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ノキアが語る5Gネットワークへの変革【1】

SpecialReport 有料

 11月7日にグランドハイアット東京で開催されたノキア主催テクノロジーイベント「Connected Future 2018」では、モバイル5Gを中心とした講演やデモ展示が行われた。講演では日本のノキアソリューションズ&ネットワークスだけではなく、アジア太平洋日本地域のCTOや、ノキアベル研究所のキーパーソンからの登壇もあり、国内外の最新動向や、今後の市場予測が語られた。

ノキアソリューションズ&ネットワークス
代表執行役員
ジョン・ハリントン氏

 オープニングでは、ノキアソリューションズ&ネットワークス 代表執行役員 ジョン・ハリントン氏が「次世代のネットワークへのトランスフォーメーション」をテーマに講演。日本、韓国、中国、米国など先進的な市場では、5Gは4Gよりも速く普及される見通しであり、グローバルのスペクトル(mmWave, cmWave)とアーキテクチャは、エッジクラウドと分散型のキャパシティによって、よりクリアになりつつあるという。ハリントン氏は「2018年には5Gのトライアルから契約まで、 数々の業界初の出来事があった。5Gによる価値創造の探求により、拡張モバイルブロードバンドを超えIndustrial 4.0レボリューションの実現や、物理的産業のデジタル化の実現、そしてネットワークスライスされた帯域と超低遅延に伴い新しいビジネスモデルが出現する」と指摘する。

ノキアが提供する、Future Xアーキテクチャをベースにしたエンドツーエンドの5G機能。3GPP & ORANを基盤にしたままインターオペラビリティを拡大することや、ソフトウェアがオープンソース化されて共同創作を可能にすることも視野に入れている。

ノキア
アジア太平洋日本地域CTO
サミ・ホイスコ氏

 ノキア アジア太平洋日本地域 CTOのサミ・ホイスコ氏は「5Gでデジタルの未来を加速」をテーマに講演。2023年までに北東アジアのモバイルデータは月間21EBになるとし、同年に5Gが4Gに取って代わるという予測を紹介した。ホイスコ氏は「フィンランドのモバイルトラフィックは2018年の段階で8000TB/日に達している。今後の5Gがターゲットとしているものの中で、例えばスポーツスタジアムの1試合あたり4000TBになるだろう」と話している。
 また、5Gにより、工場や都市においてデジタルサービスプロバイダが大幅な収益の拡大を提供するという予測も示した。ホイスコ氏は「5GではAIとマシンラーニング機能の大幅な改善が必要となるので、これらに使われるチップの開発がブームとなっている」としており、「5Gを実現するコンバージド・アーキテクチャではエンド・ツー・エンドのポートフォリオがますます不可欠になっており、現在、アクティブな提案が進行中だ。我々は遅延と帯域が最適化される、クラウドネイティブで、プログラマブルで、コグニティブ・ハイパフォーマンスなダイナミックスマート ファブリックを提供する」と話している。

5Gのデジタル・サービスを利用することで、産業の収益や都市の利便性、人々の健康管理が向上する。

様々な分野で5Gを使ったアプリケーションが活用される。

ノキアが提案する5Gテクノロジーの主要コンポーネント。

ノキアベル研究所
戦略・新市場コンサルティング
シニアパートナー
フアド・シディッキ氏

 ノキアベル研究所 戦略・新市場コンサルティング シニアパートナーのフアド・シディッキ氏は「新しいデジタル時代のFuture Xと価値創造」をテーマとした講演の中で、工業界における超大規模の自動化や、エンドツーエンドのネットワーク・スライシングによる価値創造において、5Gにより性能が50%上昇するという予測を述べている。
 シディッキ氏は「5Gの実現は、ただひとつのユースケースを通して行われるものではなく、 時間をかけてその価値が評価され、新しいマーケットが創出されたりすることで、行われていくものである」と指摘し、「5Gは、デジタル生産性と時間短縮による“新しい価値”、動的で分散化された圧倒的な容量による“新しいアーキテクチャ”、E2Eの自動化されたスマート・ネットワーク・ソリューションによる“新しい総保有コスト”を提供する」と説明している。

5Gを活用することで、様々な要素が改善される。

 また、シディッキ氏は5Gにおいて遅延の必要条件が重要だと指摘する。

5Gでは、速さと同様に遅延性も差別化のポイントになる。

主要なアプリケーションに求められる遅延性と帯域幅。

ノキアベル研究所
リサーチ&テクノロジー
バイスプレジデント
ラウリ オクサネン氏

 ノキアベル研究所 リサーチ&テクノロジー バイスプレジデントのラウリ オクサネン氏は「5Gおよび自動化 オープンスタンダード」を講演。デジタルサービスプロバイダ(DSP)によるデジタルサービスデリバリの未来について、クラウドサービスとネットワークリソースを組み合わせた多岐にわたる新しいサービスが提供されるようになると指摘。仮想ネットワークを各ユースケースに合わせてカスタマイズすることや、クラウドとネットワークプレーヤのエコシステムというオープンプラットフォームが実現するという。オクサネン氏は「スタンダードは、エンドツーエンドのネットワーク、クラウド、およびサービスのチェーンを網羅する必要がある。設定や保証のためには、ネットワーク・スライシングのスタンダードも必要だ。スタンダードは、エンドツーエンドアーキテクチャ内の正しい場所に、オープンインターフェースとAPIを定義している必要もある」と説明している。
 オクサネン氏はノキアのオープンネスのアプローチについても紹介。実装環境の内部の差異化しない部分を共同で作成するオープンソース、そして他業界からのイノベーションを再利用するオープンアーキテクチャなどに取り組んでいるという。

シディッキ氏とオクサネン氏は、これからの新しいアーキテクチャは、分散、動的といったオープンネスの上に構築されると話す。

 オクサネン氏は「5Gは全てのものをオープンでアジャイルに接続するためにデザインされる最初のネットワークだ。3GPPはネットワークをE2Eで網羅するので、スタンダードを提供するためにユニークにポジショニングされている。この3GPPスタンダードに加えて、私たちはクラウド、トランスポート、コントロール、および自動化の領域を定める必要がある」としており、「ノキアのアイデンティティの主要構成要素として、オープンソースが台頭しつつある。ネットワークデータとコンテキストを新しいアプリケーションやアナリティクスのために活用し、機械学習(マシンラーニング)アプリケーションにフィードする。プラグインをノキアプラットフォームの内部と上で実行させることで、新しいフィーチャの作成も可能にする。DevOpsでは、ノキア社内と、お客様との共同との両方で、もっと スピーディな方法で新しいフィーチャを開発する」と説明している。

ノキアのAPI(Application Programming Interface)プログラム。

 次に、5G網におけるE2Eの詳細や、ノキアが提供する5Gメニューを見てみたい。

目次

ノキアが語る5Gネットワークへの変革【1】
ノキアが語る5Gネットワークへの変革【2】