Nokia Federal SolutionsとLockheed Martinが、米国国防省のオープン標準規格に準拠したミッションクリティカルな5Gソリューションを発表
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Nokiaの米国政府向け事業部門であるNokia Federal SolutionsとLockheed Martinは5月5日(バージニア州シャンティリー & メリーランド州ベセスダ)、米国および同盟国の防衛軍向けに構築された、モジュール式でオープンアーキテクチャを採用した新しい5Gソリューションを発表した。
両社は「このソリューションは、必要な場所で安全かつ強靭な通信を提供するように設計されている。軍用車両やプラットフォームが、米国国防省(DoW)のオープンアーキテクチャ標準規格および商用優先戦略に準拠した商用グレードの5Gを運用環境で利用できるようになる」と説明している。
この新しいソリューションは、Nokiaのキャリアグレード5GをDoWのオープンアーキテクチャフレームワークに統合し、「指揮統制通信コンピュータサイバー情報監視偵察(C5ISR)/モジュール式オープン標準規格(CMOSS)」を活用している。CMOSSのハードウェアおよびソフトウェアモジュール仕様に準拠することで、このプラグ・アンド・プレイ アーキテクチャは複雑さを軽減し、車両および遠征システム間の統合を加速させ、相互運用性を向上させ、既存プラットフォームに影響を与えることなく新機能の導入と更新を可能にする。
Nokia Federal Solutionsのプレジデント 兼 CEOであるMike Loomis氏は「Nokiaは米国国防総省(DoW)が定義するオープンシステムに準拠するために、先進技術ポートフォリオを適応させる必要性を認識している。今回の発表は、Nokiaが防衛分野に特化した能力を構築し、商用技術と強力なパートナーシップを活用して、防衛顧客がすぐに導入できる有意義なソリューションを提供するという取り組みを反映したものだ」とコメントを出している。
Nokiaの商用5G技術とLockheed Martinの5G.MILソリューションを組み合わせることで、両社は、ミッションクリティカルなシステムが高速かつコスト効率の高い商用5Gに接続できるハイブリッドネットワークを提供し、同時に防衛軍が必要とするセキュリティと回復力を維持する。NATO加盟国がミッションシステムへの5G統合を加速させる中、このCMOSS準拠のアプローチは、米国以外でも標準化されたモジュール型フレームワークを用いて、商用グレードの5Gを同盟国のプラットフォームに組み込むための新たな道筋を提供する。
今回の発表は、2025年に初めて発表されたNokiaとLockheed Martinの協業における重要なマイルストーンとなる。この協業では、Nokiaの業界をリードする軍用グレード5GソリューションとLockheed Martinのハイブリッド基地局の初期統合が実現した。両社は統合デモンストレーションの段階を超え、国防総省(DoW)のオープンアーキテクチャ標準に準拠し、軍用車両やプラットフォームに展開可能な、実戦配備可能なモジュール型5G機能の提供をめざしている。
高度な通信を構想段階から実戦配備へと移行するには、規律、規模、そして防衛システムの構築と維持に関する深い理解が不可欠だ。今回の協業は、長期にわたり展開、維持、そして信頼できる機能を迅速に提供することを目的としている。
Lockheed Martinの技術・戦略イノベーション担当SVPであるSarah Hiza氏は「CMOSS規格は、米国陸軍戦闘能力開発コマンドによって開発・維持されている。Nokia Federal SolutionsとLockheed Martinは、この新しいソリューションを通じて、標準規格に基づいた5Gを構想段階から実用化段階へと移行させている。この協業は、迅速に統合でき、運用要件に合わせて進化できる、実用的でミッション対応可能な技術を提供するという共通の目標を反映している」とコメントを出している。
編集部備考
■今回の発表が示す技術的意義は、「軍事用途における5G活用」にとどまらず、軍事通信のアーキテクチャそのものが大きく転換しつつある点にある。特に、CMOSS(C5ISR/EW Modular Open Suite of Standards)に準拠したモジュール型設計の採用は、従来のプラットフォーム固有・専用設計からの脱却を象徴する動きといえる。
従来の軍用通信システムは、特定の車両や装備に最適化された閉鎖的な設計が主流であり、機能追加や更新には長い時間と高いコストを要していた。これに対し、CMOSSが志向するのは、ハードウェアおよびソフトウェアの分離と標準化による「モジュール化」だ。これにより、通信機能をカード単位で差し替えることが可能となり、既存プラットフォームを維持したまま段階的な能力向上を図ることができる。いわば、軍用システムの「プラグ・アンド・プレイ化」であり、更新サイクルの短縮と柔軟性の向上に直結する。
また、このモジュール化は相互運用性の向上にも寄与する。各国で完全に同一の運用が可能になるわけではないものの、共通規格の採用によって統合時の技術的摩擦は大きく低減される。多国籍軍による共同作戦において、異なるプラットフォーム間でのデータ連携や通信機能の共有がより現実的なものとなる点は重要だ。
さらに注目すべきは、こうしたアーキテクチャの上に構築される通信基盤として、商用5G技術が採用されている点だ。ここでの本質は高速・大容量化だけではない。ネットワークスライシングによる用途別の帯域制御や、エッジコンピューティングによる分散処理、さらには超低遅延・高信頼通信といった特性を組み合わせることで、戦術レベルでのリアルタイムな情報共有や無人機制御といったミッションクリティカル用途を支える基盤として機能する点にある。
この「商用技術の軍事転用(COTS)」は、コスト削減以上の意味を持つ。民間市場で急速に進化する5GやAI関連技術を取り込むことで、従来は数十年単位であった技術更新のサイクルが大幅に短縮される。また、特定ベンダへの依存を低減し、ソフトウェア定義による機能拡張を可能にするなど、防衛分野におけるイノベーションの在り方そのものを変えつつある。
ここで見逃せないのが、こうした変化が防衛分野の産業構造にも波及しつつある点だ。従来は防衛専業ベンダを中心とした閉じたサプライチェーンで構成されていた市場に対し、5Gやクラウド、AIといった商用技術の導入により、通信機器ベンダやIT企業、半導体関連企業などの関与が拡大する余地が生まれている。オープン標準に基づくモジュール化は、新規参入のハードルを下げる一方で、標準仕様やプラットフォームを巡る主導権争いという新たな競争軸も生み出す可能性がある。
もっとも、こうしたオープン化とモジュール化は新たな課題も伴う。構成要素の増加はサイバー攻撃の対象領域を拡大させる可能性があり、各モジュールの信頼性やサプライチェーンの透明性がこれまで以上に重要となる。特に、どの国・企業の技術を採用するかという問題は、安全保障と密接に結びつく論点となる。
今回のニュースは、軍事通信が「専用・閉鎖型」から「商用基盤を活用した開放型」へと移行する潮流を端的に示している。この変化は、技術進化にとどまらず、産業構造や技術革新の在り方にも影響を及ぼす構造的転換であり、今後の防衛通信の方向性を占う上で重要な指標となるだろう。
(OPTCOM編集部)





