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NokiaのDeepfield Cloud Intelligenceが、サウジアラビア全土におけるZain KSAのネットワークパフォーマンスと効率性を向上

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 Nokiaは9月29日(サウジアラビア王国 リヤド)、Zain KSAがサウジアラビア国内100都市以上をカバーするネットワーク全体にNokia Deepfield Cloud Intelligenceを導入したことを発表した。

 Nokiaは「この導入により、Zain KSAはリアルタイムかつエンド・ツー・エンドの可視性を獲得し、トラブルシューティングの迅速化、サービス保証の向上、そしてサウジアラビア全土におけるデジタルインフラストラクチャの強靭化を実現する」と説明している。

 サウジアラビアでは、ビデオストリーミング、クラウドサービス、AIワークロード、そして新たなデジタルアプリケーションによってデータ消費量が加速的に増加しており、通信事業者は、より安全で信頼性の高い高性能ネットワークを運用しながら、高いパフォーマンスを提供することに課題を抱えている。従来の監視ツールでは、ネットワークフローやアプリケーションの動作に関する洞察は限られている。Nokia Deepfieldソリューションは、グローバルなインターネットコンテキストと大量のネットワークテレメトリを関連付けることで、この課題を解決する。これにより、データはコンテキストに基づいた実用的なインテリジェンスに変換され、プロアクティブな最適化とデータ駆動型の意思決定を支援する。

 Zain KSA テクノロジーオペレーション担当ヴァイスプレジデントであるSultan Mohammad Alsabhan氏は「デジタル需要の規模と複雑さが増大するにつれ、ネットワークインテリジェンスは、顧客に一貫して信頼性の高いエクスペリエンスを提供するために不可欠となる。Nokia Deepfield Cloud Intelligenceを統合することで、トラフィックパターンをより深くリアルタイムで可視化し、重要なアプリケーションやサービス全体でより精度の高いパフォーマンス最適化を実現し、ユーザエクスペリエンスを向上させることができる。これは、お客様の進化するニーズをサポートし、サウジアラビア王国のデジタル未来の実現におけるZain KSAの役割を強化する、よりインテリジェントでAI対応のネットワーク構築に向けた新たな一歩となる」とコメントを出している。

 Nokia Deepfield Cloud Intelligenceを活用することで、Zain KSAはネットワーク全体における重要なOTTサービスおよびクラウドサービスのパフォーマンスを監視・確保できる。アプリケーションとサービスに関する詳細な可視化により、エンジニアリングチームは、顧客に影響を与える前に輻輳や遅延の問題を特定し、ビデオストリーミングやクラウドゲーミングなどのサービスにおいて、シームレスで低遅延のエクスペリエンスを実現する。このソリューションの中核となるのは、Deepfield Cloud Genomeだ。これは、100を超えるAI/MLルールを用いて30以上のカテゴリにわたるアプリケーションとサービスを識別する、継続的に更新されるインターネットマップだ。大規模な分析機能とクラウドネイティブ アーキテクチャを備えたこのプラットフォームは、Zain KSAに構造化データを提供し、デジタルエコシステムを強化するとともに、高度な分析、AI、そしてサウジビジョン2030に沿った新たなデジタルサービスをサポートする。

 Nokia Middle East and Africaのプレジデント 兼 Nokiaのリージョナル・ヘッドクォーター サウジアラビア マネージングディレクターであるMikko Lavanti氏は「デジタルサービスプロバイダにとって、インフラストラクチャは最も重要な資産だ。Zain KSAのようなリーダー企業は、必要な信頼性、パフォーマンス、そして安定性を実現するために、ノキアの専門知識を信頼している。今回の導入により、Zain KSAはサービス品質の向上、ネットワーク投資の最適化、そしてソフトウェア主導型でAI対応のネットワークへの進化を加速させるために必要なインサイトを得ることができる」とコメントを出している。

編集部備考

ネットワークを見る単位が変わる

 通信ネットワークの運用では、これまで「どの装置で障害が起きているのか」「どの区間でトラフィックが集中しているのか」といった、ネットワーク内部の状態を把握することが基本だった。もちろん、こうした監視は今後も重要だが、クラウドや動画、AIなどネットワーク上を流れるサービスが多様化するにつれ、それだけでは通信品質を十分に説明できなくなっている。

 今回、Zain KSAが導入したNokiaのDeepfield Cloud Intelligenceは、ネットワークから収集する大量のテレメトリと、インターネット上のアプリケーションやサービスに関する情報を相関させることで、通信をアプリケーション/サービスという単位まで掘り下げて把握する。Deepfield Cloud Genomeは30以上のカテゴリと100以上のAI/MLルールを用いてアプリケーションやサービスを識別し、Zain KSAは100都市以上にまたがるネットワークで、OTTやクラウドサービスの性能をリアルタイムに監視できるとしている。

 ここで重要なのは、ただ「監視できる対象が増えた」ということではない。ネットワーク運用の視点そのものが、「設備が正常に動いているか」から「その設備によって、利用者が必要とするサービスが正常に提供されているか」へ広がっている点にある。
 例えば、ある通信区間の帯域使用率が高いという事実だけでは、それが直ちに顧客体験の悪化を意味するとは限らない。一方で、特定の動画サービスやクラウドゲーム、企業向けクラウドサービスに遅延が発生していることまで把握できれば、運用担当者は「何が問題なのか」をサービスの側から捉えられる。

