Ericssonとカナダ政府が、防衛・公共安全分野における画期的な5Gイノベーションネットワークの構築に向けて提携
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Ericsson Canadaは5月26日(オタワ)、カナダ政府との独占的パートナーシップを発表した。
このパートナーシップにより、次世代無線技術を通じて公共安全、セキュリティ、防衛システムを強化することを目的とした画期的なプラットフォーム「先進無線通信イノベーションネットワーク(AWIN:Advanced Wireless Communications Innovation Network)」が構築される。
Ericssonは「この重要なパートナーシップは、Ericssonのミッションクリティカルネットワークにおけるリーダーシップを改めて示すとともに、カナダの最も重要な分野における信頼できるソリューションプロバイダとしての地位を確固たるものにする」としている。
Ericsson CanadaのプレジデントであるNishant Grover氏は「このパートナーシップは、先進無線技術をカナダの国家安全保障とレジリエンス強化に活用する上で、重要な一歩となる。AWINを通じて、Ericssonのミッションクリティカルネットワークにおけるグローバルリーダーシップを、日々カナダ国民を守る人々や組織に提供し、最も重要な局面でのイノベーション、接続、迅速な対応を支援する」とコメントを出している。
カナダの防衛・公共安全分野におけるイノベーションの推進
AWINは、Ericssonの最先端ネットワーク技術と、カナダを代表するイノベーションハブであるArea XOを融合させ、国防省、その他の政府機関、先住民団体、緊急対応機関、カナダ企業、そして学術機関が、将来のワイヤレス利用事例を開発・検証できる安全な環境を提供する。このイニシアチブにより、重要なインフラを強化し、相互運用性を向上させ、防衛・公共安全分野の重要ユーザを支援する実証実験が可能になる。
また、Ericssonは、緊急対応機関が緊急時における通信、連携、対応時間を改善できるよう、5G対応の接続ソリューションを提供する。
主要プログラムの優先事項は次の通り。
研究開発:このパートナーシップは、カナダの防衛・公共安全分野における革新的なソリューションの研究開発と実装の基盤を築き、この分野におけるカナダのリーダーシップに貢献する。
協働によるイノベーション:EricssonのデバイスネットワークテストとArea X.O.の連携により、次世代無線技術の開発を加速させ、カナダのイノベーターをミッションクリティカルなソリューション開発に参画させる。
未来を見据えた技術:AI、IoT、その他の革新的なアプリケーションの進歩を可能にする5Gインフラストラクチャを基盤として、防衛および緊急対応を支援する。
編集部備考
■防衛・公共安全分野における5Gの実用化は、コンシューマ市場と比べて明確に慎重な歩みを見せてきた。その理由は単純な技術成熟度の問題ではない。むしろ本質は、「そのままでは使えない」という適用上のギャップにある。
民間において5Gは、大容量・低遅延といった性能向上を主軸に普及してきた。一方、防衛や警察・消防の現場では、「絶対に途切れない通信」と「極限のセキュリティ」が最優先となる。特に重要なのは、既存の無線システムとの関係だ。軍の戦術無線や公共安全向けの専用通信網は、数十年にわたり現場で運用され、極限環境でも機能するよう最適化されてきた。これらはシンプルな通信手段ではなく、運用そのものと不可分に結びついた“インフラ文化”となっている。性能で優れる5Gであっても、これらを即座に置き換えることは現実的ではない。
さらに、ネットワーク構成の前提も異なる。従来の商用5Gはコアネットワークを中心としたアーキテクチャを採るが、戦場や災害現場では、基地局やバックボーンが破壊・寸断されることが前提となる。このため、近年ではスタンドアロン構成やエッジコア、可搬型基地局などを組み合わせた「分散型アーキテクチャ」が志向されているが、こうした設計を実運用に適用するには膨大な検証が必要となる。
セキュリティの観点でも、課題は単純ではない。5Gは国際標準に基づくオープンなエコシステムを前提としているが、防衛用途ではサプライチェーンの信頼性や実装レベルでの脆弱性管理がより厳しく問われる。すなわち問題は規格の公開性そのものではなく、商用前提の設計思想と機密性要求とのギャップにある。
加えて、ハードウェア面の制約も無視できない。戦場や被災地で用いられる通信機器は、耐衝撃・防水・耐熱といった過酷な条件を満たしつつ、可搬性も求められる。こうしたラギッド化と高性能化の両立は容易ではない。また、軍用レーダーなど既存システムとの周波数共用も含め、スペクトラム運用の調整には時間を要してきた。
しかし、こうした状況は2020年代半ば以降、大きく変化している。背景にあるのは、戦場および災害対応のデジタル化の急速な進展だ。小型ドローン、AIによる画像解析、衛星通信の組み合わせにより、現場の情報をリアルタイムで共有することが戦術の前提となりつつある。従来の通信基盤ではこうした要求に応えきれず、「5Gが望ましい」のではなく「既存の仕組みでは不十分」という状況が顕在化したのだ。
公共安全分野でも同様に、高精細映像やバイタルデータのリアルタイム伝送、さらには優先制御やネットワークスライシングによる通信の確実性確保など、新たなニーズが急速に拡大している。これにより、5Gは補完的な位置づけから、ミッション遂行に不可欠な基盤へと位置づけが変わりつつある。
こうした「現場起点の必然性」と、技術成熟の進展が重なった結果、防衛・公共安全分野における5G導入は、2025年から2026年にかけて本格的なインフラ整備の段階へと移行しつつある。今回のEricssonとカナダ政府の連携も、その一端を示すものだ。通信インフラはもはや効率化手段だけではなく、国家安全保障や災害対応力を左右する戦略領域となっている。各国がどのようなパートナーと、どのような構成で通信基盤を進化させるのか。その選択は、今後の安全保障環境を占う重要な指標となるだろう。





