光通信、映像伝送ビジネスの実務者向け専門情報サイト

光通信ビジネスの実務者向け専門誌 - オプトコム

有料会員様向けコンテンツ

NTTコムウェアと日本IBMが、データセンタ運用高度化実証実施。AIを活用したソリューション連携で共創開始

データセンタ/LAN 無料

ICT機器の排出熱を独自AIモデルにより解析し、電力消費量とCO2排出量を算出

 NTTコムウェアと日本IBMは2月6日、データセンタ運用における環境負荷低減を目的として、ICT機器ごとの消費電力とCO2可視化の実証を2023年9月~11月に行った結果、排出熱の温度から消費電力をAIで推定しCO2排出量の算出等が可能であることを確認したと発表した。

 同実証の結果をもとに、社会インフラのDXに取り組むNTTコムウェアと、国内外における設備管理・保全業務に関するノウハウを持つ日本IBMは、AIを活用したデータセンタ運用を高度化する新たなソリューション(以下、本ソリューション)の共創、データセンタ事業者への提案および提供について共創していくことに合意した。
 本ソリューションのモデルについては、2024年1月に開設した日本IBMの新本社(虎ノ門ヒルズステーションタワー)内のイノベーションスタジオでデモ展示している。

 NTTコムウェアと日本IBMは「国内データセンタの電力消費量は、2030年には2018年の約6.4倍の900億kWhに増大すると推計されている。生成AIの浸透によりデータ処理量が増大するなど、今後さらに電力消費量増加が懸念されている一方で、データセンタ事業者には環境負荷低減が求められている。そのためには消費電力の適切な把握が必要となるが、これまではフロアやラック単位での消費電力や発熱量が把握できるのみで、ICT機器ごとや利用者ごとの消費電力把握が困難だった」と説明している。
 そこで今回の実証実験では、非接触の温度センサを用いて電力消費と強い相関を持つICT機器の排出熱を測定し、独自のAIモデルで解析することで、電力消費量の推定※とCO2排出量の算出を可能にしたという。
※同技術についてはNTTコムウェアにて特許出願中。

【実証実験概要】
期間:
2023年9月~11月
場所:NTTコムウェアデータセンター
目的:データセンタ利用者単位での電力消費量/CO2排出量 可視化、電力量予測モデルの検証
内容:データセンタ内の複数サーバについて、サーバ毎の排気熱の温度、消費電力量、CPU負荷を測定。各値の相関関係と排気熱の温度から消費電力量を推定するAIの作成および精度確認

2社の役割:
NTTコムウェア
・排熱やCPU使用率から消費電力を推定する機械学習モデルの開発
・推定した消費電力からのCO2排出量算出
・IT統合管理プラットフォーム「Smart Data Fusion®」による機器構成とセンサデータの統合、ダッシュボードによる可視化
・4D可視化ソリューション「4DVIZ」によるデジタルツイン化、フロアイメージの可視化

日本IBM
・資産監視、管理等を行うソフトウェア 「IBM Maximo Application Suite」によるIT機器構成管理データ提供
・設備管理・運用保守ノウハウの提供

 NTTコムウェアと日本IBMは「本実証実験の結果、サーバ毎の排気熱の温度、消費電力量、CPU負荷に各々正の相関があることを確認した。また、その関係性から、AIを活用することで排気熱の温度データから消費電力量を推定しCO2排出量を算出可能であることを確認した」と説明している。

 同技術を活用することにより、データセンタ運営事業者は次のことが可能になる。
・排熱量等データ測定の際、利用者のハードウェア、ソフトウェア構成の変更が不要のため、運用中のサーバ機器にも容易に適用可能

・利用者環境にログイン調査なしで、利用者単位、サーバ単位でのCO2排出量や機器異常の監視と管理を実現

・簡易な温度センサ設置または収集済みのCPU使用率などから消費電力、CO2排出量を低コストで算出可能

・きめ細やかな電力消費量やCO2排出量把握にもとづく精緻な空調制御による電力コスト削減が可能

 また、データセンタ利用者においても電力消費量やCO2排出量のデータが可視化されることで、具体的なグリーンICTの検討や負荷低減取り組みの効果測定が可能になる。さらには、環境負荷へ配慮したハードウェアやソフトウェア製品の開発への応用も可能になる。

 本ソリューションは、日本IBMのソフトウェア「IBM Maximo Application Suite 」によるICT機器構成管理のデータを活用し、NTTコムウェアが開発した排熱やCPU使用率から消費電力とCO2を推定するAIを搭載した「Smart Data Fusion 」でデータを集約/算出、同社の「4DVIZ 」ダッシュボードにより、ICT機器の状況をデジタルツインとして可視化する。また収集したデータからICT機器等に異常がみられた場合は「IBM Maximo Application Suite」で現場作業員の対応開始から完了までの作業と履歴管理を行う。

ソリューションのイメージ。

 NTTコムウェアと日本IBMは「今後は、CO2排出量削減のさらなる加速とともにNTTグループが国内外のパートナーとともに推進する『IOWN』の活用も視野に入れ、データセンタの運用高度化、GXにむけて両社連携し取り組む予定だ。本ソリューションはICT機器だけでなく様々な設備へ応用可能であることから、社会インフラ分野や製造業の工場など多様な設備を有する企業への展開も両社で実施することを検討している」との展望を示している。

 本件は、NTTグループが展開するGXソリューションブランド「NTT G×Inno(エヌティティジーノ)」としてのソリューション提供にむけた取り組みだという。