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つくばフォーラム2019Preview【青柳所長インタビュー】(1)

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時代を支え 次代を拓く アクセスネットワーク
~サービスを創出する世界最先端技術と、業務を変革する現場最先端技術~

 10月31日、11月1日の2日間、NTTアクセスサービスシステム研究所(以下、AS研)において、アクセスネットワークに関する展示会「つくばフォーラム2019」(主催:NTT)が開催される。
 今年のテーマは「時代を支え 次代を拓く アクセスネットワーク~サービスを創出する世界最先端技術と、業務を変革する現場最先端技術~」。NTTアクセスサービスシステム研究所 所長の青柳雄二氏は「今回、つくばフォーラムは第30回という節目を迎える。これまでの社会を支えてきたアクセスネットワーク技術を振り返るとともに、ここから改めて我々が将来のアクセスネットワークを切り拓き “Your Value Partner”としてスマートな世界を実現していくという決意を込めた」としている。
 今回のインタビューでは、同展の開催に先駆け、青柳所長から将来のアクセスネットワークと、その実現に向けたAS研の取り組みを説明していただき、つくばフォーラムでの注目展示について解説していただいた。
(OPTCOM編集部 柿沼毅郎)

将来のアクセスネットワークと、その実現に向けたAS研の取り組み

NTTアクセスサービスシステム研究所
青柳雄二所長

 固定通信、モバイル通信の双方で増加し続けるIPトラヒック量。通信ネットワークには、この膨大なIPトラヒック全体を支えることができる通信性能と設備が必要となる。青柳所長は「光通信サービスを始めてからのネットワーク設備は、常にトラヒックとの戦いであった。これから5Gが始まり、様々なモノが通信で接続されるようになると、トラヒックはさらに飛躍的に伸びていくだろう。今後、このトラヒックを見つつ、きちんとした想定の基にネットワークを構築していくことが必要になる。さらには、エンドユーザであるお客様からどのように利用されるかを想定することも重要になる」と話す。

将来アクセスネットワークの方向性

 将来のネットワークでは、エンドユーザのサービス体感も変わってくる。端末・センサ類の進化や、表示・音声デバイスの多様化、そして映像認識・位置認識の高度化により、多種多様なサービスが利用できるようになる。青柳所長は「サービスによって異なる多様な接続方式をお客様自身が意識して使い分けるのは大変な手間だ。我々はそういう接続環境ではなく、場所や端末、回線の種類を問わず自動的に適切な形態で接続される環境、つまりお客様が意識することなく通信がいつでも繋がっているような世界を創っていかなくてはいけない。我々はこうした世界観を“ナチュラル”と呼んでいる」と話す。
 こうしたサービスを支える将来のアクセスネットワークでは、“多種多様なサービスを十分な品質で提供する高い機能性”と“変化を許容する高い柔軟性”を有することで、エンドユーザが特別な動作を意識しなくてもナチュラルに接続できる社会を実現することを目指して研究が進められている。この高い機能性というのは、例えば高速大容量、低遅延、低ジッタ、帯域制御、高密度、高信頼などであり、ネットワークの基礎体力を意味している。また、高い柔軟性は、サービスに合わせてネットワーク特性を変化させることや、柔軟な心線リソースの提供、場所・端末・接続方式を気にせずにナチュラルに繋がることを意味している。青柳所長は「従来のネットワークでは、サービスごとにオペレーションや装置を個別に構築することにより、安価で迅速にサービスを開始できたが、運用が複雑になってしまった。この改善に向け、今後は様々なサービスに合わせてネットワーク特性を柔軟に変化させるような仕組みを考えていく必要がある。また、現在はサービスが変わると心線を変えなくてはいけないといった運用面の課題がある。もっと柔軟に心線を使えるようにして、網構成もより柔軟に対応できるように考えなくてはいけない」と指摘する。
 さらに、これらのアクセスネットワークをスマートに運用することも必要であり、AS研では予測により事故や故障の発生を防ぐ未然的保守や、人手を介さないサービス・ネットワークの運用および保守の研究が進められている。こうした技術は、労働人口の減少が避けられない日本において、老朽化が始まる大量のインフラ設備を運用しなくてはならないという社会的課題に対する重要な取り組みでもある。青柳所長は「世界でどの国も経験したことのない速さで労働人口が減るという状況になる日本において、保守の効率化は喫緊の課題であり、世界に先駆けてその実例を示していくことが必要だ」と警鐘を鳴らす。

