Ericsson Private 5Gが、Verizon Businessのプライベートネットワークで国際的に利用可能に
期間限定無料公開 有料期間限定無料公開中
Ericssonは6月15日、同社のプライベート無線ネットワークソリューションであるEricsson Private 5Gが、米国以外の地域におけるVerizon Businessのプライベート無線ネットワークで利用可能になったことを発表した。
この提携により、米国で既にVerizon Businessのプライベート5GネットワークにおいてEricssonの技術を利用しているグローバル企業は、これらの機能を海外拠点にも拡張し、デジタルトランスフォーメーションのための新たな機会を切り拓くことができる。
AI時代において、企業はネットワークにこれまで以上に高い性能を求めており、安全で高速かつ低遅延の接続に対するニーズが高まっている。Verizon Businessは、Ericsson Private 5Gを国際的なポートフォリオに統合することで、国境を越えて事業を展開するプライベート無線ネットワークの顧客に対し、より多くの選択肢と柔軟性を提供できるようになる。
Ericsson AmericasのVerizon顧客ユニット担当SVP 兼 責任者であるHannes Ekström氏は「企業は急速にデジタルトランスフォーメーションを進めており、安全で高性能なプライベート5Gネットワークをイノベーションと効率化の重要な推進力として活用している。米国の多国籍企業のお客様は、5G対応プライベートネットワークを通じて既に大きな成長を遂げており、今後はこの成功をグローバルで再現(replicate)しようとしている」とし、「Verizonとの協業を通じて、Ericsson Private 5Gソリューションの適用範囲を拡大し、Verizon Businessの国際展開を支援することで、シームレスなグローバルオペレーションを実現する。5Gの導入をシンプル化し、信頼性、低遅延、セキュリティを強化することで、次世代コネクティビティを活用し、グローバル規模でイノベーションを推進できるよう、業界を支援していく」とコメントを出している。
Verizon Businessの5Gアクセラレーション担当ヴァイスプレジデントであるRobb Juliano氏は「Verizon Businessは、拡大を続けるプライベートワイヤレス ポートフォリオを誇りに思っており、世界中のお客様に最高のプライベートワイヤレス体験を提供することに尽力している」とし、「Ericsson Private 5Gの提供地域を米国以外にも拡大することで、企業はグローバル規模でプライベート無線ネットワークを活用し、イノベーションの推進、セキュリティの強化、運用の最適化において、より柔軟な対応が可能になる」とコメントを出している。
デジタル接続された世界のための高度なプライベート無線機能
Ericsson Private 5Gソリューションは、屋内・屋外を問わず、地球上で最も困難な環境下でも接続できるよう設計された、グローバルなスペクトルをサポートするデュアルモード4G/5Gネットワークを提供する。このテクノロジーにより、企業は以下のことが可能になる。
超低遅延と高信頼性の実現:自動化された製造、産業用IoT、AI駆動型分析などのリアルタイムアプリケーションに不可欠となる。
セキュリティとプライバシーの強化:機密データとトラフィックを企業のプライベートネットワーク内に保持することで、コンプライアンスおよび規制要件への対応を支援する。
キャンパス全体でのシームレスな接続とモビリティの実現:従業員、デバイス、自律システムが広大な運用環境内を移動する際にも、途切れることのない接続を提供する。
高度なアプリケーションを強力にサポート:拡張現実(AR)、デジタルツイン、自律型ロボット、AIを活用したコンピュータビジョン分析など、次世代のユースケースを支援する。
業界特化型デジタルトランスフォーメーションの支援
世界中の業界が、業務の近代化と新たな効率化を実現するために、プライベート5Gの導入を加速させている。この国際的な拡大は、以下の分野にメリットをもたらす。
