」とコメントを出している。
編集部備考
通信インフラのレジリエンスに加わる「時間源の冗長化」
今回の発表で注目したいのは、Oscilloquartzが「レジリエントPNT」を成長領域として捉えている点だ。今回、同社が提供するのはセシウム原子時計や、複数のPNTソースに対応するPTPグランドマスターなどであり、GNSSが利用できない環境でも正確な時刻と同期を維持するための技術となる。背景には、GNSSに対するジャミングやスプーフィングなどの脅威が高まっていることが挙げられる。
通信業界にとっても、これは決して特殊な分野だけの問題ではない。5G以降のモバイルネットワークでは基地局間の高精度な時刻・位相同期が重要になり、通信ネットワークそのものが「正確な時間」に依存する度合いが高まっているからだ。従来、ネットワークのレジリエンスといえば、伝送路を二重化したり、障害時に別経路へ切り替えたりすることが中心だった。しかし、どれだけ通信経路を冗長化しても、ネットワークを同期させる時刻源が単一のGNSSに依存していれば、そこには別の単一障害点が残る。
そこで重要になるのが、「GNSSが使えなくなった場合の代替手段」という発想から、「そもそも一つの時刻源に依存しない」という発想への転換だ。Oscilloquartzも、GNSSに加えてセシウム原子時計、LEO衛星など複数の時刻源を組み合わせ、異常を検知しながら信頼できる時刻を維持するアーキテクチャを打ち出している。
つまり、通信インフラのレジリエンスは「データを運ぶ経路」だけでなく、「ネットワークを動かす時間」まで含めて考える段階に入っている。今後、通信事業者がネットワークの強靱化を進める際には、光ファイバや電源などの物理的な冗長化に加え、GNSS障害やサイバー攻撃などを想定した「時間源の冗長化」も重要な設計要素になっていくだろう。
「共通の正確な時間」を供給する通信インフラへ
今回の動きからさらに考えたいのは、通信ネットワークにおける「時間」の位置付けそのものが変わりつつあることだ。これまで通信インフラは、音声や映像、データなどを正確かつ高速に届けるための基盤として捉えられてきた。しかし、高度な同期を必要とする5G/6Gや電力網、金融、交通、防衛などがデジタル化するにつれて、ネットワークは「正確な時間を共有するための基盤」という役割も担うようになっている。
その意味で、PNTのレジリエンス化はGNSSのバックアップ技術に留まらない。原子時計などの高安定な時刻源を複数組み合わせ、それをPTPなどのプロトコルによってネットワークの末端まで配信することで、社会インフラ全体に信頼できる時間を供給する仕組みへと発展している。Oscilloquartzも複数の原子時計やGNSS、PTPなどを組み合わせたTime Scale Systemを展開しており、国家レベルの時刻基盤や重要インフラへの適用を想定している。
この方向性は、米国のDARPAが進める「ROCkN(Robust Optical Clock Network)」にも表れている。同プログラムでは、GPSが利用できない環境でも高精度な時刻同期を可能にする光時計ネットワークが開発されている。DARPAは、現代の防衛システムではナノ秒単位の時刻精度が重要だとしており、2026年には実環境で試験された小型の光時計プロトタイプについても紹介している。
ここで重要なのは、「通信」と「時間」が別々のインフラではなくなりつつあることだ。通信ネットワークは正確な時間を必要とする一方で、そのネットワーク自体が正確な時間を様々な産業へ届ける媒体にもなっている。AIや自動運転、分散型電力網など、複数のシステムがリアルタイムに連携する時代には、この「共通の時間」をどれだけ安定して共有できるかが、システム全体の信頼性を左右する。
通信インフラの高度化というと、これまでは高速化や大容量化が主なテーマだった。しかし今後は、それに加えて「正確な時間を、途切れず、信頼できる形で共有する能力」も通信インフラの価値になっていくのではないか。特に、防衛、航空、電力、交通など、わずかな同期の乱れがシステム全体の機能や安全性に影響を及ぼすミッションクリティカルな領域では、その重要性は一段と高まるだろう。今回のOscilloquartzの動きは、こうしたミッションクリティカルなシステムを支える通信ネットワークが、データを運ぶ基盤にとどまらず、異なるシステムが正確な時間を共有し、連携して動くための基盤へと役割を広げつつあることを示している。
そして、ミッションクリティカルな領域に向けた技術が量産化され、コストダウンが進むことで、民間インフラの高度化や自動化システム、リアルタイム制御、分散型システムなどへ波及していく可能性がある。異なるシステムが正確な時間を共有しながら連携できるようになることは、これまで同期精度や信頼性の制約から難しかった新たなアプリケーションの実現にも繋がるだろう。
(OPTCOM編集部)



