光通信、映像伝送ビジネスの実務者向け専門情報サイト

光通信ビジネスの実務者向け専門誌 - オプトコム

有料会員様向けコンテンツ

NokiaがAI-RANの導入を加速し、NVIDIAプラットフォーム上でAIネイティブネットワークの進化を推進

期間限定無料公開 有料

期間限定無料公開中

 Nokiaは9月16日、北米、欧州、アジア太平洋、中東の通信事業者がAI-RANを初期評価段階からラボおよび実地試験へと進め、AIネイティブ6Gネットワークへの進化を加速させていることを発表し、AI-RANの世界的な勢いが高まっていることを明らかにした。

 Nokiaは「A1 Group、中華電信、du、e&、Mobily、stc、TPG Telecom、Zain Saudiとの連携拡大は、AI-RANが業界のビジョンから商用化へと急速に移行していることを示している。さらに、NTTドコモをはじめとする、以前発表した通信事業者との試験も着実に進展している」と説明している。

 今回の発表は、業界初の商用AIネイティブRANプラットフォームのローンチ、T-Mobile、ソフトバンク、Indosat Ooredoo Hutchisonとの評価、OEMパートナーの増加など、Nokiaの最近のAI-RANにおけるマイルストーンに基づいている。さらに、AI-RANプラットフォームおよびソフトウェア開発ツールに関してNVIDIAとの協業を拡大した。これらの取り組みにより、無線ネットワークは接続性とAIワークロードの両方をサポートするプログラマブル プラットフォームへと変革されつつある。また、オープンなAI-RANエコシステムの開発を加速させ、AI-RAN技術の商用展開に向けた準備が整っていることを示している。

 NokiaのAI-RANプラットフォームは、AIを活用した無線技術革新により既に20%以上のスペクトル効率向上を実現しており、2027年と2028年まで続く継続的なソフトウェア イノベーション ロードマップを通じて、さらなるスペクトル効率向上をめざしている。これにより、通信事業者は既存のスペクトルとインフラ投資からより大きな価値を引き出し、従来のハードウェア更新サイクルへの依存度を低減することで、容量の増強、ネットワーク経済性の向上、新たなサービス機会の創出が可能になる。

 AIアプリケーションが新たなトラフィックパターン、アップリンク需要の増加、分散コンピューティングへの要求の高まりを生み出す中、通信事業者はネットワーク容量、スペクトル効率、収益化機会を向上させる新たな方法を模索している。NokiaのAI-RANプラットフォームは、AIネイティブなanyRANソフトウェアとNVIDIAのAerial RAN Computerを組み合わせることで、通信事業者が既存の周波数資産からより高いパフォーマンスを引き出すことを支援する。これにより、5G向けのソフトウェア定義アーキテクチャを実現し、6Gへのソフトウェアアップグレードパスを提供するとともに、将来のAIネイティブネットワークの基盤を構築する。

 Nokiaのモバイルインフラストラクチャ担当プレジデントであるEmma Falck氏は「AIは通信の未来を再構築し、通信事業者にとって無線ネットワークの役割を再考する大きな機会を生み出している。NVIDIAおよび拡大を続けるパートナーエコシステムと共に、Nokiaは通信事業者がネットワークを、接続性とAIサービスの両方をサポートできるインテリジェントでプログラマブルなプラットフォームへと変革できるよう支援している。世界中のサービスプロバイダからの関心の高まりは、AI-RANが構想段階から急速に商用化へと移行し、AIネイティブな6G時代の基盤技術になりつつあることを示している」とコメントを出している。

 Omdiaのモバイルインフラストラクチャ担当プラクティスリーダーであるRemy Pascal氏は「Nokiaが発表した通信事業者の幅広い連携は、AI-RANが研究段階から、ますます多くのサービスプロバイダにとって戦略的な優先事項へと進化していることを示している。特筆すべきは、地域を問わず多様な通信事業者が参加していることだ。これは、ネットワークパフォーマンスと運用効率の継続的な向上、そして6Gへの進化において、AIが不可欠であるという業界コンセンサスが生まれつつあることを反映している。導入が進むにつれ、通信事業者、ベンダ、そしてより広範なエコシステム間の連携が、AI-RANの潜在能力を最大限に引き出す上で極めて重要となるだろう」とコメントを出している。

 NVIDIAのテレコム担当SVPであるRonnie Vasishta氏は「AI-RANは、モバイルネットワークを世界最大規模の分散型AIインフラストラクチャへと変革する。NVIDIAのAerial RAN ComputerとNokiaのAI-RANソフトウェアを活用することで、通信事業者は、パフォーマンスと効率性を継続的に向上させながら、エッジで全く新しいAIサービスをサポートするソフトウェア定義ネットワークを構築できる。世界の通信事業者の動向は、AI-RANが今日の5G Advancedの基盤となりつつあり、将来的にはソフトウェアアップグレードによってAIネイティブな6Gへと進化していくことを示している」とコメントを出している。

編集部備考

AI-RANは「6Gのための技術」から、既存5G投資を高度化する技術へ

 今回の発表で注目したいのは、AI-RANが「6G時代の新しい無線技術」という将来像だけではなく、現在稼働している5Gネットワークの価値を高める技術として位置付けられ始めている点だ。Nokiaによれば、AI-RANプラットフォームではすでにスペクトル効率を20%以上改善しており、2027~2028年にかけてもソフトウェアによるさらなる性能向上をめざしている。つまり、AI-RANは新しい基地局へ一斉に置き換えるという発想ではなく、既存のスペクトルやネットワーク設備から、より多くの通信容量を引き出す方向に進んでいる。

