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ICEYEとNokiaが提携し、政府および防衛関連顧客向けに安全かつ主権的な衛星通信システムを開発

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 ICEYEとNokiaは10月1日(フィンランド ヘルシンキ)、政府向けに安全で主権的な高性能ブロードバンド低軌道(LEO)衛星通信システムを開発するための提携を発表した。

 両社は「このシステムは、防衛や国境警備から緊急サービス、災害対応まで、幅広いミッションを支援する。信頼性の高い欧州技術を基盤とするこの共同開発衛星通信システムは、衛星、地上セグメント、端末の所有権と制御権を各国に提供する。最初の通信衛星は2028年に打ち上げられる予定だ」としている。

 地上ネットワークが障害を受けたり侵害されたりした場合、防衛部隊、緊急対応要員、および民間当局は、依存している情報および指揮系統へのアクセスを失うリスクに直面する。そのため、政府は最も厳しい状況下でも利用可能であり、かつ完全に所有・制御できる、強靭な通信インフラを必要としている。

 共同開発される主権システムは、優先度の高いミッション領域において、ターゲットを絞った高スループットかつ低遅延の接続性を提供します。軍事・商業ネットワークを置き換えるのではなく、補完するように設計されたこのシステムは、通信範囲、耐障害性、容量を向上させ、政府機関や防衛組織が作戦のあらゆる場所で重要な通信接続を維持できるよう支援する。

 このパートナーシップは、ICEYEの主権衛星ミッションにおける実績と、Nokiaのセキュアネットワーク技術における豊富な経験および拡大を続ける防衛関連事業ポートフォリオを融合させるものとなる。両社は協力して衛星、地上インフラ、堅牢なエンドユーザ端末を統合し、ICEYEの主権情報事業モデルを宇宙ビジネスモデルから衛星通信へと拡張する。

 ICEYEのCEO 兼 共同創設者であるRafal Modrzewski氏は「Nokiaと共に、私たちは実績のある宇宙情報に関する専門知識を基盤に、主権に基づいた高性能衛星通信を提供する。各国は、外国の商用通信事業者のサービス条件に依存することなく、通信を完全に所有・管理できる必要がある。私たちはポーランドに1年足らずで独自のレーダ衛星システムを納入した。Nokiaとのパートナーシップにより、各国が必要とするタイムラインで、衛星通信においても同様のスピードで開発を進めることができる」とコメントを出している。

 Nokiaのプレジデント 兼 CEOであるJustin Hotard氏は「国家の作戦遂行は、リアルタイムでの感知、判断、行動能力に依存する。フィジカルAIはこれを可能にするが、そのためには陸、海、空、宇宙にわたる安全で強靭な接続が不可欠だ。Nokiaの信頼性の高いネットワークとICEYEの実績ある主権宇宙能力を組み合わせることで、既存の地上ネットワークを補完する衛星通信機能を提供し、あらゆる領域における紛争環境下で各国が自信を持って作戦を遂行するために必要な状況認識、接続性、制御能力を実現する。

 Modrzewski氏とHotard氏は、10月2日にHelsinki Security Forumで”How to Salvage Europe’s Technological Sovereignty.”と題したセッションに登壇する。

編集部備考

衛星通信は「地上網の補完」から「国家インフラ」へ

 今回の提携でまず注目したいのは、衛星通信を「地上ネットワークが利用できない場所を補う通信手段」としてではなく、政府や防衛組織が自ら保有・管理する通信インフラとして構築しようとしている点だ。NokiaとICEYEは、政府向けのセキュアなLEO衛星通信システムを共同開発し、衛星だけでなく地上設備や端末までを利用国が所有・管理できる仕組みを目指す。最初の通信衛星は2028年の打ち上げを予定している。

