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Nokiaが、Microsoftとの連携によるエージェント型統合データ基盤でネットワーク自動化を加速

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 Nokiaは9月17日(エスポー)、Microsoftとの長年にわたるパートナーシップをさらに強化し、ネットワーク自動化を加速させるため、通信事業者向けに、より高速で信頼性の高いAIドリブン型運用を支援するエージェント型統合データ基盤の開発を発表した。

 この連携により、Nokia Data Suiteのすぐに利用可能な通信事業者向けデータ製品と、Microsoft Fabricの統合分析、ガバナンス、AI機能が融合し、ネットワーク スタック全体にわたるインテリジェントなエージェントベース ソリューションを実現する。
 Nokiaは「通信事業者は、高品質で信頼性の高いデータに数週間ではなく数分でアクセスできるようになり、複雑なデータ統合がシンプル化され、インサイト獲得までの時間が大幅に短縮される」としている。

 Nokiaの自律ネットワーク担当SVPであるVivek Jaiswal氏は「NokiaとMicrosoftは、世界中の通信事業者に、適切なデータを、適切なタイミングで、適切な目的のために提供する。両社は協力して、ネットワークが静的なインフラストラクチャから、プログラマブルなAIネイティブプラットフォームへと進化するのを支援する」とコメントを出している。

■断片化されたデータからスケーラブルな自律性へ
 Nokia Data Suiteは、グラスボックス型データ品質管理と通信事業者固有のセマンティックモデリングを備えた、再利用可能な通信事業者向けデータ製品を提供する。これにより、AIによる意思決定における透明性、説明可能性、信頼性が確保される。Microsoft Fabricは、OneLakeストレージ、分析ツール、そしてMicrosoft 365 Copilot、Foundry、Power BIといったAIネイティブ アプリを備えた統合データプラットフォームを提供する。

 これらの機能を統合することで、通信事業者は断片化されたデータ環境から、より自律的でスケーラブルなモデルへと移行できる。Nokiaのデータ製品はオンデマンドでプロビジョニングでき、Microsoft Fabricのエンタープライズ、IT、サードパーティのデータソースとシームレスに統合できます。これにより、自動的な根本原因分析やクローズドループ運用など、サービス品質と効率性を向上させるための幅広いAIユースケースが可能になる。

 このソリューションは、マルチベンダかつクロスドメインの通信環境向けに設計されており、オンプレミス環境を含むハイブリッドおよびクラウド インフラストラクチャをサポートする。この柔軟性により、通信事業者は規制要件を満たしながら、グローバル規模でAIと自動化戦略を推進できる。また、従来の方法では数週間かかるデータ準備と運用化にかかる時間を短縮することで、通信ネットワークにおけるAI導入の主要な障壁を解消する。

 Microsoftのワールドワイド通信・メディア担当CVPであるSilvia Candiani氏は「通信事業者は、AIを実験段階から日常的なネットワーク運用へと移行させる準備ができているが、そのためには信頼できるデータ、強固なガバナンス、そして拡張可能なプラットフォームが必要だ。Nokia Data SuiteとMicrosoft Fabricを統合することで、複雑なネットワークデータを実用的なインテリジェンスへと迅速に変換する道筋が拓かれる」とコメントを出している。

■クラウド、データ、AI、サイバーセキュリティにおけるパートナーシップの強化
 この協業は、NokiaとMicrosoftが既に築いているクラウド、データ、AI、サイバーセキュリティ分野におけるパートナーシップを基盤とし、通信事業者の顧客向けの開発および市場投入活動を支援するものとなる。
同ソリューションは既に提供開始されており、自律型ネットワークのユースケースと顧客導入事例は継続的に拡大している。初期の市場投入事例としては、下記が挙げられる。

自律型VoNR(Voice over New Radio)保証:サービス障害の検出と解決を支援する。エージェントが異常を特定し、根本原因分析を実行し、ネットワーク、サービス、加入者といった360度全方位の可視性に基づいて推奨アクションを提示する。

ジオ エクスペリエンス:AIと機械学習を活用し、RAN加入者セッションを正確な地理的位置にマッピングすることで、無線パフォーマンスが低下しているユーザを特定し、カバレッジや容量のホットスポットを特定する。加入者、ネットワーク、RFデータを相関させることで、この機能はエージェントを用いてRAN問題の根本原因を分析し、ネットワークスライスと標準4G/5Gの両方のユーザエクスペリエンスを向上させるための実用的な推奨事項を提供する。

 予測保守と障害管理では、エージェントが過去データとリアルタイムデータを分析し、ネットワーク問題が顧客に影響を与える前に予測する。

 プロセス全体を通して、AIドリブンの運用アシスタントがネットワークエンジニアを補佐し、複雑なクロスドメイン環境において、状況に応じた洞察、推奨アクション、自動化されたワークフロー実行を提供する。その結果、オペレーターは人間の監視を維持しながら、より高いレベルのネットワーク自律性を実現し、明確に定義されたガバナンス境界内で、AIがさらに複雑になっていく運用責任を担うことが可能になる。

編集部備考

AIエージェント時代において、ネットワーク自動化の起点は「AI」ではなく「データ」になる

 AIエージェントによるネットワーク運用というと、AIが障害を検知し、原因を分析し、必要な対処まで自律的に実行する姿を想像しやすい。しかし、今回のNokiaとMicrosoftの取り組みを見ると、その前段にあるデータ基盤こそが重要な意味を持っていることが分かる。

