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Nscaleが、歴史的な11億ドルのシリーズBの勢いに続き、4億3,300万ドルのプレシリーズC SAFEを発表

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 Nscaleは10月1日(ロンドン)、4億3,300万ドルのプレシリーズC SAFEの調達を完了したことを発表した。

 Nscaleは「これは、直近の11億ドルのシリーズB資金調達に続き、事業の勢いと投資家からの多大な支援を強化するものだ。Blue Owl Managed Funds、Dell、NVIDIA、Nokiaといった主要投資家に加え、既存のシリーズBおよび新規投資家からの支援も受けた今回の資金調達は、Nscaleの事業遂行力と成長に対する信頼を裏付けるものだ」と説明している。

 プレシリーズC SAFEの調達完了は、Nscaleが欧州史上最大のシリーズB資金調達ラウンドとなる11億ドルの調達を発表したわずか数日後に行われた。

‍  NscaleのCEO 兼 創設者であるJosh Payne氏は「私たちは、いただいた関心に圧倒されている。Nscaleに対する私たちの情熱と信頼に、主要投資家が匹敵していることを目の当たりにし、大変嬉しく思っている」とし、「シリーズBの資金調達完了からわずか数日後に、プレシリーズCのSAFEへの参加を表明いただいたことは、AI時代に向けた、独立系でスケーラブルなインフラストラクチャを提供するという当社のビジョンを力強く裏付けるものだ」とコメントを出している。

 英国に本社を置き、世界中で事業を展開するNscaleは、AIネイティブなインフラストラクチャ プラットフォームだ。Nscaleが所有および共同で運営するデータセンタにおいて、垂直統合型のコンピューティング、ネットワーク、ストレージ、マネージドソフトウェア、そしてAIサービスを提供している。

 50以上のデータセンタ、高度なスーパーコンピューティング プラットフォーム、主要な技術契約、そして数十億ドル規模のインフラストラクチャの成長といった実績を持つNscaleのリーダーシップ チームは、深い実行能力と世界最大級のGPUパイプラインを融合させ、グローバル規模のAIインフラストラクチャを提供している。

編集部備考

■今回の資金調達が注目されるのは、欧州史上最大級のシリーズBを完了した直後に「プレシリーズC SAFE」を設定した点にある。通常、シリーズBからCにかけては数か月から年単位の成長フェーズを経るのが一般的だが、Nscaleはその間をほとんど置かず、追加の投資枠を即座に提示した。これは、シリーズBの段階で投資家からの需要が想定を大きく上回り、さらにAIデータセンタという成長市場における同社の事業モデルが高く評価されていることを示している。SAFE(Simple Agreement for Future Equity)という形式を用いたことも、スピード感を重視し、将来のシリーズCに向けた投資家参加の余地を確保する狙いがあるとみられる。
 加えて、この動きは「通信と演算を統合した国際的プラットフォーム」という次世代の競争軸が、投資家サイドからも極めて有望視されていることの表れといえる。GPUクラスタ、データセンタ、広域ネットワーク、電力・冷却インフラといった要素を垂直統合し、演算リソースと通信基盤を不可分に提供するという発想は、単なるAI対応を超えた産業構造の変革につながる。その実現に向けて投資マネーが殺到していること自体が、AIインフラと通信インフラの融合が世界的に本格化してきた証左といえるだろう。
 米国では、CiscoとHPE/JuniperがAIデータセンタ領域における二強体制を固めつつある。こうした中で、欧州に拠点を置くNscaleが「欧州史上最大級のシリーズB」に続いて異例のスピードでプレシリーズC SAFEを提示したことは、英をはじめとするヨーロッパ勢が示した一つの回答とも解釈できる。単なる地域競争ではなく、AIデータセンタと通信基盤を一体で提供する次世代プラットフォームの覇権争いにおいて、欧州が独自の存在感を高めようとする動きとして今後も注目したい。
 米国は演算資源の拡充から、欧州はAI需要への迅速な対応から、そして日本は光電融合という基盤技術から。それぞれの起点は異なるものの、「通信と演算を統合したプラットフォーム」を志向する点で収斂している。今回のNscaleの動きは、IOWNが示してきた未来像と類似する点もあり、日本が先進的に取り組んできた光電融合の挑戦が、世界的な潮流の中でますます存在感を高めていくことも示している。