 通信事業者にとって、これは重要な意味を持つ。AIによって通信需要が拡大する一方、その需要に対応するために基地局や周波数、伝送設備などへの投資を際限なく増やせるわけではない。そこで、既存設備をどこまで効率よく使えるかという視点が重要になる。AIを使って無線資源の利用効率を高められるのであれば、AI-RANは従来技術の延長だけではなく、既存ネットワーク投資の回収を支えながら、次の投資タイミングを柔軟にする次世代RAN技術としても捉えられる。

 さらにNokiaは、5G/5G-Advancedから6Gへソフトウェアで進化できる道筋を示している。これは、通信事業者にとって「5Gか6Gか」という二者択一ではなく、現在の設備を使いながら段階的にAI-RANへ移行し、その先で6Gへつなげるという考え方になる。

 AI-RANの普及を考えるうえで重要なのは、6Gという遠い将来だけを見ることではない。むしろ、AIによって通信需要が増大する現在、既存のネットワーク資産からどれだけ新しい価値を引き出せるか。その現実的な課題に対する一つの回答として、AI-RANの商用化が進み始めていると見ることができる。

RANは「通信設備」から、AIと通信を支えるプラットフォームへ

 AI-RANを考えるうえでは、スペクトル効率の向上だけでなく、RANそのものの役割が変わり始めている点にも注目したい。従来のRANは、基地局や無線設備によってユーザに通信を提供することが基本的な役割だった。これに対してNokiaは今回、AI-RANによって無線ネットワークを「通信」と「AIワークロード」の双方を支えるプログラマブルなプラットフォームへ変えていく方向性を示している。

 この変化の背景にあるのが、AIとコンピューティングのネットワークへの組み込みだ。NokiaのAI-RANは、同社のAI-native anyRANソフトウェアとNVIDIA Aerial RAN Computerを組み合わせ、AIアクセラレーションをRANに取り込む構成となっている。Nokiaはこれを、5G向けのソフトウェア定義型アーキテクチャと、6Gへのソフトウェアアップグレードを可能にする基盤として位置付けている。
 ここで重要なのは、「RANにAIを搭載する」というシンプルな話ではない。RANの機能そのものをソフトウェア化し、AIによる処理能力と組み合わせることで、通信設備を継続的に進化できるコンピューティング基盤へ変えていくという発想だ。Nokiaは、既存ベースバンドへのAIアクセラレーション追加、専用AI-RANノード、COTSサーバーを利用したクラウドネイティブAI-RANという複数の導入経路も示している。

 これは通信事業者の設備投資の考え方にも影響する可能性がある。従来は、ネットワークの性能向上といえば新しいハードウェアへの更新が中心だった。しかし、AI-RANではソフトウェアやAIモデルの進化によって、同じハードウェアから引き出せる性能を継続的に高めるという考え方が強くなる。

 そう考えると、AI-RANは「AIを利用するRAN」というより、「AI時代にRANそのものをプログラマブルなコンピューティング基盤へ変える取り組み」と捉えた方が、その本質が見えやすい。通信とコンピューティングの境界が薄れるなかで、RANもまたネットワークの一機能から、エッジAIを支えるプラットフォームへと役割を広げようとしている。

AIによって通信需要そのものが変わるなら、RANも変わらなければならない

 AI-RANへの注目が高まっている背景には、AIによって通信需要そのものが変わり始めていることがある。今回のNokiaの発表でも、AIアプリケーションによって新しいトラフィックパターンや上り通信需要が生まれ、さらに分散コンピューティングへの要求が高まっていることがAI-RANの背景として挙げられている。

 これまでのモバイル通信は、スマートフォンを利用する人間を中心に考えればよかった。もちろん動画などによって大容量化は進んできたが、基本的には「人が通信を利用する」という構造だった。しかし、生成AI、エージェント型AI、さらにフィジカルAIが普及すれば、ネットワークの利用主体は人間だけではなくなる。AIがデータを取得し、別のAIやクラウド、エッジコンピューティングと情報をやり取りし、その結果を再び人間や機械へ返すという通信が増えていく可能性がある。
 その場合、問題になるのは単純なトラフィック量だけではない。どこからどこへ通信するのか、上りと下りのどちらが多いのか、どの程度の遅延が必要なのか、そしてどこでAI処理を行うのかといった通信の「性質」そのものが変わってくる。NokiaがAI-RANについて、スペクトル効率や容量だけでなく、エッジでのAIワークロードを支えるプラットフォームとして説明しているのも、この変化を意識したものと考えられる。

 ここには、AI時代の通信ネットワークを考えるうえで重要な視点がある。AIによって通信量が増えるからネットワークを増強する、というだけではなく、AIによって通信の使われ方が変わるから、ネットワーク自身もその変化に適応しなければならないということだ。

 そうした意味でAI-RANは、単なる無線アクセス技術の進化にとどまらない。AIによって生まれる新しい通信パターンを効率よく収容し、その一部の処理までネットワーク側で担うための仕組みへと、RANの役割を広げる試みといえる。AIがネットワークを変えるだけでなく、AIによって変化する通信需要がネットワークの構造を変えていく。その相互作用こそが、AI-nativeなネットワークへの移行を考えるうえで重要になりそうだ。

(OPTCOM編集部)