 通信ネットワークでは、RAN、コア、トランスポート、サービス、加入者など、それぞれの領域から膨大なデータが生成される。しかも通信事業者の実際のネットワークは、単一ベンダー、単一ドメインで構成されているとは限らない。AIエージェントがネットワーク全体を理解して判断するには、こうした異なるシステムから得られるデータを単純に集めるだけではなく、データの意味や品質を揃え、相互に関連付けられる状態にしておく必要がある。
 今回の取り組みでは、Nokia Data Suiteが持つ通信事業者向けのデータプロダクトと、Microsoft Fabricのデータ統合・分析機能を組み合わせることで、この基盤を構築する。Nokiaは、信頼性の高い統合データへのアクセスを従来の「数週間」から「数分」へ短縮できるとしている。

 ここから見えてくるのは、AI時代のネットワーク自動化では、AIモデルそのものだけが競争力になるわけではないということだ。AIが高度な判断を行うほど、その判断材料となるデータの品質、意味、履歴、相互関係が重要になる。いわば、AIエージェントがネットワークを「考える」ためには、その前にネットワークをAIが「理解できる形」に変えておかなければならない。

 これまでのネットワーク自動化が「装置をどう制御するか」という問題だったとすれば、AIエージェント時代には「ネットワーク全体をどうデータとして理解させるか」という問題が加わる。自律化の進展は、AI技術だけでなく、通信事業者が保有するデータ基盤そのものの再構築を促すことになりそうだ。

AIエージェントは、通信事業者が蓄積してきた「運用ノウハウ」を再利用可能にする

 今回の取り組みをもう一段掘り下げると、AIエージェントの価値は省人化だけではないことが見えてくる。

 通信ネットワークの運用には、長年にわたって蓄積された膨大な知識がある。例えば、ある障害が発生した際に、どのデータを確認し、どの現象と別の現象を関連付け、どの原因を疑い、どのような対処を行うのか。こうした判断には、装置の仕様書だけでは説明できない現場の経験や運用ノウハウが含まれている。
 従来、このような知識は個々のエンジニアや運用チームの経験として蓄積される側面が大きかった。しかし、AIエージェントがネットワークデータを継続的に参照し、分析や判断を行うようになれば、こうした知識をデータモデル、分析ロジック、AIモデル、ワークフローなどに組み込み、組織として再利用することが可能になる。

 NokiaはData Suiteについて、通信特有の意味付けを行った再利用可能なデータプロダクトを提供し、データの系譜や品質管理、可観測性なども組み込むとしている。また、同社は別のネットワーク自動化基盤でも、信頼できるリアルタイムデータをAIエージェントに与え、ガードレールの下で説明可能なアクションを実行させる考え方を示している。

 これは、AIによって「人間の仕事を減らす」というだけの話ではない。むしろ重要なのは、これまで人間の頭の中や現場の経験に存在していた運用知識を、ネットワーク全体で利用できる形に変換することだろう。

 AIエージェントが複数の領域を横断して働くようになれば、一人の熟練エンジニアが持っていた知識を、より広いネットワーク運用に適用できる可能性も出てくる。一方で、そのためには何を「正しい知識」としてAIに与えるのか、どの判断を自動化し、どこに人間の確認を残すのかという設計も必要になる。
 つまり、AI時代の通信事業者にとって重要な資産は、設備やデータだけではない。ネットワークを安定して運用してきた経験そのものを、AIが利用できる知識へ変換する能力も、新たな競争力の一つになっていく可能性がある。

ネットワーク自律化の本当の課題は、「AIに何をさせるか」ではなく「どこまで任せるか」

 AIエージェントによるネットワーク自動化が進むほど、最後に残るのは技術的な能力だけではなく、「どこまでAIに任せられるのか」という問題になる。
 一般的な業務システムであれば、AIが誤った判断をしても、人間が確認して修正すれば済むケースがある。しかし通信ネットワークでは、設定変更やトラフィック制御などの判断が、サービス品質や多数のユーザに直接影響する可能性がある。そのため、「AIが判断できる」ことと、「AIに実行させてよい」ことは同じではない。

 今回のデータ基盤が重要なのも、この問題と無関係ではない。NokiaはData Suiteについて、データの品質管理や系譜、監査性、説明可能性などを組み込むことで、AIが信頼できるデータに基づいて判断できる環境を整えるとしている。さらに同社のAgenticOpsの考え方では、AIOpsによる大規模な監視・異常検知と、エージェントによる高度な推論・アクションを組み合わせ、ガードレールや人間による段階的な関与を含めながら自律化を進める構想が示されている。
 ここから考えると、ネットワーク自律化は一気に「人間からAIへ」移行するものではない。まずAIがデータを収集・整理し、次に異常や原因を分析し、その結果を人間に提示する。その後、人間が承認した範囲でAIが設定変更などを実行し、十分な実績が蓄積されれば、限定された領域から自律的なクローズドループへ移行する――といった段階的な進化が現実的になる。

 この意味で、AIエージェントの普及によって、ネットワーク運用の価値は「自動化率」だけでは測れなくなる可能性がある。重要なのは、AIが判断できること、判断の根拠を確認できること、そして必要な場合には人間が介入できることを、どこまで一体化できるかだ。

 通信ネットワークは、ただAIに任せれば良いという単純なシステムではない。むしろAIに任せる領域が広がるほど、データ品質、運用ルール、権限管理、監査性、人間との役割分担といった「任せるための仕組み」が重要になる。自律化の成熟度とは、AIが人間の手間をどれだけ排除したかではなく、人間が安心してAIに仕事を委ねられる領域をどこまで広げられたかという視点から捉える必要があるだろう。

(OPTCOM編集部)