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NEC、設置場所や対応周波数の自由度を向上した光ファイバ無線システムを開発

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アンテナ部をカードサイズに小型化、工場などIoT機器の無線通信環境を向上

 NECは6月6日、高層ビル・地下街・工場などにおいて、無線がつながりにくい場所でも、高速で安定した無線通信を可能にする光ファイバ無線システムを開発したと発表した。
 同システムは、携帯電話の基地局や無線LANのアクセスポイントを、装置本体とアンテナ部に分離し、その間の信号伝送に、デジタル化に伴う雑音を半減する位相同期型デジタル変調方式を適用したもの。これにより、基地局やアクセスポイントに従来必要であったアナログデジタルの変換や周波数変換が不要になるため、アンテナ部が従来の約1/5とカードサイズに小型化可能となり、様々な場所に設置して電波の不感地帯を解消することができる。また、アンテナ部が設置される環境に応じて、装置本体側でソフトウェアを更新することで、周波数や無線方式を変更できるため、安定かつ柔軟な無線通信環境を実現できる。
 NECは同システムを用いて、無線規格として2.14GHz帯のLTEを用いた伝送実験を行い、18kmの光ファイバ伝送後も信号劣化なく長距離伝送が可能なことを実証した。同社は「今後、本技術を、無線がつながりにくい高層ビルや地下街、また、ロボットやセンサーなどIoT機器が多数導入される工場などの構内無線ネットワークへの適用を目指し、研究開発を進めていく」としている。

市場背景

 近年、モバイルインターネットの普及に伴い、高層ビルや地下街などでも安定して使える無線通信のニーズが高まっている。また、IoTによる生産革新の進展により、金属物が多い工場など電波が届きにくい場所では、通信の速度低下や不安定な状況が発生するため、通信品質の改善が求められている。通信品質の改善には、構内に携帯電話の基地局や無線LANのアクセスポイントを増設するのが有効だが、場所の制約により設置が困難であることや、電波干渉により通信速度が低下するといった課題があった。
 そこでNECは、アンテナ部の小型化や、制御部側で周波数や無線方式を動的に選択・変更し、高速・安定な通信を実現するシステムを開発したという。新技術の特長は次の通り。

アンテナ部の小型化により設置性を向上

 光ファイバ無線システムのアンテナ部と本体(制御部)において、高周波の無線アナログ信号を大きく劣化することなく、直接1ビットのデジタル信号系列に変換する位相同期型デジタル技術を適用した。これにより、デジタル信号を装置本体から光ファイバで伝送することで、アナログデジタル変換や周波数変換が不要となり、従来比約1/5とアンテナ部をカードサイズに小型・薄型化した。また、装置本体とアンテナ部は最大数km離して設置でき、高層ビルや地下街、大規模な工場にも適用が可能となっている。

オフィスビルでの利用イメージ。小型・薄型で、貼り付けることが可能なことから、様々な環境に設置できる。

オフィスビルでの利用イメージ。小型・薄型で、貼り付けることが可能なことから、様々な環境に設置できる。

アンテナ部の周波数や無線方式を遠隔で柔軟に変更可能

 アンテナ部で周波数変換器が必要ない為、アンテナ部の交換なしに、装置本体側から周波数や無線通信方式(LTE、無線LANなど)がソフトウェアの更新のみで変更が可能だ。
 これにより、工場などで頻繁にあるレイアウト変更時にも、アンテナ部が設置される環境に応じて、最適な周波数や無線通信方式を装置本体側で簡単に集中制御して変更可能となり、電波の不感地帯や干渉が回避されることで、安定した通信品質を実現できる。

地下街での利用イメージ。通信環境に応じて周波数を動的に変更し、干渉を回避する。

地下街での利用イメージ。通信環境に応じて周波数を動的に変更し、干渉を回避する。