 AI時代には、通信量の増加だけでなく、通信の用途や重要度も複雑になる。だからこそ、ネットワークを単なる「パケットの通り道」として見るのではなく、そこで何が起きているのかを意味付けする「ネットワークインテリジェンス」の重要性が高まっている。
 今回の取り組みは、通信事業者のネットワーク運用が、設備監視からデータに基づく状況理解へと進化する一つの方向を示している。

AIによる自動化の前に「AIが理解できるデータ」が必要

 今回の発表で特に注目したいのは、NokiaがDeepfield Cloud Intelligenceを従来のネットワーク監視ツールではなく、「AI-ready data foundation」と位置付けていることだ。これは、AIによるネットワーク自動化を考えるうえで重要な順序を示している。

 AIを使ってネットワークを自律的に最適化するという構想は、すでに様々な通信事業者やベンダが掲げている。Nokia自身もAI-RANやAIによるネットワーク自動化を進めており、9月にはサウジアラビアでAI-powered network automationを開発する研究開発センターの開設も発表している。そこではネットワークの自己設定、自己修復、性能最適化など、より高い自律性を持つネットワークがめざされている。
 しかし、AIに判断を任せるのであれば、その前段階として「AIが何を見て判断するのか」を整備しなければならない。装置ごとに分散したテレメトリや、シンプルなトラフィック量だけでは、AIがネットワーク全体の状況を正しく理解することは難しい。今回のDeepfieldは、ネットワークテレメトリにインターネット上のアプリケーションやサービスの情報を組み合わせ、バラバラだったデータを意味のある情報へ変換する役割を担う。

 これは、AI時代のネットワーク進化を考える際に、「AIを導入する」という言葉だけでは見えにくい部分でもある。AIによる自動化の成否を左右するのは、AIモデルの性能だけではなく、そのAIがどのようなデータを取得し、どのような文脈で理解できるようにするかという環境設計だからだ。
人間のネットワークエンジニアであれば、トラフィックの変化だけでなく、「これは動画配信の増加なのか」「特定のクラウドサービスに問題があるのか」「一時的なイベントなのか」といった背景まで経験や知識から推測できる。AIに同じような判断をさせるには、その背景情報までデータとして与える必要がある。

 そう考えると、AIネイティブなネットワークへの移行は、まずネットワークをAIが理解できる状態に整え、その上で分析、判断、自動化へと段階的に進む。その意味で今回の導入は、AIによる自律運用の「前段階」にあるデータ基盤の重要性を示す事例として見ることができる。

ネットワーク品質の評価軸が「設備」から「サービス」へ

 ネットワークの高度化を考えるうえでは、「ネットワークをどこまで細かく監視できるか」だけでなく、「最終的に何を良くするのか」という視点も重要になる。
 通信事業者が従来重視してきたのは、帯域、遅延、パケットロス、装置の稼働状態など、ネットワークそのもののKPIだった。これらはネットワークを安定して運用するために不可欠だが、利用者が実際に評価するのはネットワークそのものではない。動画が途切れずに再生できるか、クラウドサービスを快適に利用できるか、オンラインゲームで遅延が発生しないか、といった「サービス体験」である。

 今回のZain KSAの導入では、OTTやクラウドサービスをネットワーク全体で監視し、動画ストリーミングやクラウドゲームなど、帯域や低遅延が重要なサービスについて、輻輳や遅延の問題を顧客への影響が出る前に把握することも視野に入れている。
ここから見えてくるのは、通信品質の管理が「ネットワークKPIの最適化」から「サービス品質を起点としたネットワーク最適化」へ変わる可能性だ。
 例えば、ネットワークの一部でトラフィックが増えていたとしても、それが顧客の重要なサービスに影響していなければ、必ずしも直ちに設備増強が必要とは限らない。逆に、全体のトラフィック量としては小さくても、企業向けの重要サービスや低遅延が求められるアプリケーションに影響しているなら、優先的な対策が必要になる場合がある。

 この考え方は、通信事業者のネットワーク投資にもつながる。Nokiaは今回の導入について、サービス品質の改善だけでなく、ネットワーク投資の最適化にもつながるとしている。つまり、ネットワーク上で「何が起きているか」を把握することは、運用効率を高めるだけでなく、「どこに、何のために投資するのか」を判断する材料にもなり得る。

 AIによって通信需要が増え、ネットワークへの投資が必要になるほど、通信事業者には投資効率も求められる。そのとき重要になるのは、単純に最も多く使われている場所へ設備を増やすことではなく、利用されるサービスとその重要度まで含めてネットワークを捉えることだろう。
 AI時代の通信ネットワークは、「どれだけ速く流せるか」だけでなく、「何を、どの品質で届けるために、どこへ資源を配分するか」を判断する基盤へ変わりつつある。今回のDeepfieldの導入は、その変化を既存ネットワークの運用という現実的な領域から示している。

(OPTCOM編集部)