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「メディカル ジャパン2018【大阪】」に見る、医療・介護のIT技術~注目の高まる遠隔医療やAI~

INTERVIEW 有料

 医療・介護の総合展である「メディカル ジャパン2018【大阪】」(主催:リード エグジビション ジャパン。共催:日本病院会。特別協力:関西広域連合。)が2月21日~23日にインテックス大阪で開催される。「メディカルジャパン」は医療IT、医療機器や病院設備、介護や看護製品、製薬、再生医療といった先端医療技術を扱う複数の専門展から成り立っており、今年は新たに地域包括ケアの専門展が新設されたことで計7つの専門展による構成となった。全体の出展社数を見ると、昨年の実績は1,060社。そして今年は1,340社と更に規模を拡大している。
 医療・介護を横断的に扱う「メディカルジャパン」の誕生後、来場者からの強い要望で誕生したのが「医療ITソリューション展」だ。「メディカルジャパン」の発足当初、医療ITはその中の1コーナーに過ぎなかったが、医療業界におけるITの重要性が急速に高まっていることから規模の拡大が望まれ、2016年より独立した展示会としてスタートした。「医療ITソリューション展」単体の出展社数は、昨年実績で80社、そして今年は110社と順調に推移している。
 医療・介護分野におけるIT技術としてどのような製品、ソリューションが注目されているのか、また今後の実用化が期待されているIT技術としてどのようなものがあるのか。今回はメディカルジャパン事務局長の蒲原雄介氏より、「医療ITソリューション展」、そして新設された「地域包括ケアEXPO」の傾向を中心に話を聞いた。

メディカルジャパン事務局長 蒲原雄介氏

OPTCOM:医療ITで注目されている技術を教えてください。
蒲原事務局長:
今、医療分野のキーワードとして遠隔医療があり、医療における情報の共有化は病院・クリニックのIT部門の方々から注目されています。既に電子カルテなどITの活用により病院内での情報共有は進んでいますが、これを病院とクリニック間といったように医療施設同士を繋ぐ規模へと拡大することで、特に高齢者に対する医療を支援する有効な手段として期待されています。今年は医療報酬と介護報酬の改定のタイミングであり、また政府も遠隔医療に積極的であることから、「医療ITソリューション展」では遠隔医療に関する出展が増えています。
 その他、注目のトピックとしては、ビッグデータ、そして4K・8Kによる高精細な手術モニタもあります。

――遠隔医療やビッグデータというと、セキュリティが気になります。
蒲原事務局長:
確かに、医療情報は患者の健康や生命に関わることですので、個人情報の中でも医療情報の重要度は高く、万が一の漏洩、改ざんがあってはなりません。また、医療の現場に携わる方々の現実として、個人情報保護法改正による法律上のリスクも高まりました。とは言え、遠隔医療によるデータ活用は病気の抑制に繋がり、ひいては日本の課題である医療費の低減にも繋がりますので、医療分野として必要な技術となります。
 そうした背景もあり、「医療ITソリューション展」の併設セミナーである「医療情報フォーラム」では、遠隔医療の必要性や管理、そしてビッグデータやAIの活用に関するセッションも設けています。例えば、電子カルテやビッグデータといった新しいシステムを導入するにあたり、病院でITを担当されている方々はどういった点に注意するべきかを、実際に運用している大学や、システムを提供しているメーカー、そして法律家の観点ということで弁護士に解説していただきます。
 メーカーと医療機関によるPHRのディスカッションも設けています。例えば、異なるメーカーの機械で集めたビックデータを比較することは医学的見地から実用的なのかといった課題がありますので、IT利活用の現状における課題を議論することで、医療現場で役立つ情報をご提供したいという試みです。

――「医療情報フォーラム」の各講演タイトルから、医療分野の課題や、将来期待されている技術が分かりますね。
蒲原事務局長:
同フォーラムのプログラムを企画したアドバイザリー委員は、大阪大学大学院の松村泰志教授をはじめ、医療IT分野の第一線で活躍されている大学やメーカーのキーマンから構成されています。
 講演内容も「官・民・医」を網羅しており、例えば基調講演では「未来のヘルスケアデータ管理へのプロローグ」と題して医療情報システム開発センターや厚生労働省からご講演いただき、特別講演では「日本型医療用人工知能の最前線」と題してNECと富士通にご講演いただきます(各講演の詳細はこちら)。医療においてもAIは注目のキーワードであり、例えば医学に関する膨大な文献を学習したAIが現場の医師に提案し、判断を支援するソリューションが提案されており、既に大学病院で活用の動きが見え始めています。昨年は人工知能のWatsonを医療の現場にどう活かすかを日本アイ・ビー・エムと東京大学に解説していただいたところ、多くの方に聴講していただきました。そこで今年は国内メーカーのAIということで、NECと富士通から医療に対してAIをどのようにフィードバックしていくのかを解説していただきます。
 「医療情報フォーラム」全体の規模としては、25名の方にご講演いただき、受講者は約2,500人となります。このフォーラムを受講いただいた方には、日本医療情報学会より医療情報技師ポイントが2ポイント付与されますので、病院の方々には情報の収集以外にもメリットがあります。

