シスコとNEC による、AIセキュリティ戦略と新たな取り組み【1】
SpecialReport 有料シスコシステムズ (以下、シスコ)と日本電気 (以下、NEC)は3月26日、日本企業や自治体のさらなる生成AI活用の推進をめざし、AIガバナンス分野で協業を開始すると発表した。本取り組みの一環として、NECのコンサルティングサービスとシスコが提供するAIセキュリティソリューション「Cisco AI Defense」を組み合わせたNECのAIガバナンスサービスを、金融・製造業や公共機関、自治体を中心とした顧客に向けて、2025年秋に提供開始する。これにより、AIを誰もが安全・安心に業務に活用できる社会の実現に貢献していくという。
シスコはAIの領域において、「ネットワーク×AI」「セキュリティ×AI」「コラボレーション×AI」といった交差領域でポジションを取っている。そのため、AIセキュリティの分野では、ネットワーク視点からのAI脅威検知といった強みも有る(NDR→XDRの連携等)。
日本市場においてシスコとNECは、特にネットワーク、セキュリティ、AI分野における提携関係を強めている。実際、シスコはNECを「Global Gold Integrator Partner」に認定しており、共同でAI×セキュリティの展開も進めている。NECの強みには、BluStellarに見られる高度なAI技術(特に生体認証・行動認識)や、大規模・重要インフラ向けのSI能力がある。シスコが得意なネットワーク・セキュリティ製品と、NECのAI分析・運用基盤が補完関係にあり、日本市場では非常に相性が良い組み合わせとなっている。
今回のAIガバナンス分野の協業に関する記者説明会では、シスコとNEC双方のキーパーソンがポイントを解説。また米シスコのAI製品責任者も来日して、先進的な見解を述べた。本記事では、協業の詳細を、記者説明会の様子を交えてレポートする。
(OPTCOM編集部 柿沼毅郎)
シスコのAIセキュリティ戦略

シスコシステムズ
代表執行役員社長
濱田 義之氏
シスコシステムズの代表執行役員社長である濱田 義之氏からは、AI利活用におけるAIセキュリティ関連をテーマに、シスコの戦略、日本における新しい取り組みについて紹介された。その注目トピックは、今年1月に発表されたCisco AI Defenseであり、企業がセキュアな環境でAIのトランスフォーメーションを推進することを支援するソリューションとなっている。

シスコジャパンの中長期戦略の全体像。
AI利活用におけるAIセキュリティは、どれほど重要なのか。日本におけるシスコの中期戦略では、AI時代のビジネス変革や、セキュアなネットワークがキーワードに含まれており、こうした取り組み統括する濱田氏は「日本で様々なお客様とお話しをしていると、この一年間でAI利活用が非常に急速に進んでいると実感している。シスコとしては、DXやAI利活用を推進していくために、AIのインフラを中心にした民主化、それとAIの保護が必要だと考えている」とした上で、「DXが進むとサイバーセキュリティがビジネスの根幹になってくるというのは皆さんもご理解いただいているかと思うが、AIの利活用が進むと同時に安全上の懸念やセキュリティの脅威がこれまでにないスピードで進んでいる。従来のセキュリティ、いわゆるサイバーセキュリティ ソリューションでの対応が難しくなってきている」と警鐘を鳴らす。
シスコはそうした状況に対応するため、セキュリティを中核とする AI Factoryアーキテクチャを NVIDIA と共同で発表している(当サイト内参考記事)。このCisco Secure AI Factory with NVIDIA には、すべてのレイヤにセキュリティが組み込まれており、その中でAI アプリケーションを保護するのがCisco AI Defenseとなる。
Cisco AI Defenseは、セキュリティ部門やAI部門の担当者が、開発ライフサイクル全体を通して、AIアプリケーションを安全上のリスク(オフポリシー、有害な行動など)や、セキュリティ上のリスク(プロンプトインジェクション、データプライバシーなど)から保護できるように支援する包括的なツールとなっている。
このツールは既存のCI/CDワークフローに組み込まれ、自動化された脆弱性テストと、数に制限なくあらゆるモデルやアプリケーションに共通のランタイム セキュリティ レイヤを提供。さらに、NIST、MITRE ATLAS、OWASP LLM Top 10など、AI セキュリティ基準に単一の統合ソリューションで対応できるよう支援する。
今後の機能強化には、AI セキュリティのワークフローをシンプル化するNVIDIA AI Enterpriseとの統合も含まれている。
濱田氏は「Cisco AI Defenseは、USと日本を皮切りに提供を開始する。そして、このAI Defenseを含むAIガバナンス分野においてNEC様と協業する」と話している。
レポート目次
・シスコのAIセキュリティ戦略
・Agentic AI時代における、SafetyとSecurityの課題