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既設ファイバにおける400ギガビット信号のマルチバンド大容量伝送に向けたオールラマン光増幅技術のフィールドトライアルに成功【NTT】

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既設ファイバの使用可能帯域を2倍に拡大

 日本電信電話(以下、NTT)は5月30日、西日本電信電話と協力し、現在広く敷設されている光ファイバケーブルにおいて、伝送路の中継器に「オールラマン光増幅技術」を適切に用いることで、400Gbps信号をマルチバンドで光伝送するフィールドトライアルに成功したと発表した。さらに同実験では、既存帯域の信号に影響を与えずに新しい帯域の信号を追加できることも確認した。
 この成果を用いることにより、将来データセンタ間通信などで大容量伝送の需要が生じた場合に、既設ファイバを利用しながらインサービスで使用可能帯域を広げ、毎秒30テラビット級の超大容量伝送に対応可能となる。
 今後は、さらなる性能検証や運用面の検討を進め、超大容量伝送が必要とされるさまざまな分野への貢献をめざすという。

背景

 今後の通信トラヒックの傾向は、4K/8K等の高解像映像の流通拡大やM2Mの本格普及に伴い、更に大容量になることが想定されており、NTTでは100Gbpsを超える信号を用いた更なる超大容量伝送の実現方法について、さまざまな検討を進めている。さらに近年のデータセンタ間トラヒックの増加に伴い、大容量のトラヒックを経済的に収容することが求められている。
 大容量化を実現する手段の1つとして、光ファイバの使用可能帯域を拡大するマルチバンド化(Cバンド+Lバンドなど)がある。分散シフト光ファイバ(DSF:Dispersion Shifted Fiber)ケーブルを用いたWDM光伝送でマルチバンド化を行う際には、拡張帯域(Cバンド)に波形歪みの原因となる零分散波長が存在し、その付近で非線形効果(特に、四光波混合)の影響により信号が劣化する。そのため、非線形効果の影響を回避する手段として、Cバンドの信号波長配置を不等間隔にする方法が実用化されていたが、等間隔配置に比べて波長間隔が広がるため周波数利用効率が低くなる課題があり、大容量化の制限となっていた。

研究の成果

 今回NTTは、既存帯域(Lバンド)と拡張帯域(Cバンド)の両方の光信号を「オールラマン光増幅技術」を適用することにより、既設のDSFケーブルを用いてWDM光伝送の波長間隔を等間隔にしたまま、十分な伝送マージンを確保して200km伝送することに成功した。既存帯域と拡張帯域とを合わせて、使用可能帯域は2倍になる。同実験では400Gbps信号を、16QAM変調した2波長を多重することで構成しました。
 四光波混合による信号劣化は、伝送路中の光パワーに依存するため、低い光パワーで伝送できるほど低減することができます。オールラマン光増幅技術は、一般的なEDFAを用いた光増幅に比べ、伝送路中の信号光パワーを低くして伝送することができる技術。この技術を用いて、Cバンドにおいても波長間隔を等間隔に配置したまま非線形効果を抑制し、周波数利用効率を高めることができたという。
 また、ラマン増幅を用いる場合、高いパワーの励起光を用いるため安全面への配慮が必要となる。今回はIECの基準に則った実用レベルの安全性を確保しつつ、実証実験を実施した。さらに同実験ではラマン光増幅を適切な条件で制御することで、Lバンドに配置している光信号の伝送品質に影響を与えずにCバンドに光信号を増設できることを確認した。これにより、既設ファイバにおいてマルチバンド化する際、新たなCバンド光信号をインサービスで追加収容可能なことを確認できた。

今後の展開

 今後、400Gbps信号のマルチバンド光伝送並びにオールラマン光増幅技術を含めた大容量光伝送技術の研究開発を引き続き推進し、その成果を活かし、経済的かつ大容量なネットワークの実現をめざすという。
 今回のフィールドトライアルの成果は、既設ファイバを用いたデータセンタトラヒックの収容など、超大容量伝送が必要とされるさまざまな分野への展開が期待される。

フィールドトライアル実験構成(左)オールラマン光増幅の信号パワーイメージ(右)

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