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データコム用光コンポーネントの売上高が、2025年に190億ドルを突破【Cignal AI】

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 Cignal AIは4月21日(ボストン)、同社の新たな市場レポート『2025年第4四半期および通年版Optical Components Report』のサマリーを発表した。

 同社は「このレポートは、ハイパースケーラーによるAI投資によって市場が大きく変貌を遂げたことを明らかにしている。データ通信用光コンポーネントの売上高は、2025年通年で190億ドルを超え、2024年比で70%以上の増加を記録した」と説明している。

 Cignal AIの光コンポーネント担当主任アナリストである、Scott Wilkinson氏は「AIは、データセンタ内部から始まり、今や外部にも広がり、光ネットワーク市場を完全に変革した。ハイパースケーラーは2025年第4四半期の設備投資予測をさらに上方修正しており、当社のユニット予測もこうした積極的な修正を反映している」とし、「特に800GbEモジュールは、1.6TbEが量産出荷を開始し、ELSFPの受注がCPO導入の波を予感させる一方で、かつてないほどの成長軌道に乗っている。データセンタ外では、Metaの800ZR+スケールアクロス受注を巡る競争が始まったばかりだ」とコメントを出している。

同レポートについて
 Cignal AIの『Optical Components Report』は四半期ごとに発行され、データ通信、通信、産業、民生という4つの光コンポーネント市場における企業の売上高ベースの市場シェアを提供する。このレポートでは、データセンタ内アプリケーションで使用される400GbE/800GbE/1.6TbEデータ通信トランシーバ、および通信アプリケーション向けの400ZR/800ZRプラグイン/組み込みコヒーレントトランシーバーを含む、データ通信および通信コンポーネントの詳細な出荷台数と市場規模を追跡している。また、CPOアプリケーションで使用されるELSFPおよびOCSハードウェアの技術分析もレポートに含まれている。
 すべての収益セグメントについて5年間の予測と詳細な出荷台数データを提供している。

 本レポートに含まれる企業は、Acacia、Accelink、Adtran、ADVA、Applied Optoelectronics、Broadex、Ciena、Cisco、Coherent、Emcore、Eoptolink、Fiberhome、Finisar、1Finity、古河電気工業、 Furukawa FITEL、HG Genuine、Huawei、Hisense Broadband、Infinera、Innolight、Inphi、Intel、IPG Photonics、Jabil、Lumentum、Marvell、三菱電機、Molex、NEC、Neophotonics、Nokia、O-Net Technologies、OE Solutions、PacketLight、SONT Technology、Source Photonics、住友商事、住友大阪セメント、ZTEとなる。

編集部備考

■今回のレポートで示された「前年比70%増」という成長率は、一般に成熟段階にあるハードウェア市場においては極めて異例だ。この背景には単なる需要増ではなく、AIインフラの構築に伴う“アーキテクチャ転換”によるジャンプ的な需要が存在している。従来の光コンポーネント市場はトラフィック増加に応じた漸増的な投資が中心であったが、現在はGPUクラスターを核としたAI基盤の新設・再設計が進み、短期間で大規模な設備更新が発生している点が本質的に異なる。
 技術面では、800Gが引き続きボリュームゾーンとして市場を牽引する一方、1.6Tコンポーネントの初期出荷が始まったことで単価上昇が売上を押し上げている構図が見て取れる。1.6Tはまだ数量的な寄与は限定的であるものの、最先端領域の価格帯が市場全体の収益構造に強く影響を与え始めている。また、消費電力削減を狙ったLPO(Linear-drive Pluggable Optics)もハイパースケーラーを中心に検証・限定導入が進みつつあり、次の最適化軸として注目される。
 さらに重要なのは、光技術の適用領域が変化している点だ。従来は「長距離だから光」という距離ベースの選択であったが、現在は短距離領域でも帯域密度や電力効率の制約が強まっていることから「銅ではなく光へ」という構造へ移行している。こうした光への置き換えがどこまで進むかが、今後の市場規模を左右する鍵となるだろう。

■本レポートの範囲である2025年時点では北米ハイパースケーラーによる投資が市場を主導しているが、今後は欧州をはじめとする“データ主権型”需要の拡大が次の成長ドライバーとなる可能性が高い。欧州ではデータ主権への意識の高まりを背景に、域内でのデータセンタ建設が加速しつつある。一方で、電力供給制約や許認可の遅延といった要因により、需要の強さに対して供給側が制約を受ける構造も見え始めている。
 その中で、欧州特有の電力効率規制やコロケーション事業者主体の市場構造は、TCOを重視した技術選択を促す可能性がある。このため、LPOなどの低消費電力技術が北米以上に強く求められる展開も想定される。本レポートが示す2025年の190億ドルという市場規模は、いわば北米主導の第一波の成果であり、今後は欧州やアジアの投資が加わることで成長の持続性が試される局面に入る。

 そして、この成長はデータコム領域にとどまらず、テレコム分野にも波及する。AIトラフィックの急増は長距離やメトロネットワーク需要の拡大を加速させる要因の一つともなり得るからだ。例えば、海底ケーブル投資は地政学や冗長化など複合的要因で決まるものの、データセンタ起点のトラフィック増がその需要を下支えしている点は見逃せない。今後はSDM(空間分割多重)などの技術導入により、長距離系でもテラビット級容量への移行が進むとみられる。
 また、データセンタ内で生まれた超高速インターフェイスは、データセンタ間接続を経て、やがてメトロや長距離ネットワークへと展開される。実際、400ZRなどのコヒーレント技術はデータセンタ間用途から普及し、キャリア網へと浸透しつつある。こうした“データセンタで成功した技術の広がり”により、テレコムの進化速度そのものも前倒しされている。

 こうした市場レポートの価値は、市場規模の把握にとどまらない。データセンタ内部で起きている設計思想の変化が、どのタイミングでネットワーク全体へ波及するのかを読み解く上でも重要な指標となる。AIインフラの中心で生じた変化が、通信インフラ全体の進化速度に影響を与える今後、データコム市場から読み取れる情報は、様々な通信インフラのビジネス判断に寄与するものとなるだろう。

(OPTCOM編集部)