――新設された「地域包括ケアEXPO」もITが関わるのでしょうか。
蒲原事務局長:
地域包括ケアは医療機関、介護施設、および在宅、家族が協力し、高齢者が活き活きと暮らせる環境を実現する取り組みですので、その実現には多職種の連携が必要となり、IT分野の技術は非常に重要になります。例えば、従来の病院では医師と看護師だけの連携でしたが、今では薬剤師や作業療法士とも連携しています。地域包括ケアではこの概念をもう一段階進め、医療と介護の連携、つまり医師と介護士といった別々の組織に所属している方々がITを共有して高齢者をケアする形となります。
 こうした地域包括ケアの専門展を実現できたのも、医療と介護、これらに関連するITを横断的に扱う「メディカルジャパン」の良さだと自負しています。地域包括ケアは厚生労働省が推進していることもあり、ケアの現場だけではなく介護事業の経営としても重要なテーマとなっています。「地域包括ケアEXPO」の立ち上げも、介護老人保健施設側からのご要望がきっかけでした。
 介護に関する「メディカルジャパン」のトピックとしては、日本介護協会が主催している「介護甲子園」の決勝が新たに併設されます。これは今回で7回目を迎える日本一の介護事業所を決定するプレゼンテーションであり、会場では6,000以上のエントリーの中から勝ち抜いた5組によるプレゼンを聴くことができます。これにより、今まで以上に介護関係の来場者が増えると思います。
 こうした背景から、「地域包括ケアEXPO」会場は地方自治体、医師会、介護関係者、そして地域包括ケアに役立つソリューションを提供する企業が一堂に会する場となりますので、会期中は効率の良い商談や情報交換ができるでしょう。

――展示の傾向について教えてください。
蒲原事務局長:
一般企業向けのITを医療・介護に応用する取り組みは進んでおり、例えばテレビ会議システムをベースにした遠隔医療支援システム、そしてネットワークカメラやセンサを使った見守りシステムなど、医療・介護用途の実情に合った製品が出展されています。
 また、医師として医療の現場に携わった経験のある方が経営する企業も増えています。お話を聞くと、医療の現場に不足していると感じたものを自分たちのビジネスとするために独立される方が多いです。例えば電子カルテやSNSを医師の視点で開発したというケースもあります。
 会場では既存のIT企業だけでなく、こうした医師経験者の企業も出展していますので、ご来場の前に公式Webの出展社情報をご覧いただき、会期中は効率良く多くのブースを訪問していただければと思います。この出展社情報画面では、来場者をサポートするツールとしてマッチングシステムも導入しています。これは来場者がどういった製品、システムを探しているのかを事前に登録していただくことで、出展社からメールが届きます。そのメールの内容に興味があれば、アポイントのボタンをクリックしていただくことで、当日のスケジュールを調整する仕組みとなっています。前回から始めたところ非常に好評で、来場者からは「出展社がこちらの課題を解決するための資料を用意してくれているので、自分たちに必要なものかどうかすぐに判断でき、良い商談ができた」という声も頂いています。会期中に商談が進むので、その後の導入もスムーズです。商談の金額は年々増えており、今年は「メディカルジャパン」全体で200億円を見込んでいます。

――最後に、来場者へのメッセージをお願いします。
蒲原事務局長:
より効率の良い商談の場となるよう、今年から招待券をお持ちでない方は、5,000円の当日券をお求めいただくことになりました。もちろん事前にホームページなどで招待券をお申込みいただければ郵送でお届けしますので、これまで通り無料で入場できます。このことにより、医療やITに関係が深い方のみが多く来てくださるようにと考えております。
 会期中は大阪駅と会場間に直通バスを430便ほど運行します。有料になりますが、座って移動できますので、多くの来場者にご利用いただいています。
 また、おかげさまで「メディカルジャパン大阪」は年々出展規模を拡大し、来場される方から好評を博しています。そうした評価の高まりから、東京でもぜひ開催してほしいという声が多く寄せられるようになり、このほど9月に東京でも開催することが決まりました(詳細はこちら)。今後も、大阪・東京どちらも中身を充実させ、皆様の期待に応えていきたいと考えております。。東京、大阪それぞれに特色が有りますので、来場、出展をご検討いただき、課題の解決にお役立ていただければと思います。