Nokiaが、AIを活用したSMOおよびネットワーク自動化資産の強化に向け、HPEから技術ライセンスを取得
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Nokiaは10月2日(エスポー)、HPEとの契約に基づき、AIを活用したRAN自動化の能力を強化する技術資産のライセンスを取得したと発表した。
Nokiaは「この契約により、Nokiaの業界をリードするMantaRay SMO(サービス管理およびオーケストレーション)プラットフォームがさらに強化され、AIを活用したRAN自動化および自律型ネットワーキングにおけるソリューションが拡充される」と説明している。
このグローバル契約に基づき、NokiaはHPEのRAN インテリジェント コントローラー(RIC)へのアクセスを獲得し、MantaRayのAIを活用したSMOおよびネットワーク自動化資産と統合する。さらに、関連する開発チームの大部分は、2025年10月1日付けでNokia Mobile Networksに移管された。
Nokia Mobile NetworksのプレジデントであるTommi Uitto氏は「HPEとのこのライセンス契約により、これらの資産と専門知識が加わることで、実績のあるMantaRay SMOポートフォリオがさらに強化される。世界中のお客様は、NokiaのAIドリブン型自動化、オーケストレーション、そしてオープン エコシステムの強化された機能の恩恵を受けることができ、マルチベンダ ネットワークをより効率的に管理し、5Gから6Gへの移行に備えることができる」とコメントを出している。
MantaRay SMOは、高度なAIドリブン型ゼロタッチ自動化を実現するNokiaの包括的なソリューションであり、TM Forumの自律ネットワークレベル4を既に実現している。また、Open RANに完全準拠し、rApps向けのオープンR1インターフェースをサポートしている。
編集部備考
■NokiaとHPEは2023年2月にCloud RANソリューションの協業を発表しており、今回はそれをさらに推し進めた形だ。特に「関連する開発チームの大部分は、2025年10月1日付けでNokia Mobile Networksに移管された」という点は大きい。
Open RAN/AI 自動化領域は参入障壁や成功確度が高く、各社が技術・人材を奪い合っている。特にRIC/SMOの中核部分はネットワークの頭脳にあたるため、人的資産の移動は極めて重要だ。Nokiaは今回、HPEの開発チームという“即戦力の知見”を獲得したことで、開発の加速が見込まれる。NokiaはMantaRay SMOにRIC技術を統合することで、SMOとRICを包括した強力な自動化制御基盤を構築し、競合他社に先行して顧客に統一的なコントロールプレーンを提供できる体制を整えつつある。これはOpen RAN市場において重要な一手と言える。
一方のHPEにとっても、このライセンス供与と人材移管は、事業の再定義を進める上で合理的な一手だ。HPEは近年、「HPE GreenLake」を軸にクラウド型サービスへとシフトしており、通信インフラにおいてもハードウェア中心からプラットフォーム・サービス型モデルへの移行を加速している。今回、RIC/SMOといったネットワーク制御の中枢をNokiaに委ねることで、HPEは自社の強みであるAI基盤やクラウドインフラに経営資源を集中できる。さらに、Nokiaとの連携を通じて、Open RAN/自動化分野におけるGreenLakeの提供機会を広げることも期待される。つまり今回の動きは、Nokiaにとっては自動化技術の強化であり、HPEにとっては脱ハードウェア・サービス指向への転換を象徴する、相互補完型のパートナーシップ深化と言えるだろう。
Open RAN市場は依然として成長途上にあるが、今回のNokiaとHPEの取り組みは、その実用化と自動化を一段と前進させる動きと言える。両社のパートナーシップ深化が、マルチベンダ環境を前提とする次世代RANの展開を後押しし、業界全体のエコシステム拡大につながることが期待される。