ミッションと研究の方向性

 AS研では、自身のミッションとして、“最先端の研究をタイムリーに実用的な開発につなげ、新たなサービスを創出し続けることで多様な社会を実現する”ことを掲げている。青柳所長は「我々は“研究”と“開発”を明確に分けて考えている。世界のトップデータや基礎的な“研究”に取り組むと同時に、それをタイムリーに“開発”に繋げ、多様なサービスを創出して多様な社会を実現する。また、ミッションの冒頭に記した“最先端の研究”は二つあり、まず、研究のトップデータを作るような技術の最先端。そしてもう一つは現場における工事や保守技術の最先端。これらの最先端をタイムリーに実用化につなげることに取り組んでいる」と話している。
 こうした役割を果たすため、研究開発の方向性に四つの柱を設けている。
 一つ目の柱は“新たな付加価値の開拓”であり、通信状況を把握してネットワークをコントロールするといったことと併せて、非通信領域にもチャレンジするという。例えば、日本で100万km以上張り巡らされている光ファイバをセンサとして活用する、いわゆるファイバセンシングにより環境をモニタリングする技術などが研究されている。二つ目の柱は“リソース配置の柔軟化”であり、これから様々なサービスが創出されていく中で、ハードとソフトを分離して、ハードを取り換えなくてもソフトウェアでコントロールするという。青柳所長は「お客様がサービスの使い方を変えた時に、お客様が装置を変えずにサービスを切り替えることができるといった柔軟性を持たせることを研究している」と話す。三つ目の柱は“ネットワーク機能の高度化”であり、更なる大容量通信にも耐えることができるネットワークや、低遅延、高信頼性の研究となる。青柳所長は「通信は社会インフラの一つなので、これが止まると社会活動に影響が出てしまう。そのため、例えば災害時であっても通信を確保できるよう、装置、ルートの冗長化など、信頼性を高める研究を進めている」と話す。さらに四つ目の柱として、ネットワークの“スマートな運用”を掲げている。青柳所長は「このような研究開発方針のもと、将来のアクセスネットワークを具現化し、NTTグループの業務をディジタル化するDX(デジタルトランスフォーメーション)の促進と同時に、お客様のDXをお手伝いして、スマートな世界を実現していく」と話す。

つくばフォーラム2019の概要

二件の基調講演を実施

 今年で30回目の節目を迎える「つくばフォーラム」。今年は二件の基調講演が実施される。一件目の基調講演は、NTT 代表取締役副社長の井伊基之氏による『社会インフラの共用化に向けて』。二件目の基調講演はNTT東日本 代表取締役副社長の澁谷直樹氏による『イノベーションで豊かな未来を拓く』。二つの基調講演では具体的な事例も含めた最新の情報が期待できそうだ。
 第30回の開催を記念した企画として、これまでのアクセスネットワーク技術の変遷と、AS研がこれから目指す将来のアクセスネットワークについて巨大なパネル(タテ2.5m×ヨコ5.5mの予定)を用いた特別展示が実施される。青柳所長は「通信の世界を振り返ると、メタルを使ったアナログのサービスからISDNを使ったディジタルに移り、FTTH、NGNが登場してきた。このパネル展示では、それぞれの時代を予見し、逸早く研究開発を進めてきたアクセス技術はどのようなものだったのかを俯瞰すると同時に、これからの世界に向けて我々が研究している技術が、これまで同様に皆様のお役に立つものだということを、自信を持ってご紹介する」と話している。

技術交流サロンやワークショップ

 昨年、初の試みとして好評を博した技術交流サロン(パネルディスカッション)が、今年も実施される。これは、共催団体、NTTグループ各社、NTT研究所の三位一体による取り組みであり、今回は「次代を拓く光ファイバケーブル技術」「プロアクティブな災害対応」「令和における無線の新たな展開」の三テーマについて、それぞれの分野で活躍する6~7名のキーマンによる意見交換が実施される。青柳所長は「光ファイバケーブルに関しては、過去のファイバ技術を振り返った後、ペタビット超級の大容量伝送に向けたマルチコアファイバなど将来技術までを扱う予定だ。災害対応に関しては、昨今の自然災害を教訓とした対応について、AI活用も含めたプロアクティブな対応について扱う。無線に関しては、物体の検知など通信以外での利用も含めて、次世代の無線活用の可能性について幅広く議論する予定だ」と話している。
 毎年恒例のビデオ上映。今年は、島しょ部や山間地域での安心な暮らしを支え、災害時において被災地域の孤立を防ぐ無線設備について紹介される。青柳所長は「AS研ではケーブル敷設が難しい山間部や島しょ部での無線通信といった技術にも取り組んでいる。また、災害対策用の無線機器も衛星を含めて扱っているので、今回のビデオ上映では、こうした地域を支え、被災地域の孤立を防ぐ通信技術をご紹介し、ユニバーサルサービスの提供や災害対策についての取り組みをお伝えしたい」と話している。
 研究動向を分かりやすく説明するワークショップ。今年のスピーカーは三名で、NTT-ATのAIロボティックス事業部、AS研のシビルシステムプロジェクト、AS研の無線エントランスプロジェクトから登壇の予定だ。青柳所長は「NTT-ATが販売しているWinActor(ウィンアクター)は、AS研が開発したUMSという技術を商品化したものだ。これは現在、3,000社以上のお客様にご利用いただいており、日本のRPAにおいてシェアNo1となっている。昨今、RPAでオペレータの負担を軽くしたいと考えている企業は増えているので、今回のワークショップでRPAの利便性について分かりやすくお伝えできればと考えている。また、AS研のシビルシステムプロジェクトからは基盤設備の維持管理技術について、無線エントランスプロジェクトからは多様なサービスを支えるワイヤレス技術について分かりやすく解説する」と話している。

つくばフォーラム2019特集目次

Preview
青柳所長インタビュー(1)
青柳所長インタビュー(2)

展示会場概要

出展製品ピックアップ

アンリツ
NEC
NTT-AT
FXC
協和エクシオ
住友電気工業
日本コムシス
原田産業
三菱電機
横河計測

以下、後日更新
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