製造・産業オートメーション:自律型ロボット、予知保全、ニアリアルタイム品質管理を備えたスマートファクトリーの実現。
サプライチェーン・物流:倉庫の自動化、資産追跡、車両・インフラ間通信の強化による業務効率の向上。
ヘルスケア・ライフサイエンス:遠隔診断や次世代医療画像技術のための接続性のサポート。
エネルギー・公益事業:重要インフラ、スマートグリッド、強化された安全プロトコルの遠隔監視の実現。
高等教育・研究:スマートキャンパス、没入型学習体験、AIを活用した研究のための次世代接続性の提供。
Ericsson は「Verizon Businessは、Ericssonの実績あるプライベート5Gソリューションとグローバルな規模を活用することで、企業が事業を展開する場所に関わらず、安全で拡張性が高く、高性能なプライベート5Gソリューションを提供し、企業が事業展開の場所に関わらずデジタルトランスフォーメーションの最前線に立ち続けることを支援する」としている。
編集部備考
■今回のEricssonとVerizonによるプライベート5G提供に関する発表は、協業強化に留まらず、プライベート5Gの産業活用が次のフェーズへ移行しつつあることを示唆している。
これまで、グローバルにおけるプライベート5G(自営網。日本におけるローカル5Gに相当)の多くは、機器ベンダやSIerが主導し、鉱山、港湾、エネルギー、巨大工場といった個別の現場ごとに最適化されたネットワークとして導入されてきた。そこでは、レイテンシの微調整や特殊なアンテナ配置など、OT(Operational Technology)に深く踏み込んだ「作り込み」が求められ、案件ごとのカスタム対応が前提だったからだ。このため、ビジネスとしてはスケールしにくく、先進事例は点在しながら増えているものの、企業全体の標準インフラとして普及する段階には至っていなかった。
一方で、グローバル企業のIT部門は、各国拠点のネットワークやセキュリティを通信事業者のマネージドサービスとして一元管理するケースが増えている。この構造の中では、特定工場のプライベート5Gのみを機器ベンダが個別に提供するモデルは整合性を欠きやすく、全社的な導入には通信事業者の関与が効率的であった。通信事業者がこれまで蓄積してきたプライベート5Gの提供実績には、このギャップを埋める側面もあった。
これらを踏まえて今回の発表で注目すべきは、「成功の再現(replication)」というキーワードであり、プライベート5Gが「個別最適の実証」から「全社標準化されたインフラ」へと位置付けが変化しつつあることを示唆している。この変化は、プライベート5Gに成功したグローバル企業における体制の確立としても捉えられる。従来は現場主導のOT投資として進められてきたプライベート5Gが、今後は本社IT部門のガバナンスの下でグローバル展開されるようになるフェーズが見えてきた。その際、通信事業者はグローバルでの一貫したサービス提供と運用を担い、機器ベンダは現場要件への適応力を提供するという役割分担が明確になる。
もっとも、グローバル展開には依然として大きなハードルが存在する。特に米国においては、CBRS(Citizens Broadband Radio Service)という共用周波数制度により、比較的低コストかつ迅速にプライベート5Gを導入できる環境が整っている。この「試しやすい環境」が初期導入を後押ししてきた側面は大きい。しかし、各国では周波数制度や免許取得プロセス、運用体制が大きく異なるため、同様のモデルをそのまま適用することは難しい。
したがって、今後の焦点は「CBRS前提で確立された成功モデルを、各国の制度・環境に適応させながら再現できるか」に移る。この課題に対しては、各国での導入経験を蓄積してきた機器ベンダと、グローバルにサービスを展開する通信事業者の連携が鍵となる。
総じて今回の発表は、プライベート5Gがプロジェクト型の個別案件から、ある程度テンプレート化されたプロダクトとしてグローバルに展開される段階へと移行しつつあることの予兆となる。米国のグローバル企業が自社の成功事例を世界中の拠点へ展開しようとする動きは、プライベート5Gを用いたスマート工場の「世界量産」を視野に入れた新たな産業フェーズの到来を示唆していると言えるだろう。
(OPTCOM編集部)



