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TNNが、デンマーク全土のAIを活用した5G展開に向けて、Nokiaとのパートナーシップを延長

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 Nokiaは11月11日(エスポー)、デンマークにおけるTNNとの5G RANおよびマネージドサービスに関する唯一のサプライヤとして継続するため、4年間の契約延長を発表した。

 TNNはデンマーク最大のシェアード モバイルネットワークであり、NorlysとTelenorの合弁会社だ。
 Nokiaは「この新たな契約に基づき、NokiaはAIと自律機能を活用したTTNの5Gネットワークを進化させ、サービス品質の向上、速度と容量の向上、そして優れたユーザ エクスペリエンスを提供することで、TNNの顧客に新たなデジタルサービスと高度なビジネスアプリケーションを提供する。このプロジェクトは現在進行中だ」としている。

 Norlysの通信担当SVPであるDaniel Askeroth氏は「Nokiaは、デンマーク全土のお客様に最高のネットワークを提供することに注力している。そのため、ネットワークパフォーマンスとカスタマーエクスペリエンスの向上をめざし、クラス最高のモバイルネットワークインフラへの投資を継続している。Nokiaとの提携により、自律的でAIを活用した5Gネットワークを実現し、お客様に最高のサービスを提供し、5Gとその先の可能性を捉えることができる」とコメントを出している。

 Nokiaは、業界をリードするエネルギー効率の高いAirScale RANポートフォリオの機器を導入し、デンマーク全土の300万人以上の加入者にプレミアム5Gサービスを提供するというTNNの取り組みを支援する。Nokiaは、最新世代のHabrok Massive MIMO無線機とPandionマルチバンドリモート無線ヘッド(RRH)を提供し、複数の展開シナリオにわたる包括的なカバレッジを実現する。また、AI対応の超高性能AirScaleベースバンドソリューション(Ponente、Lodos、Levante)も提供し、トラフィックの増加に対応しながら、拡張性とエネルギー効率を向上させる。これらのソリューションは、Nokiaのエネルギー効率に優れたReefSharkシステムオンチップ(SoC)テクノロジーを搭載し、最高のパフォーマンス、効率、信頼性を実現する。

 Telenor DenmarkのCTOであるLouise Haurum氏は「Nokiaとの5Gパートナーシップの更新は、お客様にシームレスで高性能な接続を提供するための大きな一歩となる。この協業により、イノベーションを加速し、ネットワークのレジリエンスを強化し、デンマーク全土の家庭や企業に革新的なデジタル体験を提供できるようになる」とコメントを出している。

 TNNは、ネットワーク管理と最適化においてNokiaのAIおよび自動化機能も活用する。これには、Nokiaの市場をリードする自己組織化ネットワーク(SON)ソリューションであるMantaRay SONと、インテントベースのAI搭載ソリューションであるMantaRay AutoPilotが含まれる。MantaRay AutoPilotは、SONモジュールを自律的にオーケストレーションすることで、リアルタイムの最適化、パフォーマンス向上、運用コスト削減を実現する。
 Nokiaは「高度なAIおよび自動化ソリューションを備えたNokiaのマネージドサービスは、5Gネットワーク運用のシンプル化、コスト削減、運用効率の変革を支援し、サービス品質と顧客体験の向上につながる」としている。

 Nokiaの無線アクセスネットワーク責任者であるMark Atkinson氏は「今回のTNNとの契約延長は、両社の強固なパートナーシップを示している。また、運用効率とネットワーク品質の向上を実現する業界をリードする5Gソリューションや、高度なAIおよび自動化機能を提供する信頼できるテクノロジープロバイダとしてのNokiaのポジションを反映している。私たちは、TNNが5Gのカバレッジと容量を拡大し、クラス最高の接続体験と新しいデジタルサービスを顧客に提供できるよう支援している」とコメントを出している。

編集部備考

■5GインフラにおけるAI活用は、もはや実証段階を超え、商用運用の最適化を担う中核技術へと進化しつつある。ネットワークの複雑化やトラフィックの増大、エネルギーコストの上昇を背景に、AIによる自律運用や動的最適化を実装する事例が各国で増加している。O-RANや5G-AdvancedでもAIの標準化が進むなか、今回のTNN(デンマーク)によるNokiaソリューションの採用は、その潮流を象徴する動きの一つと言える。
 デンマークは北欧の中でもデジタル成熟度とグリーンICT志向の双方で先行する国であり、通信インフラの自動化・省電力化を国家レベルの政策目標として掲げている。TNNもまた、運用効率と持続可能性の両立を重視し、AIによる運用支援とエネルギー最適化を重点テーマとしてきた。今回の導入は、単なる性能向上ではなく、「環境負荷と運用負荷の同時低減」を狙う実践的な取り組みと位置づけられる。
 Nokiaがこの領域で強みを発揮する要因の一つは、AIを付加機能としてではなく、クラウドネイティブなネットワークアーキテクチャの中核に据えている点にある。独自の「AVAプラットフォーム」や「Digital Operations Center」により、データ取得から学習・推論・制御までを一貫して内製化し、現場の知見をモデル改善に循環させる仕組みを確立している。
 TNNとNokiaの取り組みは、AI活用の本質が“運用データの民主化と意思決定の自動化”にあることを示している。通信事業者にとっての焦点は、AIの導入そのものではなく、データ基盤と人材育成をいかに進めるかに移りつつある。AIが支える5Gの進化は、効率化だけでなく、ネットワークの持続性をいかに高めるかという新たな競争軸を提示している。これは、5Gを基盤とした新たなマネタイズ機会の創出を促進するとともに、5G-Advancedや6G時代を見据えた「AI活用ノウハウの蓄積=経験への投資」としての意味を持つ。