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Telinが、シンガポール全土のデータセンタを相互接続するためにNokiaを選択

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 Nokiaは9月25日(エスポー)、Telin(Telekomunikasi Indonesia International)がシンガポールのデータセンタ間接続にNokiaの光トランスポートソリューションを採用し、シンガポール全土への高可用性、信頼性、拡張性に優れたネットワークの提供を実現したことを発表した。

 Nokiaは「この導入により、データセンタ ネットワークサービスが強化され、Telinの顧客ニーズに合わせてシームレスに拡張できるようになる。強化されたネットワークには、主要データセンタ間のコスト効率に優れた接続を求める顧客のニーズに応えるための新機能が搭載される」と説明している。

 Telinは、島内接続を提供するために戦略的に配置されたシンガポールのデータセンタを専用の高速相互接続で接続し、シンガポールで最も低遅延のサービスを提供している。Nokiaの最新世代のプラガブル コヒーレント光技術、業界をリードする1830 GXコンパクトモジュラ プラットフォーム、そしてオープン光回線システムを活用することで、Telinはシンガポールに強化されたデータセンタ接続をもたらす。このアップグレードされたインフラストラクチャにより、シンガポール全土のTelin拠点において、非常に効率的で拡張性の高い接続が実現する。

 TelinのシンガポールCEOであるIndarto Nata氏は「Telinは、シンガポールとグローバルコミュニティをつなぐ最先端の接続ソリューションをお客様に提供することに尽力している。当社の堅牢なインフラストラクチャには、ネットワーク拡大において重要な役割を果たす大手テクノロジー企業やハイパースケーラーとの戦略的パートナーシップが含まれている。Nokiaの業界をリードするソリューションと連携することで、ネットワークを近代化し、サービスを拡張し、お客様の増大する帯域幅ニーズに対応しながら、総所有コストを削減することができる」とコメントを出している。

 Nokiaの光ネットワーク担当SVP 兼 ゼネラルマネージャーであるRon Johnson氏は「シンガポールは常に、世界がビジネスを行う場所の一つだ。個人や企業のニーズが進化する中で、シンガポールがこの役割を維持できるよう、TelinとNokiaは優れたデータセンタ相互接続ネットワークを構築し、シンガポールのデジタル基盤を強化し、AI時代における継続的な成長に備える」とコメントを出している。

編集部備考

・シンガポールは、アジア・太平洋(APAC)でのクラウドプロバイダ/ハイパースケーラの拠点として非常に重要なエリアだ。また、光ファイバ網や海底ケーブルの整備、政府のICT政策インフラが優れている。そうした活況の側面の一つとして、土地・電力・冷却・規制・コストの面で制約が強い。特に世界的に見ても建設コストは極めて高い。また、データセンタの空き率が非常に低く、供給が逼迫しているとされているが、土地の取得、電力供給および環境・サステナビリティ要件、政府の政策(モラトリアムなど)の存在が、供給拡大を難しくしている状況だ。
 上記のように、シンガポールのデータセンタ市場は、需要は増加しており、今後の成長可能性もあるが、世界でもトップクラスに競争力が高く、コストや供給拡大の制約もある。そうした中でTelinは、「信頼性(Tier-IV等)」「接続性」「地域ハブとしてのネットワーク」「インドネシアとのゲートウェイ」などで強みを持っている。ただし競合は、最大手/ハイパースケーラ直取引の案件や大規模を一括で展開できる資本・スケールを持つので、Telinにとって戦う分野・差別化戦略は重要であり、本リリースで示されたネットワーク性能を強化する投資(Nokia製品の導入など)は、その差別化措置のひとつと言えそうだ。
 こうした背景を踏まえて本リリースを読むと、Telinは国内複数のデータセンタを横断するDCIネットワークを強化し、高速・低遅延・拡張性を備えた通信を提供できるようにすると強調しており、特にハイパースケーラやテック企業の要求が高まる中、これを重要な差別化要素として打ち出していると感じる。また、Nata氏のコメント内にある「増大する帯域幅ニーズに対応しながら、総所有コストを削減することができる」の部分は、シンガポール市場における厳しいコストと資源の制約を考えると非常に重要な項目であり、そうした中でTelinが通信インフラとしての資本支出を効率化し、運用/ネットワーク構造を最適化するために厳選したのが、今回のNokiaのソリューションとなる。
 日本市場においても、データセンタや通信インフラの需要は高まり続けている一方で、電力供給や建設コストの上昇、環境規制といった制約は年々厳しさを増している。シンガポールのように限られた資源の中でTCOを抑えつつ性能を最大化する取り組みは、日本のキャリアやベンダにとっても重要な実例となるだろう。さらに、Telin がインドネシアとのゲートウェイとしての独自性を強みにしているように、日本の事業者も国際接続や地域特化といった自らの強みを明確に打ち出し、差別化を図ることが求められる。今後は、既存インフラの延長線にとどまらず、マルチベンダ戦略や光伝送技術の最適化を含む柔軟な投資判断が、日本の通信市場の競争力を左右する大きな鍵となりそうだ。