 衛星通信は従来から、離島や僻地、船舶、航空機など地上網の届きにくい場所をつなぐ手段として利用されてきた。また災害などによって地上ネットワークが利用できなくなった場合のバックアップという役割も担ってきた。
 しかし、今回の構想では、その位置付けが一段変わる。地上網が正常に動作している平時にも衛星通信を利用し、さらに地上網が途絶・侵害された非常時には別の通信経路として機能させる。つまり「地上網が使えないから衛星を使う」のではなく、最初から複数の通信基盤を組み合わせ、その一つとして衛星を組み込む発想だ。実際、両社は今回のシステムについて、既存の軍用・商用ネットワークを置き換えるのではなく、通信範囲、耐障害性、容量を補完するものと位置付けている。

 この変化は、通信インフラに求められる価値が「高速・大容量」だけではなく、「必要なときに利用できること」へ広がっていることを示している。防衛、国境警備、災害対応、緊急サービスなどでは、通信が止まった場合の社会的・戦略的な影響が大きいからだ。

 今後の通信インフラでは、光ファイバや5Gを整備すれば十分という考え方から、地上・衛星を含む複数の経路を組み合わせ、状況に応じて通信を維持することが重要になる。衛星通信は、地上網の「代替」から、国家のレジリエンスを構成する通信インフラの一要素へと、その役割を広げつつある。

データ主権から「通信主権」へ

 今回の提携をもう一段掘り下げると、「sovereign(主権)」という言葉の意味が見えてくる。ここで問われているのは、ただ通信を暗号化して安全にすることではない。どの衛星を使うのか、どこに地上設備を置くのか、誰が端末を管理するのか、そして通信システムから得られるデータや運用情報を誰が管理するのかまでを、利用国側で決められることに意味がある。

 ICEYEは従来から、政府が自国の衛星、地上設備、ソフトウェア、分析環境を保有・運用する「sovereign ISR」を展開してきた。今回のNokiaとの提携は、その考え方を衛星通信へ拡張するものと見ることができる。ICEYEの説明でも、データと制御を利用国が承認した国内または同盟国のインフラ内に置き、外国の商用事業者の利用規約への依存を避ける設計が示されている。
 この発想は、これまでクラウドやAIの分野で議論されてきた「データ主権」とも重なる。AIを利用する企業や政府にとって、データをどこに保存するかだけでなく、どのAI基盤を使い、どのルールの下で処理し、誰がその結果にアクセスできるのかが重要になっている。同じことが通信インフラにも及び始めたと考えれば分かりやすい。

 通信の役割は、従来のようなデータ伝送の手段だけではなくなっている。防衛や災害対応では、センサから情報を取得し、それを分析し、必要な組織や現場へ伝え、さらに現場から指示を返すという一連の活動を支える基盤になる。その通信経路を外部事業者のサービスに全面的に依存することは、平時には合理的でも、危機時には別のリスクになり得る。
 もちろん、すべてを自国で保有することが常に最適という意味ではない。今回のシステムも、単独の国家コンステレーションだけでなく、同盟国による共同運用や、迅速な展開を想定した方式など複数の運用モデルを示している。

 重要なのは、「誰が通信を所有し、誰が制御できるのか」という視点が、ネットワーク選定の新しい判断軸になっていることだ。AIや重要インフラが通信への依存を深めるほど、通信事業者からサービスを購入するだけでなく、通信そのものを戦略的なインフラとして捉える動きが強まる可能性がある。

「見る」と「つなぐ」が一つの情報基盤になる

 今回の提携で企業の組み合わせに注目すると、もう一つ興味深い変化が見えてくる。それは、ICEYEが得意とする「見る」技術と、Nokiaが得意とする「つなぐ」技術が、衛星という共通の基盤の上で融合しようとしていることだ。

