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住友電工が信号機の5Gネットワーク接続を実現。接続装置開発、実証実験に成功

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 住友電気工業(以下、住友電工)は6月2日、5Gを用いて交通信号機と交通管制センターを接続し、かつ車両への信号情報提供を可能とするインターフェース・プロトコル変換装置(以下、本装置)の開発を進めていると発表した。

 同社は「このほど、デジタル庁、警察庁および総務省の連携の下実施された内閣府のプロジェクト『交通信号機を活用した第5世代移動通信システムネットワークの整備に向けた調査検討』(以下、本事業)に事業実施コンソーシアムの構成企業の一社として参画し、本装置の実証実験に成功した」としており、「今後、本装置をはじめとする交通インフラ製品の開発・提供を通じて、交通信号機と交通管制センターとの接続による信号制御の高度化を支援し、安全・円滑な道路交通の実現に貢献することをめざす」としている。

概要

 内閣府が運営する官民研究開発投資拡大プログラム(PRISM)においては、デジタル庁、警察庁および総務省の連携の下、5Gのエリア拡大と交通信号制御の高度化を目的とした本事業が令和元年度から令和3年度にかけて実施された。
 本事業においては、5Gを活用して全国に整備されている交通信号機と交通管制センターを接続することが必要となるが、既設の交通信号機の多くはアナログ専用回線によるモデム通信によって交通管制センターと接続されており、交差点に5G基地局が整備されても、そのままでは5Gを活用して交通信号機と交通管制センターを接続することができない。また、既設の交通信号機の多くが、車両等に向けた信号情報を出力する機能を持たないため、将来の自動運転車に必要と見込まれるインフラ協調(V2I)による信号情報提供に対応するためには、交通信号機の置き換え等が必要となり、多大なコストと年数を要してしまう、という課題があった。
 住友電工は、本事業において、これらの課題を併せて解決することをめざし、モデム通信を5G等のネットワークに収容可能なIP通信にプロトコル変換し、同時に、変換時の通信情報から車両向け信号情報を生成する本装置を開発し、実際の交差点で実証実験を行った。

インターフェース・プロトコル変換装置の概要

今回の成果

 今回の実証実験は、秋田、東京、大阪の3都府県の計4交差点で行った。これらの実験では、稼働中の交通信号機と本装置を5G経由で交通管制センターに接続し、信号制御が問題なく行われることの確認を行った。また、東京での実証実験では、本装置が出力した信号情報を自動運転実験用車両に配信する実験も併せて行い、実験用車両で問題なく信号情報を受信できることを確認した。なお、本装置は、交差点での5G活用を妨げぬよう、全国で利用されている主要なモデム接続交通信号機用通信プロトコルのIP通信変換に全て対応しているという。

東京都実証実験(西新宿)

現在の取り組み

 本事業の成果について、継続的な技術開発・検証を可能とするために、住友電工の横浜製作所内に本装置、5G基地局、模擬交通管制センター、V2I/V2Nに対応した情報提供装置等を設置し、実際の交差点と同様の評価フィールドの整備を行ったという。
 現在、この評価フィールドを用いて、信号柱等交差点での適用性を高めるため、屋外設置が可能な5G端末を開発している。この5G端末はエッジ処理機能を持ち、アプリケーションの実装が可能だ。

横浜製作所評価フィールド

 アプリケーション例として、カメラ映像を画像処理するエッジ処理ソフトを実装し、交差点周辺に設置したカメラの映像から交通信号機の現在灯色を抽出し、その情報を5G経由で伝送する機能検証を実施している。この機能は、自動運転車両の車載カメラよりも安定した撮像環境で高精度な信号灯色検出が期待できることから、本装置による信号情報生成時の補完・補正などの用途を想定しているという。

カメラによる信号灯色の検知

今後の予定

 住友電工は「当社は、今後もこのような路側インフラでのエッジ処理を用いた車両と路側インフラが相互に連携する様々なユースケースを検討し、実現に向けた要素技術開発と社会実装に向けたフィールド実証を行っていく」としており、「本事業での成果をもとに、UTMS協会において進められるインターフェース・プロトコル変換装置の標準仕様検討、交通管制システムへの適用ガイドライン検討に参画し、社会実装の早期実施による安全・円滑な道路交通の実現に向け、貢献していく」との考えを示している。