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分散型AIデータセンタの一体運用をめざし、ワークロードシフト及び広域光ネットワーク技術の共同検討に合意【シスコ、Jパワー、日立、ビットメディア、JR東日本、JR西光ネットワーク、名古屋鉄道】

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地方分散型データセンタの運用モデルを確立し、電力システムの安定化・効率化に貢献

 シスコシステムズ (以下、シスコ)、電源開発 (以下、Jパワー)、日立製作所(以下、日立)、ビットメディア、東日本旅客鉄道(以下、JR東日本)、JR西日本光ネットワーク (以下、JR西光ネットワーク)、名古屋鉄道は4月22日、AI用データセンタ(以下、AI-DC)のワークロードシフト(以下、WLS)(※1)および広域オール光ネットワーク(以下、広域APN) 構築に係る技術実証に向けた共同検討を開始すると発表した。
 本検討にあたり、基本合意書(Memorandum of Understanding/以下、本MOU)を締結し、MOU締結当事者により構成される「広域APN・ワークロードシフト イノベーション推進協議会」を設立した。

(※1)ワークロードシフト(WLS):計算負荷(コンピューティング負荷)を時間的または空間的に移動させることで、電力需給バランスの調整やコンピューティングリソースの有効利用等を促進する技術。

 本検討では、地方分散型のデータセンタ(以下、DC)を電力システムの安定化・効率化に貢献する強みとして生かす、新たな運用モデルの確立をめざす。具体的には、Jパワーグループ、JR各社及び私鉄各社等の鉄道事業者が保有する未使用の光ファイバ回線(ダークファイバ/以下、DF)を用いて全国を縦断するセキュアな自営APN網を構築する。さらに、WLS技術を組み合わせることで、分散立地する複数のAI-DCを連携・協調運用し、あたかも一つの大規模DCのように運用することをめざす。

 本社会実装を通じて、電力と情報通信インフラを一体的に高度化する「ワット・ビット連携」(※2)政策の実現に貢献する。これにより、電力システムの安定化・効率化、地方分散型デジタルインフラの一体的形成の促進、さらには地域共生の推進を図る。

(※2)ワット・ビット連携:電力の単位「W(ワット)」と情報通信の単位「bit(ビット)」を組み合わせた造語であり、官民一体で、電力と情報通信のインフラ整備を一体的に進め、持続可能で効率的な社会基盤を築くための構想。

背景
 現在、生成AIへの期待が高まる中、社会インフラ事業者では、機密性の高い膨大なデータを安全に扱うため、信頼性の高いセキュアなAI-DCの活用ニーズが高まっています。そうしたニーズに応えるため、重要社会インフラ事業を担うJパワーと日立は、Jパワーが推進するAI-DCの建設・運用において連携している。Jパワーが全国に有するカーボンニュートラル電源(水力・風力・地熱・太陽光等)と、日立の戦略SIB(Social Innovation Business)が事業としてリードするDCのIT設備・運営ノウハウやOT(制御・運用技術)とLumadaを通じたデータ・AI活用の豊富な知見を活かし、安全でクリーンなAI-DCの実現をめざしている。

 一方、DCにおける計算需要及び電力需要は急速に拡大しており、電力システムへの影響も大きくなっている。また、脱炭素化の進展により太陽光や風力等の自然変動電源の導入が進む中、特定の地域や時間帯において出力抑制(※3)が発生するケースも増加している。
(※3)出力抑制:電力需給のバランスや電力系統の制約により、発電可能であっても太陽光発電や風力発電等の発電量を一時的に抑制すること。

 こうした課題に対し、DCを首都圏の特定地域に集中させず、地方を含む複数地域に分散配置し、APNにより仮想的に統合し、電力需給状況等に応じて計算需要を柔軟に制御することで、電力システムの安定化と効率化を実現する分散型DCの運用モデルの確立が求められている。その実現にあたっては、APNの低消費電力・低遅延・大容量通信という特性を活用し、分散立地に伴う通信性能・品質上の課題を解消することが重要だ。

各社の役割
 本検討では、各社の知見や技術、ノウハウ等の強みを掛け合わせることで、自営光ファイバを相互接続し、セキュアかつ高信頼性のクローズドな広域APNを構築する。その構築にあたっては、JR各社および私鉄各社等の鉄道事業者が全国に保有する光ファイバ回線のうち、未使用または余剰となっている回線も活用し、全国規模で高信頼な通信基盤の実現を図る。あわせて、複数のDC間における高度なWLSの検討を進めていく。

各社の役割。

本検討の詳細

図1:DC間のWLS(イメージ)。※上記はDC間のWLSイメージを図示したものであり、実際の学習用DCの配置及びDF経路を示すものではない。

WLSに関する技術検証(図1参照)
 地方を含む複数地域に分散立地するDC群を、論理的・模擬的に構成した環境を用いて技術検証を行う。
 具体的には、再生可能エネルギーの発電状況、電力市場価格、気候状況及び出力抑制の発生状況等をシグナルとしたWLSの検証、ならびにDC間連携に係る制御・運用手法の実現性について、重点的に検証する。

図2:自営光ファイバによる広域APN(イメージ)。※上記はDC間のAPNイメージを図示したものであり、実際の学習用DCの配置及びDF経路を示すものではない。

広域APNに関する技術検証(図2参照)
 地方を含む複数地域に分散立地するDC群の論理的・模擬的な一体運用(仮想化)を実現するため、広域APNを用いてDC間を相互に接続・連携する。
 これにより、分散型DC運用に必要となる通信性能(遅延時間等)、および伝送品質等の要件を検証する。