 ICEYEはSAR(合成開口レーダ)衛星による地球観測を中核に、政府向けの主権型ISRシステムを展開している。衛星によるセンシングだけでなく、地上設備、ソフトウェア、分析機能までを一つのシステムとして提供している点が特徴だ。今回Nokiaが加わることで、そこに高性能な衛星通信とセキュアなネットワーク技術が組み込まれる。
 これは、衛星の役割そのものが変化していることを示す動きとも考えられる。衛星は従来、画像を撮影する「センサ」や、遠隔地をつなぐ「通信設備」として、それぞれ別の技術領域として語られることが多かった。しかし、実際の利用現場では、センシングだけで目的を達成することはできない。
 例えば、ある地域で異常を検知した場合、その情報を収集し、分析し、必要な担当者へ届け、場合によっては現場の機器や人間が次の行動を取る必要がある。つまり重要なのは「何が起きているかを見ること」だけではなく、「その情報をどれだけ速く、確実に必要な場所へ届け、判断や行動につなげられるか」という情報の流れ全体になる。

 今回のNokiaとICEYEの提携は、まさにこの「センシングから通信まで」の一体化を意識したものと見ることができる。NokiaのJustin Hotard CEOも、主権型の運用にはリアルタイムで「sense、decide、act」する能力が必要であり、そのためには陸・海・空・宇宙をまたぐ安全でレジリエントな接続性が必要だと説明している。
 ここには、AI時代の通信インフラを考える上でも重要な示唆がある。AIやフィジカルAIが現実世界で判断・行動するようになれば、AIそのものの性能だけでなく、現実世界からデータを取得し、必要な処理を行い、結果を現場へ返す一連の環境が重要になるからだ。

 通信事業者やネットワークベンダーにとって、競争領域が「通信速度」だけではなく、センシング、データ処理、AI、運用まで含めた情報フロー全体へ広がっている。今回の提携は、その変化を宇宙という極端な環境から先取りしているともいえる。

これからのネットワークは「最適な1本」ではなく「使える経路の組み合わせ」へ

 NokiaとICEYEは、今回のシステムを既存の軍用・商用ネットワークと併用し、地上網や既存の政府向け衛星通信を補完するものと位置付けている。ICEYEも、既存の政府衛星通信や地上ネットワークと連携して利用することを明確にしている。
 この考え方は、防衛や災害対応に限らず、今後のネットワーク設計全体に広がっていく可能性がある。これまでネットワークでは、利用する場所に最も適した通信方式を選び、その回線を安定的に運用することが基本だった。しかし、通信を利用する機器やサービスが増え、さらにAIによって通信の重要性が高まると、「最も優れた回線を1本用意する」だけでは十分ではなくなる。

 例えば、平常時には光ファイバや5Gを使い、移動中はモバイル網を利用し、地上網が届かない場所では衛星を利用する。さらに災害や障害、混雑、妨害などによって特定の経路が利用できなくなれば、別の経路へ切り替える。必要なのは、個々のアクセス技術の優劣を競うことではなく、複数の通信手段を一つのサービスとして組み合わせる能力になる。
 今回のシステムも、選択したミッションエリアに対して高スループット・低遅延の接続性を提供しながら、既存ネットワークを補完するという設計思想を取っている。またICEYEは、国家単独のコンステレーションだけでなく、同盟国による共同コンステレーションや迅速な展開を想定した運用モデルも示している。

 この方向性は、通信ネットワークの「冗長性」の意味を変える可能性もある。従来の冗長化は、同じ種類の設備を複数用意して障害に備える考え方が中心だった。これからは、光、5G、衛星など異なるアクセス手段を組み合わせ、状況に応じて通信経路そのものを変えられることが価値になる。

 AIやフィジカルAIが現実世界で動く時代には、通信断が従来のような「サービス停止」ではなく、AIの判断や機器の動作そのものに影響する可能性がある。そう考えると、ネットワークに求められるのは「常に最高性能であること」ではなく、「環境が変化しても必要な接続を維持できること」になる。
 衛星通信、5G、光ネットワークなどを個別の市場として見るのではなく、それらを組み合わせて一つの通信基盤として運用する。このマルチアクセス化こそ、今回の提携が示す衛星通信の将来像の一つといえる。

(OPTCOM編集部)

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