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OKIが、振動雑音影響を緩和する「光ファイバー外乱抑圧技術」を開発し、高精度な振動計測を実現

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「多点型レーザー振動計」における外乱振動を約99%除去

「多点型レーザー振動計」設置イメージ

 OKIは3月23日、光ファイバーを介して多数の小型レーザー照射部を接続する多点レーザー方式により複数の対象物の振動を計測する「多点型レーザー振動計」において、振動雑音影響を緩和する「光ファイバー外乱抑圧技術(特許出願中)」を開発し、敷設された光ファイバーに混入する環境由来の外乱振動を約99%除去することに成功したと発表した。

 同社は「屋外に光ファイバーを設置した場合でも雨風の影響を受けずに対象物の振動が計測できるほか、様々な装置の振動が伝わる工場などの現場においても、高精度な振動計測が可能になる」と説明している。

 「多点型レーザー振動計」は、センシングを行う対象の近くにレーザーを照射するセンサヘッドを設置し、長距離の光ファイバーで振動計本体と接続することで、多点にある対象物の振動を計測する。振動計本体以外は電気的な処理を行わないことから、高い防爆性能を必要とする用途などに活用することができる。しかし、光ファイバーは一般的に敷設環境の振動に敏感で、敷設距離が長くなるほどその影響が蓄積して、計測対象の振動の把握が難しくなるため、屋外、あるいは工場のように多種多様な振動を発する装置がある環境への適用には課題があった。
 そこでOKIは、光ファイバーに導通する光波の外乱振動が情報として累積することに着目して、「光ファイバー外乱抑圧技術」を開発したという。これは、計測対象の振動と光ファイバーに混入した外乱振動の情報を分離させることで、外乱振動の情報を抑制することを可能にしている。また、光ファイバー伝搬中に生じる多様な屈折率の変化に伴う光の特性変化を補償し、振動計本体とセンサヘッドの安定した長距離分離も実現した。
 OKIは「多点型レーザー振動計に本技術を組み込み、実環境を想定した実験を行った結果、雨や風などの影響を想定した10kHzの外乱振動を99%以上抑圧することに成功した。これにより、多点型レーザー振動計の設置環境の自由度が増し、多様な振動のある環境に適用することが可能となる」と説明している。

 OKIは今後、この技術を組み込んだ「多点型レーザー振動計」の商品化により、広範囲な敷地に散在した重要設備の異常検知を行う「振動モニタリングソリューション」の社会実装をめざすという。

多点型レーザー振動計による実証実験
 OKIは、「多点型レーザー振動計」に1kHzの計測対象振動とほぼ同等の振幅を持つ10kHzの外乱振動を混在させ、「光ファイバー外乱抑圧技術」搭載時と未搭載時で測定を実施した。同社は「10kHzの外乱振動は、製造現場などで運用されている機械設備でも検出される振動周波数であるため、実環境で発生する外乱振動をこの周波数で模擬できると考えられる。その結果、本技術未搭載時にあった10kHzの外乱振動が、本技術を搭載した際には99%以上抑圧できていることが確認できた」と説明している。

多点型レーザー振動計による実験の結果