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ノキアが語る5Gネットワークへの変革【2】

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 日本における5Gネットワークの構築が迫られる中、ノキアソリューションズ&ネットワークス合同会社 執行役員 事業戦略担当の西原政利氏は“様々なユースケースを迅速に実現するための ノキアの「5G カタログ」”をテーマに講演。5Gネットワークの構築におけるエンド・ツー・エンド(E2E)思考の重要性や、ノキアのソリューションについて語った。

ネットワーク・スライスやエッジが求められる5Gではエンド・ツー・エンド思考が必要

ノキアソリューションズ&ネットワークス合同会社
執行役員 事業戦略担当
西原政利氏

 5Gのユースケースとして議論されている「超広帯域による高精細映像のダウンロード」「多数の端末を同時接続することによるIoT」「超低遅延による遠隔医療」では、それぞれのアプリケーションによって求められるネットワーク要件が異なる。従来は要件ごとに別々のネットワークを構築していたが、5Gはそれらの要件を全て満たす一つのネットワークとなる。この統合化されたネットワークでは、様々なアプリケーション、サービス、利用シーンに応じてダイナミックに機能を変えていくことになるので、これを実現するネットワーク・スライス機能が必要となる。西原氏は「様々なネットワーク要件を満たすネットワーク・スライスは、一つ一つの要素の中で実現できるものではないので、従来のように高品質で高機能な装置を単に配置するだけでは実現できない。ネットワーク・スライスの実現にはE2Eで各々の装置が果たすべき役割をお互いが協調し合うことが重要であり、この機能分割の為には、エッジからコアまで、そしてレイヤ1から7までが連携してシームレスに繋がるネットワーク・アーキテクチャを構築する必要がある」と話す。
 5Gネットワークにおける機能分割の1つとして、データセンタおよびクラウドの機能をコアとエッジで分割する概念がある。これは低遅延の実現のために即応性の求められる機能をアクセス側のエッジに集約するもので、遅延の最適化だけではなくトランスポートでのトラフィック・オフロードや、地域別アプリケーション、そしてコアシステムの進化(CUPS)を実現できるメリットもある。このエッジとコアのデータセンタ間接続では、大容量のIP/オプティカルネットワーク、およびオートメーションと迅速なサービスプロビジョニングのSDNを駆使した柔軟なネットワークを構築することになる。西原氏は「コアのクラウドとエッジのクラウドを単に分けておけば良いという構造だけの問題ではない。最終的にお客様に提供する際のコア機能やエッジ機能をどうするか、エッジを跨ぐ場合はどのようにコアへ伝送するのか、エッジが故障した場合のバックアップ体制はどうするのかといったように、利用シーンにより求められる信頼性や性能に大きな違いが出てくる。そうした要素も含めてE2Eで検討しなくてはならないことが5Gネットワーク構築の難しさだ」と説明する。
 アクセス側に目を向けると、5G基地局の新たな展開とネットワークトポロジのサポートとして、クラウドRANのためのイーサネットフロントホールや、ファイバや無線アクセスによるIP/イーサネットバックホール、5G対応のファイバや無線バックホール、そしてイーサネットフロントホールのためのxPONなどが議論されている。西原氏は「5Gでは従来のLTEとは違った周波数帯域を使うので、伝搬性能の違うものが出てくる。アクセス系でも従来のネットワークには無かった接続を考えていく必要があり、無線、ファイバ、IP、そしてデータセンタを一気通貫で考えることが重要になる」と話す。

