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NTTとスカパーJSAT、持続可能な社会の実現に向けた新たな宇宙事業のための業務提携契約を締結

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 NTTとスカパーJSATは5月20日、持続可能な社会の実現に向けた新たな宇宙事業創出をめざすことに合意し、ビジネス協業を目的として、5月19日に業務提携契約を締結していたことを発表した。
 グローバルなコンピューティング・ネットワーク技術を有しIOWNの実現に取り組むNTTと、30年以上の衛星通信、衛星放送をはじめとする宇宙事業での豊富な技術・実績を有するスカパーJSATの連携により、宇宙統合コンピューティング・ネットワークによるイノベーションで新たな宇宙インフラを構築し、持続可能な社会に貢献する狙いだ。

業務提携の背景

 持続可能な経済・社会活動を確立していく上では、エネルギー・環境/気候変動・防災・スマートシティなどの多様な分野において、宇宙空間をICTインフラ基盤として効果的に最大活用することが、今後より一層重要となる。そのために、宇宙空間のICTインフラ基盤は、従来とは異なる新たな技術・アーキテクチャが求められる。
 NTTとスカパーJSAT では、宇宙空間のICTインフラ基盤の実現に向けた検討・議論を進め、本業務提携契約の締結に至った。
 グローバルな地上のインフラを有しIOWN構想の実現に取り組むNTTと、30年以上の衛星通信・衛星放送をはじめとする宇宙事業での豊富な技術・実績を有するスカパーJSATの連携により、新たな「宇宙統合コンピューティング・ネットワーク」の構築に挑戦し、持続可能な社会に求められるインフラ実現に貢献していくという。

宇宙統合コンピューティング・ネットワーク

 宇宙統合コンピューティング・ネットワークは、NTTのNW/コンピューティングインフラと、スカパーJSATの宇宙アセット・事業を統合して構築する新たなインフラだ。地上から高高度に浮かぶHAPS、宇宙空間の低軌道・静止軌道まで複数の軌道を統合する。また、それらと地上を光無線通信ネットワークで結びコンステレーションを構成し、分散コンピューティングによって様々なデータ処理を高度化する。また、地上のモバイル端末へのアクセス手段を提供し、超カバレッジを実現する。

宇宙統合コンピューティング・ネットワークがめざす世界観イメージ

取組予定事業

今回の業務提携における取組のイメージと現時点の取組予定事業は次の通り。

宇宙統合コンピューティング・ネットワークで取組む分野

宇宙センシング事業:地上と宇宙のセンシングデータ統合基盤
 従来の観測衛星による観測データに加え、世界で初となる低軌道衛星MIMO技術によりグローバルに設置されている地上IoT端末データを収集する、宇宙と地球を統合したセンシング基盤を提供する。さらには、テラヘルツ波等により従来見えなかった情報を可視化する新たなセンシング技術を開発し、宇宙データの価値向上、宇宙データ利活用の可能性拡大に貢献する。

宇宙データセンタ事業:宇宙における大容量通信・コンピューティング基盤
 光電融合技術による低消費電力化と高宇宙線耐性の実現により、宇宙におけるコンピューティング処理基盤を提供する。また、光通信技術を活用した分散処理コンピューティングにより様々な高度なデータ処理を可能とする。例えば、宇宙で収集される膨大な各種データ等を高速光通信ネットワークを通じて即座に宇宙空間にて、情報集約・分析処理し、情報を必要とするユーザに必要な情報のみを即座に届けることで、宇宙データ利活用のリアルタイム性、ユーザ利便性の飛躍的な向上に貢献する。

宇宙RAN(Radio Access Network)事業:Beyond5G/6Gにおけるコミュニケーション基盤
 Beyond5G/6Gで期待される衛星(低軌道・静止軌道)・高高度の通信プラットフォームを用いたモバイル基地局によるアクセスサービスを提供する。例えば、災害時における究極の高信頼メッセージングサービスや超広域カバレッジ化等、より一層のモバイル通信の利便性/価値向上に貢献する。

役割分担

NTT

  • 地上の最新コンピューティング技術(AI処理・分散処理/記憶など)
    ・NW技術(MIMO・FSOなど)、グローバルNW/DC

スカパーJSAT

  • 衛星・管制システムの経済化・信頼性向上などの適正化、並びに周波数・無線局免許手続きや衛星運用
  • ネットワーク運用など衛星オペレータとしての知見と業界リレーションシップ

今後の展開

 NTTとスカパーJSATは「2022年から順次技術実証を始め、事業の土台となる技術開発を進める。並行して商用衛星の打上を準備し、2025年頃から順次打上・商用開始をめざす。また、グローバルな宇宙・衛星事業者との連携やイノベーション協創も図り、日本及び世界での宇宙開発をリードする事業創出をめざす」との考えを示している。

事業化想定スケジュール