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リコーとシスコがクラウドソリューションの提供に関しグローバルな戦略的提携に合意~オフィス機器ビジネスから見たクラウドネットワークとサイバーセキュリティ~(1)

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 リコーとシスコシステムズ(以下、シスコ)は2月26日、高い生産性とセキュアな環境を両立するデジタルワークプレイスの実現に向けたクラウドソリューションの提供に関し、グローバルな戦略的提携に合意したと記者会見を開いた。これにより両社は今後、クラウド、ネットワーク、デバイスの3つのレイヤーで、よりシンプルでセキュアな環境を提供するためのソリューション開発に共同で取り組み、顧客のデジタル変革と生産性向上を支援していくという。リコー 代表取締役 社長執行役員 CEOの山下良則氏はこの提携に至る経緯について「シスコ社がグローバルでお使いいただいているリコーの複合機がどのくらいセキュアなのかを、シスコ社の技術で確認していただいた。さらにクラウドセキュリティをシスコ社の技術で実際に使っていただいたことで、複合機のあらゆる機能を安全、安心に使って頂けることが確認された。これからもう一歩、協業しながら技術を拡大していきたいというのが、今回の協業の骨子だ」と話している。

 デジタルワークプレイスが推進されている中、IoTデバイスに対するサイバーセキュリティは、安全な社会経済活動を確保するための重要な課題となっている。IoT機器を狙ったサイバー攻撃は近年増加傾向にあり、特にオリンピック開催国からは開催期間中にサイバー攻撃が増加したとの報告も出ている。今回リコーが提携を結んだシスコは、2018年12月18日に日本の内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)とサイバーセキュリティ分野における連携・協力に関する基本合意書を締結するなど、日本を取り巻くサイバー空間の安全の確保に貢献している企業だ。

 今回のレポートでは、複合機ビジネスから見たクラウドソリューションの利便性、セキュリティの重要性、そしてリコーとシスコによる協業ソリューションの事例について、会見の内容をまとめた。

シスコとの戦略的協業について

リコー 代表取締役 社長執行役員 CEOの山下良則氏

 山下氏は「働く人に注目しながら寄り添ってきた我々にとって、働き方改革というのは、働く人にとっての働き甲斐改革であらねばならない」としており、リコーはその一環としてオフィス、工場、倉庫、病院といった様々な職場のデジタル化やネットワーク環境を整備することで、ユーザの働き方をスマートにする取り組みを続けている。リコーは今年1月、複合機「RICOH IM Cシリーズ」とクラウドプラットフォーム「RICOH Smart Integration」を組み合わせたサービスを発表している。複合機をはじめとする様々なオフィス機器が「RICOH Smart Integration」を介して最新のクラウドサービスと連携することで、知的生産の現場を支える狙いだ。山下氏は「クラウドサービスというのは、特に中小企業のお客様にとって、初期投資金額が少なく、危機管理の負荷が少なく、最新のテクノロジーが利用できる、といった三つの大きなメリットがあると我々は考えている。RICOH IM Cシリーズはクラウドサービスをもっと身近にする複合機として位置付けている。この複合機に備わっている大型タッチパネルからアプリケーションやストレージなどのクラウドサービスを簡単に使うことが可能で、RICOH Smart Integrationにより様々なクラウドサービスと連携ができる」と話している。

 デジタルワークプレイスにおいてパソコン、スマートフォン、複合機を安全に使うためには、デバイス、ネットワーク、クラウドそれぞれのレイヤーのリスク、もしくはレイヤーの垣根を越えたリスクに対するセキュリティが求められる。機密漏えい、不正アクセス等、リスクは点在している。EUが2018年5月に個人情報の保護についてのルール「GDPR」を制定したように、企業が扱う情報の管理に対してより一層の厳格さが求められる流れがあり、そこで一歩踏み外すと命取りになる事業環境となった。山下氏は「こうしたリスクに対してシスコ社が誇るテクノロジーを用いたセキュリティを提供するというのが、今回の我々の提案だ。デバイスである複合機において我々は既にセキュリティを確保しており、クラウドやネットワークに関するセキュリティが今回のパートナーシップの中身となる。これにより、セキュリティの脅威と日々戦っている各企業のITマネージャをサポートすることや、お使い頂いているユーザに安心、安全な利用環境をご提供する」とし、「これからグローバルにシスコ社のセキュリティ、またはそれを連携しながら協業でアプリケーションの開発も含めて進めていく考えだ。これにより、今後の安心、安全なデジタルワークプレイスをきっちり作り上げていけると確信している」と話す。

山下氏が指摘する各レイヤーの脅威。今回の協業により、これらの脅威からユーザを守る包括的なセキュリティが実現できる。


Cisco Systems エグゼクティブバイスプレジデント 兼 最高財務責任者のケリー・クレイマー氏は「二つのブランドが協業することで、ユーザ、デバイス、アプリケーション、データをセキュアに繋ぐ統合マルチドメインアーキテクチャが実現できる。シンプルなセキュリティで、中小企業やブランチにも最適だ。この協業により、業界を大きく変えることができる」と意気込みを語っている。

目次

シスコとの戦略的協業について
協業によりリコーとシスコが提供する顧客価値
協業ソリューションのユースケース