仮想化・マルチベンダ環境の検証・導入をE2Eで支援

 エンド・ツー・エンドが求められる5Gネットワーク構築を、ノキアはどのような形で提供していくのか。
 ノキアは装置、アプリケーション、ソフトウェアを開発し、ソリューションも提案する、ベンダでありサプライヤでもある存在だ。これまで述べてきたエッジのデータセンタ・クラウド、無線伝送装置、光伝送装置、IP装置、更にはこれらに関するソフトウェア・アプリケーションも提供できる。西原氏は「先ほども申し上げたとおり、これらの装置を単に設置すれば良いわけではない。そこが一つの難しさであり、最近はエコシステム化ということで、よりオープンなソフトウェア、オープンなアプリケーションというところで、様々なベンダのソリューション、サーバ、ソフトウェアモジュールが一体となったプロダクトとしてのご提供もしている」と話す。
 5Gのネットワーク構築では、更なる仮想化・マルチベンダ環境における各装置の機能分担、また、アプリケーションという大きな単位ではなくコンテナという非常に小さな単位で様々な処理をすることも考えなくてはならない。この複雑になっていく選定をユーザだけで行うことは難しいことから、ノキアはユーザの検証や導入を支援するために、ノキア施設内にユーザ専用のクラウドラボを構築するという。このラボにより実際に運用した際のオペレーションや留意点を、E2Eソリューションと併せて提供していく形だ。西原氏は「仮想化・マルチベンダ環境でノキア製品のご提供が一部分であっても、そのインテグレーションの実現やテストはノキアが担当させていただく。こうした土台を作ることで我々ベンダの役割とお客様の役割を明確に分け、お客様が5Gサービスやネットワーク・スライシングにフォーカスできる環境をE2Eのソリューションでご提供していきたい」と話している。
 こうしたノキアのE2Eソリューションにより、プリインテグ、高い設備利用効率、統合されたオペレーション、設備およびメンテナンスコスト低減によるTCO改善といった、様々な所有コストの低減が見込まれるという。また、オンサイトテスト・検証の削減、クラウドスタック導入の削減、事前統合とパフォーマンス最適化でのVNFオンボーディングの短縮により、TTMが短縮される。西原氏は5GにおけるTTM短縮の重要性について「現状の、一年に一回の頻度でリリースする非常に大きなソフトウェア・アップグレード、その試験を半年や一年をかけるというサイクルでは、5Gで求められている性能をエンドユーザに提供できないだろう。我々はその高速化を実現する為のお手伝いをしたいと考えている。ソフトウェアベースのプログラマブルなネットワークや、毎週、またはそれ以上の頻度で行われるソフトウェア・アップグレードにより、信頼性の向上も実現できる」と話す。
 尚、今年2月に開催されたMobile World Congress 2018でノキアは5Gのベネフィットについて「TCOの削減は30%~50%、エンド・ツー・エンドのサービス信頼性の向上は5%~10%、新しいサービスの市場投入までの時間短縮は8ヶ月~16ヶ月を提供する」と発表している。

ノキアの「5G カタログ」

 講演のタイトルでもあるノキアの「5G カタログ」について西原氏は「ネットワークの構造はお客様ごとに異なるので、カタログと言っても電化製品のようにいくつもの製品を並べてご紹介するものではなく、ある程度のベースを基に優先度の調整や機能の追加を議論できる素材としてカタログをご用意している。ノキアとしては、E2Eで皆様とお付き合いをし、協議、検討することで、最終的に皆様に非常に大きなプロジェクトを提供できるのではないかと考えている」と話す。今回の講演ではカタログの事例として、「E2Eセキュリティ」と「ゼロタッチ・ネットワーク・スライシング」に関するソリューションの2点が紹介された。
 西原氏は「ノキアはセキュリティ製品として様々なソリューション、ソフトウェア、プラットフォーム、アプライアンスをご用意しているが、セキュリティは非常に領域が広いので、パートナーであるセキュリティ専門企業の製品をコンポーネントとして取り込んでプロダクトとして構築、もしくは、ノキアのプロダクトとパートナーのプロダクトを併せて、一つのソリューションとしてお客様にご提供する。これを、ノキアならではのソリューションということで、ノキアラボでの相互運用性やパフォーマンス試験環境をご用意し、どういった運用がベストなのかという踏み込んだ部分もご提供する。ネットワークでは、エッジ、コア、Transport、サーバ、ファイヤウォールと、様々なポイントでセキュリティが必要になるので、これに対して全て提供できるようなカタログ、ソリューション群をご用意している」と話す。

ノキアはE2Eセキュリティを検証環境も含めて提供できる。

 ネットワーク・スライシングの事例では、自動車のソリューションを紹介。自動運転の通信では安全のために“低遅延“が求められ、自動運転をサポートする走行エリアの映像情報や3次元高精細デジタル地図といったHD地図の通信では“広帯域”と、異なるネットワーク要件が求められることからスライシングが使われる。自動運転でのスライシングは、こうした平常時だけではなく、自動車の事故が発生した場合、その様子を映す公共エリアの監視カメラ映像に帯域を自動的に割り振るといったこともできる。このようにネットワーク帯域を自動的に割り振ることで緊急対応に役立てることができる5Gの性質は、様々な産業で活用できるだろう。

ゼロタッチ・ネットワーク・スライシングのイメージ。

 西原氏は「こうしたものを具体的にどう実現していくのか、何が必要なのかというのを、皆様と一緒に考えさせていただければということで、ノキアでは“クラウド・ソリューション”“デジタル・エコノミー”“ネットワーク・ソリューション”“E2Eモバイル”という、利用シーン別に4つのソリューションに分けてカタログをご用意している。皆様のご興味のある所をピックアップしていただければ、5Gという課題を一つ一つ乗り越えていく、解決していくということを、一緒に活動させていただければと思う」と話している。

目次

ノキアが語る5Gネットワークへの変革【1】
ノキアが語る5Gネットワークへの変革【2】