液冷技術ソリューション プロバイダのIceotopeが、次世代AIインフラの発熱ボトルネック解消のため2,600万ドルを調達
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Iceotope Groupは5月14日(イングランド シェフィールド)、シリーズB資金調達ラウンドで2,600万ドルを調達したことを発表した。
今回の投資はTwo Seas CapitalとBarclays Climate Venturesが主導し、既存投資家のEdinv、ABC Impact、Northern Gritstone、British Patient Capitalも参加した。
Iceotopeは「当社この資金を、製品およびエンジニアリング開発の推進、特許ポートフォリオの拡充、そしてIceotope技術を組み込んだソリューションを市場に投入するためのエコシステムパートナーシップの加速に活用する」としている。
IceotopeのCEO兼CFOであるSimon Jesenko氏は「このような一流投資家からの資金調達は、当社の技術と市場投入のタイミングの両方を証明するものだ」とし、「当社は長年にわたり、AIインフラストラクチャ専用に設計された堅牢で差別化されたIPポートフォリオと製品の開発に取り組んできた。そして今、業界がより高度で持続可能な冷却技術を求めるまさにこのタイミングで、事業規模を拡大する準備が整った。お客様との直接的な取引、そしてパートナーエコシステムを通じて、今後大きなビジネスチャンスが広がっている」とコメントを出している。
AIとハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)がデータセンタからエンタープライズやエッジにおける大規模展開へと移行するにつれ、ハードウェア冷却における熱的な課題も変化している。Iceotopeの精密液冷技術は、あらゆる環境下でシステムを最大限の効率で動作させると同時に、冷却に必要なエネルギー消費量と水消費量を大幅に削減する。
Iceotope は「AIインフラストラクチャは、熱的な転換点に近づいている。次世代GPUおよびアクセラレータ プラットフォームは、ラックの電力密度を1MW以上に押し上げており、空冷やチップ直結型液冷ではもはや不十分だ」とし、「SemiAnalysisによると、液冷式AIアクセラレータの設置容量は、ハイパースケーラーやコロケーションによるAIワークロードの導入により、従来の冷却アーキテクチャでは対応できない負荷が増大し、2年以内に約3GWから40GWへと10倍以上に増加すると予測されている。液冷技術は、コアデータセンタだけでなく、熱管理の制約が同様に厳しいエッジ環境にも適用可能だ」と説明している。
Barclays Climate Venturesの責任者であるSteven Poulter氏は「AIの導入が世界的に急速に進む中、Iceotopeの液冷技術は、従来の冷却システムの限界が増大する状況に対し、時宜を得た革新的なソリューションを提供する」とし、「Iceotopeのアプローチは、AIと高性能コンピューティングの高まる需要を満たすだけでなく、データセンタの持続可能性を大幅に向上させる。Barclays Climate Venturesは、商業的に拡張可能な気候技術への投資を使命としており、Iceotopeは成長市場において確固たる地位を築き、重要な分野におけるエネルギー効率を大幅に向上させる能力を持っていると確信している」とコメントを出している。
編集部備考
■空冷から液冷への移行は、もはや選択肢というよりも、「移行せざるを得ない必然」として急速に進行している。従来、液冷技術はハイパースケーラーやHPCといった限定的な領域での採用にとどまっていた。しかし2026年現在、その適用範囲はコロケーション事業者や一般企業、さらにはエッジ環境にまで広がり、データセンタ業界全体に波及しつつある。
この変化の背景にあるのは、生成AIの爆発的普及に伴う計算密度の急上昇だ。従来の商用データセンタにおける空冷設計では、1ラックあたり20〜30kW程度が現実的な上限とされてきた。一方で、最新のAIサーバは1ラックあたり30kW〜100kW超の電力を消費し、極めて高い熱密度を発生させる。この熱を従来の空冷方式で処理しようとすれば、大規模な空調設備や強力な送風が必要となり、電力効率や設置スペースの観点で現実的ではない。
本質的な違いは、空気と液体の物性にある。液体は空気に比べて単位体積あたりで運搬可能な熱量が桁違いに大きく、高密度な熱源を効率的に処理できる。このため、現在のAIインフラにおいては、液冷への移行は効率化のトレンドというよりも、物理法則に基づく技術的強制力として進行していると言える。例えば、NVIDIAの最新GPUは700Wを超えるTDPを持ち、空冷のみでの安定動作は極めて困難になりつつある。
こうした状況を受け、ハイパースケーラーはギガワット級のデータセンタを液冷前提で設計し、コロケーション事業者も既存施設の液冷対応を急いでいる。同時に、冷却インフラを担うサプライチェーンも拡大しており、CDUやマニホールドといった関連機器の供給体制が世界規模で強化されている。
この中で注目されるのが、Iceotopeが展開する密閉型シャーシ液冷である。液冷技術は一般に、チップ単位で冷却するダイレクト・トゥ・チップ方式と、サーバ全体を液体に浸す浸漬冷却に大別されるが、Iceotopeのアプローチはその中間に位置する。サーバ単位で密閉された冷却機構を持つことで、液漏れリスクを抑えつつ、既存ラックへの組み込みや運用の柔軟性を確保している点が特徴だ。この特性は、設備改修の制約が大きい既存データセンタや、スペースに制約のあるエッジ環境との親和性が高い。
通信業界にとっても、この潮流は極めて重要な意味を持つ。5Gの高度化や6Gに向けた進化、さらにはユーザ近傍でAI処理を行うエッジコンピューティングの需要拡大により、基地局周辺や拠点ビルといった限られた空間に高密度な計算資源を配置する必要性が高まっている。しかしこれまで、電力・発熱・保守といった制約が、エッジへの高性能GPU配置の障壁となっていた。液冷技術は、これらの制約を同時に緩和し、「AIをエッジに持ち込むための前提条件」として機能し始めている。
今回の資金調達は、冷却ベンダの成長を意味するだけではない。AIインフラは、計算資源やネットワークだけでなく、「熱をいかに処理するか」という観点でその拡張性が決まる。AIインフラの高度化と共に、冷却は、ネットワークやコンピュートと並ぶ「見えないインフラレイヤ」として、その重要性を高めている。Iceotopeへの投資は、このボトルネックを解消しなければAI市場全体の成長が制約されるという認識の表れであり、同時にネットワークの高度化やエッジ展開を後押しする重要なシグナルでもある。





