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Lumentumが、AI-DC向けInPデバイスの米国新製造拠点設立を発表

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 Lumentum Holdings(以下、Lumentum)は3月26日(カリフォルニア州サンノゼ)、米国ノースカロライナ州グリーンズボロに新製造拠点を設立する計画を発表した。

 同社は「24万平方フィート(約2万2000平方メートル)のこの施設では、世界最大規模のAIデータセンタの重要部品となる、InP(インジウムリン)ベースの光デバイスを製造する」としている。

 グリーンズボロの拠点は、半導体チップメーカーのQorvoから買収したもので、高度なスキルを持つ人材、堅牢なインフラ、そして連邦政府および州政府による経済開発支援環境が評価され選定された。

 この施設は、LumentumのInPベースの光製品(CWレーザおよびUHPレーザを含む)の製造用に改修される。同社は「買収契約には、経験豊富な人材の移転が含まれており、Lumentumは生産能力の拡大と効率的な生産立ち上げを加速できる」と説明している。

 NVIDIAはこの施設の顧客となり、Lumentumとの既に発表されている戦略的提携を通じて、米国の重要インフラの拡張と研究開発を支援する。Lumentumはまた、この工場を通じて、他の主要なAIインフラ顧客のスケールアウトおよびスケールアップにおける光関連のニーズにも対応していく予定だ。

米国製造業とAIインフラの強化
 Lumentumは、米国における製造拠点を拡大することで、サプライチェーンのレジリエンスを高め、オンショアリング戦略を推進し、ハイパースケールクラウドおよびAIインフラネットワークのサポート能力を強化する。

 この新施設は、6インチInPウェハーを活用することで、Lumentumの製造能力を大幅に拡大する。この施設は2028年半ばに生産を開始する予定だ。

 LumentumのCEOであるMichael Hurlston氏は「お客様は、次世代コンピューティングを定義するインフラストラクチャを構築している」とし、「この新しいInP製造施設の増設により、当社の生産能力は大幅に拡大し、戦略的パートナーシップが強化され、AI革命に必要な性能、信頼性、そして拡張性を確実に提供できるようになる」とコメントを出している。

 NVIDIAのオペレーション担当EVPであるDebora Shoquist氏は「AIワークロードが前例のないペースで拡大する中、高性能光コンポーネントへの安全かつ信頼性の高いアクセスは不可欠だ」とし、「Lumentumによる米国における製造能力拡大への投資は、供給の継続性を強化し、増大するインフラストラクチャ需要に自信を持って対応できる体制を整える」とコメントを出している。

経済および地域社会への影響
 Lumentumは、今後数年間で数億ドルを投資し、生産規模を拡大するとともに、この拠点の高度な製造能力を強化するとともに、400人以上の米国製造業の雇用を維持・創出する予定だ。

 新たな職種としては、製造プロセスおよび設備エンジニアリング、製造技術者、オペレーション、サプライチェーン、品質管理、マネジメント、IT、人事、財務などが想定されている。このプロジェクトは、州および地方の経済開発プログラムによって支援されている。

 ノースカロライナ州の商務長官であるLee Lilley氏は「Lumentumが次期米国最大規模の半導体製造工場をノースカロライナ州に建設することを決定したことを大変光栄に思っている」とし、「強力な半導体産業と熟練した労働力を有するノースカロライナ州は、Lumentumのような業界リーダーが、急速に成長する高度AI市場への対応という事業拡大目標を達成するために必要な人材を提供できる体制を整えている」とコメントを出している。

 グリーンズボロ市のMarikay Abuzuaiter市長は「Lumentumがグリーンズボロへの投資を決定したことは、当市がグローバル経済の未来を形作る産業において競争力を持ち、成功を収めていることを示している」とし、「スマートテクノロジーインフラと結びついた高度な製造業は、イノベーションの新たなフロンティアであり、グリーンズボロには企業が成長するために必要な人材と協調的なリーダーシップがある。Lumentumが、建設、投資、そして質の高い雇用創出の場として当市を選んでくれたことを誇りに思っている」とコメントを出している。

