徳島大学と岐阜大学が、420 GHz超で初の100 Gbps級無線通信を実証
モバイル/無線 無料Photonic 6Gに向けた超高速モバイル・バックホール技術
徳島大学ポストLEDフォトニクス研究所/フォトニクス健康フロンティア研究院の時実悠講師、岸川博紀准教授、久世直也教授、安井武史教授、徳島大学大学院創成科学研究科の菊原拓海大学院生、徳島大学ポストLEDフォトニクス研究所の永妻忠夫客員教授らと、岐阜大学工学部の久武信太郎教授をはじめとする研究グループは5月19日、光ファイバ接続マイクロ光コムを用いたテラヘルツ波生成と多値変調技術を組み合わせたマイクロ光コム駆動型テラヘルツ通信システムを開発した(図1)と発表した。(情報提供:共同通信PRワイヤー)
本研究では、マイクロ光コムの高安定な周波数特性を活用して低位相雑音のテラヘルツキャリアを生成し、560 GHz帯において単一チャネル112 Gbpsの無線伝送を実証した。これにより、従来の数十Gbps級を超える高速化を達成した。
同研究グループは「本成果は、420 GHzを超える領域における100 Gbps級無線通信の実現可能性を初めて示したものであり、6Gにおける超高速バックホール通信や光無線融合ネットワークの実現に向けた重要な技術基盤となることが期待される」としている。

図1:マイクロ光コム駆動型テラヘルツ通信の概念図。マイクロ光コムは、複数の光周波数モード列が櫛の歯状に等間隔で立ち並んだ超離散マルチスペクトル構造を有し、電気的手法よりも桁違いに高品質な超高周波光電気周波数信号の生成が可能だ。更に、半導体プロセスにより一括大量生産可能なため、将来的には超小型・簡素・低価格化が期待できる。本研究で用いた光ファイバ接続型では、光ファイバを微小光共振器に直接接合することで高い結合安定性と再現性を実現し、従来必要とされていた精密な光学調整を不要とするなど、実用化に向けた大きな利点を有している。
研究の背景と経緯
移動通信は、無線キャリア周波数を高周波化することにより、高速・大容量化を実現してきた。5G通信ではミリ波帯が利用されているが、今後の通信需要のさらなる増大に対応するため、2030年代の実用化が見込まれる次世代移動通信6Gでは、300 GHz以上のテラヘルツ波の利用が期待されている。特に350 GHzを超える領域は、広帯域を活用した超高速通信が可能な一方で、従来の電子技術による高周波信号生成には限界があり、出力の低下や位相雑音の増大といった課題が顕在化している。そのため、安定かつ高品質な信号を生成できる新たな技術の確立が求められてきた。
このような背景のもと、同研究グループは電子技術に代わる手法として光技術に着目し、光周波数コムの一種であるマイクロ光コムを用いたテラヘルツ信号生成及び無線通信への応用、すなわちマイクロ光コム駆動型テラヘルツ通信「Photonic 6G(※徳島大学の登録商標)」に関する研究を進めてきた。マイクロ光コムは、高い周波数安定性と低位相雑音特性を有し、その広い周波数間隔を活かして、テラヘルツ帯における高品質な無線キャリア生成を可能にする有望な技術として注目されている。しかし、350 GHzを超える領域では、安定な高周波信号の生成と高次変調による高速データ伝送を両立することが難しく、実用的な無線通信の実現には至っていなかった。
本研究は、このような背景のもと、350 GHzを超える領域における超高速無線通信の実現に向けた技術的課題を解決し、100 Gbps級通信の実証をめざしたものとなる。
研究の内容と成果
本研究では、まず安定かつ小型なテラヘルツ信号源の実現に向けて、光ファイバ接続型の微小光共振器を用いたマイクロ光コムデバイスを開発した。窒化シリコン製の微小光共振器に対し、光ファイバを光学接着剤により直接接合する構造を採用することで、従来必要とされていた光学顕微鏡観測や多軸ステージによる精密な光学調整を不要とし、装置の大幅な小型化を実現した(図2)。さらに、この構成により励起光カップリング効率の時間安定性を大幅に向上させ、高出力励起光の利用を可能にした。その結果、長時間にわたる安定動作が可能となり、テラヘルツ帯における高安定・低雑音な信号生成の基盤技術を確立した。

図2:光ファイバ接続微小光共振器を用いたマイクロ光コム装置
次に、この光ファイバ接続マイクロ光コムを用いたテラヘルツ無線通信システムを構築した。マイクロ光コムの光注入同期により高安定・高信号対雑音比の2波長光キャリアを生成し、光領域で多値変調(QPSKおよび16QAM)を付与した。その後、フォトミキシングにより560 GHzの多値変調テラヘルツ波を生成し、変調信号を無線搬送した。受信側ではサブハーモニックミキサーを用いたヘテロダイン検出により信号を復調した。その結果、QPSK変調において84 Gbps、16QAM変調において112 Gbpsの無線伝送を達成した(図3)。これは、420 GHz以上の未踏周波数帯において、初めて100 Gbps級無線通信を実証した成果となる。

図3:テラヘルツ無線通信の実験結果(100 Gbps級伝送の実証)
今後の展開
本研究により、350 GHzを超えるテラヘルツ帯において100 Gbps級無線通信が実現可能であることが示され、6Gにおける超高速モバイル・バックホール通信や光・無線融合ネットワークの実現に向けた重要な技術基盤が確立された。
同研究グループは「今後は、マイクロ光コムのさらなる低位相雑音化により信号品質を向上させることで、より高次の変調方式を適用した一層の高速・大容量通信の実現が期待される。また、実用的な通信距離の拡張に向けては、大気吸収の影響が小さい周波数帯の選択に加え、テラヘルツ波の高出力化や高利得アンテナの導入が有効だ。これらの技術を組み合わせることで、テラヘルツ無線通信の実用化が加速し、次世代通信インフラへの応用が期待される」との展望を示している。





