光通信、映像伝送ビジネスの実務者向け専門情報サイト

光通信ビジネスの実務者向け専門誌 - オプトコム

有料会員様向けコンテンツ

NextNavとAiRANACULUSが提携し、長距離5Gセンシングと対UAS探知を強化

期間限定無料公開 有料

期間限定無料公開中

 NextNavは10月5日(米バージニア州レストン)、インテリジェントRF、信号処理、および高度なネットワーク技術の開発企業であるAiRANACULUSとの戦略的提携を発表した。

 この提携により、NextNavがライセンスを保有する900MHz帯低周波数帯域におけるISAC(Integrated Sensing and Communications:センシングと通信の融合)の強化が図られる。

 次世代地上測位・航法・時刻同期(PNT)および3Dジオロケーション ソリューションに強みを持つNextNavの地上設置型5G対応3D PNTネットワークと、AiRANACULUSの高度な信号処理技術を組み合わせることで、NextNavのドローンセンシング能力と対UAS(C-UAS)向けの長距離早期警戒能力が拡大するとともに、広域センシングに必要なインフラ規模が縮小される。

 NextNavの製品担当ヴァイスプレジデントであるDeepak Joseph氏は「安全な空域管理は、早期警戒機能を提供し、コスト効率よく拡張できる長距離探知能力によって大きく強化される」とし、「このような協業は、NextNavが国家安全保障、公共安全、重要インフラ向けの5Gを活用したセンシングソリューションを推進するために必要な技術、専門知識、エコシステムパートナーを結集するのに役立つ」とコメントを出している。

 NextNavとAiRANACULUSは、NextNavの5G PNTネットワークとAiRANACULUSのハードウェアおよびソフトウェア スタックを使用して、長距離ISAC(統合監視・航空管制)機能の検証を行う。初期テストでは、カリフォルニア州サンタクララ郡にあるNextNavの5G PNTネットワークのサービスエリア内で、ドローンの活動を識別・追跡するための長距離脅威探知に重点を置く。

 AiRANACULUSの創設者 兼 CEOであるApurva N. Mody博士は「デジタルビームフォーミングと高度な受信信号処理を低帯域5Gに適用することで、より遠距離からより小さなターゲットを検出できるようになる」とし、「私たちは共に、広域空域情報のための、はるかに効率的なモデルを構築している」とコメントを出している。

 NextNavは、AiRANACULUSなどのパートナー企業と協力し、拡張性の高いデジタル空域管理の強化をめざしている。これにより、低高度商用ドローン、都市型航空モビリティ(UAM)フリート、公共安全作戦など、共有空域における様々な運用を調整するために必要な、長距離3D検知・追跡データを提供する。この協業から得られる成果は、重要インフラや国家安全保障といった様々なユースケースにおける性能と適用性に関する継続的な評価を支えるものとなる。

編集部備考

通信とセンシングを一体設計するISACが、ネットワークの役割を変える

 今回の提携で注目したいのは、5Gを利用してドローンを検知することそのものだけではない。無線通信とセンシングを別々のシステムとして構築するのではなく、同じ無線リソースやハードウェアを共有しながら、一体のネットワークとして扱うISAC(Integrated Sensing and Communications)の方向性だ。

 通信設備をセンシングに利用するという発想自体は、新しいものではない。無線信号の反射や変化を利用して、人や物体の存在、位置、動きなどを把握する無線センシング技術は以前から研究・実用化されてきた。これに対してISACがめざすのは、通信とセンシングを一つの設備に載せることではなく、電波、アンテナ、無線処理、信号処理といったリソースを共有し、両者をネットワークの設計段階から統合していくことにある。

 この違いは、通信ネットワークの設備効率を考える上でも重要になる。通信のために設置した基地局を、後からセンシングにも使うという発想なら、既存設備の「有効活用」にとどまる。一方、通信とセンシングを最初から一体として設計できれば、通信品質を確保しながらセンシングに適した電波特性やアンテナ構成、信号処理を組み合わせることができる。今回の提携でも、NextNavの5G PNTネットワークとAiRANACULUSのセンシング技術を組み合わせ、低900MHz帯を利用した長距離センシングを検証しようとしている。

 ここで重要なのは、センシング機能がネットワークに「追加される」のではなく、通信ネットワークそのものが通信とセンシングの双方を担う方向へ進むことだ。
 これは5G-Advancedから6Gへ向かうネットワークの役割を考える上でも意味がある。通信需要に応えるだけなら、ネットワークの価値は基本的に「どれだけ高速に、安定してデータを運べるか」で測られる。しかしセンシングが統合されれば、「その空間で何が起きているのか」を捉える能力もネットワークの価値になる。

 今回の取り組みはまだ検証段階だが、ISACがめざしているのは、既存の通信設備にセンサ機能を付加することだけではない。通信とセンシングを一つの無線基盤として設計することで、ネットワークそのものを“空間を認識するインフラ”へ進化させることにある。