編集部備考

■今回の動きの背景にあるのは、AIデータセンタの急拡大に伴い、光トランシーバの中核部品であるレーザ光源の供給が構造的な制約に直面し始めているという現実だ。
 特に近年のAIインフラでは、帯域の拡大と消費電力の制約が同時に進行しており、光インターコネクトに対しては従来以上に高出力・高効率かつ安定した波長特性が求められるようになっている。この結果、レーザ光源は単に「供給量を増やせばよい部品」ではなくなり、製造プロセスの難易度や歩留まり、さらには長期信頼性を含めた“良品として出荷可能な能力”そのものがボトルネックとなりつつある。
 加えて、この領域はIII-V族材料のエピタキシャル成長からデバイス設計、信頼性評価に至るまで高度に専門化されており、サプライヤの数は限られる。結果としてサプライチェーンは固定化しやすく、需要の急増に対して柔軟に供給を拡大することが難しい構造を持つ。これは単なる需給逼迫ではなく、垂直統合的な技術蓄積に支えられた参入障壁の高さに起因する問題といえる。

 こうした制約を背景に、本ニュースのような製造キャパシティの増強が求められている。その一方で、レーザ供給不足に対するアプローチとしてシリコンフォトニクスといった新たなアーキテクチャへの関心も高まっている。ただし、これらはレーザそのものを不要にする「代替技術」というよりは、外部レーザの共有化や配置の最適化を通じて、限られた光源資源の使い方を再設計するアプローチと見るべきだろう。言い換えれば、「レーザ依存度のマネジメント」を巡る設計思想の転換だ。

 このように見ていくと、AIインフラにおける制約の所在は、従来の計算資源やネットワーク帯域から、フォトニクスの源流へと移り始めているとも解釈できる。つまり、AIインフラにおいては、GPUではなく「光源」が真のボトルネックになる懸念がある。今回のような製造拠点の拡大は、個別企業の供給能力強化にとどまらず、AI市場全体の成長を下支えする基盤整備としての意味を持つものといえるだろう。

■レーザの生産設備増強の動きは、AI時代の課題とその解決策として理解することができる。そして同時にこれは、AI時代における「ハードウェア供給の物理的な限界」が、具体的な形で露呈した象徴的なケースとして捉えるべきだろう。
 これまで光通信の世界は、「数年単位で倍速化する」という比較的安定した進化の時間軸の上に成り立っていた。しかし生成AIの登場は、この時間軸そのものを急激に圧縮し、需要の立ち上がりと性能要求の引き上げを同時に引き起こしている。今回レーザの領域で顕在化した課題は、特定の部品に固有の問題ではなく、今後はトランシーバ、パッケージング、さらには電気インターコネクトを含めた通信インフラのあらゆる階層において、ますます深刻化する共通の課題として波及していく可能性が高い。

 特に1.6T時代が視野に入りつつある現在においては、「設計通りに動作するか」ではなく、「熱と電力という物理限界の壁と向き合いながら、良品として安定的に出荷し続けられるか」が競争力の焦点となる。このとき鍵を握るのは、デバイスそのものの性能だけではなく、超高精度な選別技術や自動検査ライン、さらにはそれらを統合した製造プロセス全体の最適化となる。

 AI時代の競争は、設計やアーキテクチャに加えて、「高度な製造能力そのもの」を含めた総合力へと拡張しつつある。今回の工場新設を、ただの増産ではなく、「AIという巨大な需要を物理的に支え切るための、新しい製造スタンダードの構築」として捉えるならば、その意義はレーザ光源にとどまらない。今後あらゆる光コンポーネント、さらには広くAIインフラを構成するハードウェア全般において、参照されるべき先行事例となる可能性がある。

(OPTCOM編集部)