ISACの価値は「高精度」だけではなく「広域・長距離」にもある

 5Gセンシングというと、より高い周波数や広い帯域幅を利用して、対象物を高い分解能で捉える方向に注目が集まりやすい。しかし今回の取り組みが示唆するのは、ISACにはもう一つ、低い周波数を利用して広い範囲を効率的に見るという価値軸があることだ。

 AiRANACULUSは、低帯域5Gにデジタルビームフォーミングと高度な受信信号処理を組み合わせることで、より小さな対象をより遠距離から検知することをめざしている。NextNavも、低900MHz帯を利用した5G PNTネットワークを基盤としている。低い周波数は一般に電波が遠くまで届きやすく、建物内にも入りやすいという特性があり、NextNav自身も広域カバレッジや建物侵入性を同帯域の特徴として挙げている。

 この特性は、今回のユースケースであるCounter-UAS(C-UAS)と相性がいい。ドローン対策では、目の前に現れた対象を詳細に識別するだけでなく、危険区域から離れた場所にいる段階で存在を把握し、早期警戒につなげることが重要になるからだ。高い空間分解能を追求するセンシングとは異なり、広域を少ない設備で継続的に監視することにも価値がある。
 つまり、ISACの進化を「より高精度に見る」という一本の軸だけで捉える必要はない。用途によっては、分解能よりも到達距離、カバレッジ、設備数、運用コストの方が重要になる。

 AIによる信号処理技術が進歩すれば、こうした低帯域の電波から取り出せる情報量も増えていく可能性がある。今回の提携は、ISACを“高性能なセンサ”としてだけでなく、“広域を効率的に見るネットワーク”として考える余地を示している。

AI時代のネットワークは「データを運ぶ」だけでなく「データを生み出す」

 今回の取り組みをもう一段大きな視点で見ると、通信ネットワークの価値そのものが変わる可能性がある。これまで通信ネットワークは、カメラやセンサ、端末などが取得したデータをクラウドやデータセンタへ運ぶ「データ輸送網」として捉えられることが多かった。しかしISACでは、ネットワークそのものが新しいデータを生み出す。

 今回、5G信号から検知・追跡する対象はドローンだ。ネットワークは単にドローンから送られてきた映像や位置情報を運ぶのではなく、電波と信号処理を通じて「そこに何が存在するのか」という空間情報を生成する。NextNavは、この仕組みを将来的に低高度の商用ドローン、都市型航空モビリティ、公共安全などの空域管理へ広げる構想を示している。
 ここでAIの存在が重要になる。センシングによって得られる情報は、シンプルな位置情報だけではなく、対象の動きや周囲の状況など、時間とともに変化するデータになる可能性がある。そうした大量のデータをAIが分析すれば、「何かがいる」ことを検知するだけでなく、異常な動きを見つけたり、将来の状況を予測したりする方向にも発展し得る。

 もちろん、そこまでの機能が今回の提携によって実現したわけではない。現時点では長距離のドローン検知・追跡能力を検証する段階だ。ただ、通信ネットワークがセンシング能力を持つことで、ネットワークは「データを運ぶインフラ」から「データを生成し、AIが利用できる情報を提供するインフラ」へと役割を広げられる。
 AI活用が進むほど、価値を持つのは単純な通信容量だけではなく、AIが判断するために必要な現実世界の情報を、どのように取得できるかという点になる。ISACは、その入口になり得る技術だ。

通信、測位、センシングが融合すると「空間インフラ」が生まれる

 そして今回のニュースをNextNavの一連の取り組みまで広げて見ると、さらに興味深い方向が見えてくる。それは、通信、測位・時刻同期、センシングという、これまで別々に考えられてきた機能が、一つのネットワークインフラに収斂していく可能性だ。

 NextNavが構築している5G PNTネットワークの本来の目的は、GPSを補完・バックアップする地上型の測位・航法・時刻基盤だ。実際、同社は9月に5G PRSを利用した単一メートル級の測位性能を実環境で検証している。そこへ今回、センシング機能を加えようとしている。さらに8月にはTiami Networksとも5Gを利用したC-UAS検知で提携しており、PNTネットワークをセンシング基盤として活用する動きは今回だけのものではない。

 この先にあるのは、シンプルに「5Gでドローンを検知する」という世界ではないだろう。例えばドローンが飛行するためには、自分がどこにいるのかを知る測位機能、正確な時間を共有する機能、周囲に何があるのかを把握するセンシング機能、そして得られた情報を他のシステムと共有する通信機能が必要になる。これらを個別の設備で構築するのではなく、一つのネットワークが複数の機能を提供できれば、低高度空域そのものをデジタル化する基盤になり得る。
 これはドローンだけの話でもない。都市交通、物流、公共安全、重要インフラ監視など、現実空間とデジタル空間の接点が増えるほど、「どこに」「何があり」「どのように動いているのか」をリアルタイムで把握する能力の重要性は高まる。

 通信ネットワークはこれまで、人や機器をつなぐインフラだった。そこに測位、時刻同期、センシング、AIによる認識が加われば、ネットワークは人や機器だけでなく、現実の空間そのものをデジタル化するインフラへと変わっていく可能性がある。今回の提携は、その方向を示す一つの実証テーマと捉えられる。

(OPTCOM編集部)