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シスコ、次の10年のデジタル イノベーションに向けたインターネット構築プランを発表

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「Internet for the Future」戦略と、業界で最も意欲的なシリコン アーキテクチャを発表

 米シスコは12月11日、現行のインフラストラクチャのパフォーマンス、経済性、電力消費の制約を超えてデジタルイノベーションを推進すべく設計された新しいインターネットの構築に関するテクノロジー戦略の詳細を発表した(シスコジャパンによる抄訳は12日に公開)。これは次の10年のインターネットを定義する複数年のアプローチであり、シスコの戦略は、世界の開発者が構想段階にあるアプリケーションやサービスを、実現するための道を切り拓く技術革新をすでに提供している。
 シスコは、業界唯一のネットワーキング シリコン アーキテクチャとして名付けた Cisco Silicon Oneをはじめとする最新のイノベーションを発表し、新しいシリコン上に構築された世界で最も強力なキャリア クラスのハイエンド ルータである新しい Cisco 8000 シリーズをリリースした。また、ユーザがシスコのテクノロジーを、分散型ビジネス モデルを通じて利用するための新しい購入オプションを発表した。
シスコ 会長兼CEO(最高経営責任者)のチャック・ロビンス(Chuck Robbins)氏は「イノベーションには、集中的な投資、適切なチーム、想像力を重視する文化が必要だ。シスコは5G 時代の新しいインターネットを構築するために、業界の変革に注力している。シリコン、光学系、ソフトウェア分野の最新のソリューションは、私たちが推進している継続的なイノベーションを表している。これは、お客様が時代を先取りし、今後数十年にわたって顧客やエンドユーザ向けの画期的なエクスペリエンスを提供できるようにする」とコメントを出している。

Internet for the Futureの構成要素

 次の 10 年のデジタル エクスペリエンスは、仮想体験と拡張現実、16Kストリーミング、AI、5G、量子コンピューティング、適合型および予測型サイバーセキュリティ、インテリジェントIoT、今後開発されるその他の高度なテクノロジーによって生み出される。これら次世代のアプリケーションは、現行のインターネット インフラストラクチャが対応できる能力を超えて複雑さを増大させる。
 シスコは「過去5年間、お客様が高度なデジタル世界において将来的にビジネスを成功させるために必要となるインターネットを構築するためのテクノロジー戦略を推進してきた。デジタルトランスフォーメーションが現行インフラストラクチャの限界に迫ることで生じる最も困難な課題を克服することを目的とするこの戦略は、シスコの新しいシリコン アーキテクチャと次世代の光学系を組み合わせた次世代のインターネット インフラストラクチャへとつながる。シスコの戦略は、将来のデジタル アプリケーションに求められる需要に対応するインターネットの構築方法の経済的側面を変え、お客様がよりシンプルで費用対効果の高いネットワークでビジネスを行えるようにする」としている。
 シスコの戦略は、シリコン、光学系、ソフトウェアの3つの主要テクノロジー領域における開発と投資に基づいているという。
 シスコ ネットワーキング セキュリティ事業担当エグゼクティブ バイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーのデビッド・ゲクラ―(David Goeckeler)氏は「イノベーションの境界を、私たちの現在の体験をはるかに越えて次のレベルへと押し上げることは未来のために重要であり、シスコは、シリコン、光学系、ソフトウェアがそれを実現する技術的方策であると考えている。シスコのテクノロジー戦略は、単一製品領域の次世代に関する戦略ではない。この数年間シスコは、個別テクノロジーの全カテゴリーに投資してきた。これらのテクノロジーは将来的に統合され、デジタル イノベーションの波が押し寄せる中で最も困難な問題を最終的に解決すると考えられる。この戦略により、社内でもかつてない意欲的な開発プロジェクトが誕生している」とコメントを出している。

プログラマブルで画期的なユニファイドシリコンアーキテクチャである Cisco Silicon One の発表

 新しい Cisco Silicon One は直近で最大毎秒25テラビットの性能を備え、進化するシスコのルーティング ポートフォリオの基盤となる。これは、サービスプロバイダやWebスケール市場全体に広く適応可能な業界初のネットワーキング チップです。固定とモジュール式の両方のプラットフォームに合わせて設計されており、これまで解決できなかった最も困難な要件にも対応できる。最初のモデルであるCisco Silicon One「Q100」は、プログラミング、バッファリング、電力効率、規模または機能の柔軟性を損なうことなく、ルーティング マイルストーンの10 Tbpsを上回るネットワーク帯域幅を提供する。
 従来は、異なる性能の複数タイプのシリコンがネットワーク上や単一デバイス内でも使用されていた。新機能の開発とテストは時間がかかり、高コストになりがちだった。だが、このプログラマブルなユニファイド シリコンにより、ネットワーク事業者はオペレーションのコストを大幅に削減し、新規サービスの価値実現までの時間を短縮できる。
 Google Cloud フェロー兼システム インフラストラクチャ担当バイスプレジデントのアミン・ヴァーダット(Amin Vahdat)氏は「ハイエンド ルーティング シリコンの分野に進出するシスコと連携し、次世代ネットワークに求められる高速性と大容量の実現で協力できることを楽しみにしている」とコメントを出している。
 Facebook ネットワークエンジニアリング担当ヴァイスプレジデントのナジャム・アフマド(Najam Ahmad)氏は「Facebookは、ネットワークの分解とオープンエコシステムの強力な支持者であり、Open Compute ProjectやTelecom Infrastructure Projectなどの主要な業界イニシアチブを立ち上げて、ネットワーク業界を変革した。新しいCisco Silicon Oneアーキテクチャはこのビジョンに沿ったものであり、このモデルは、ネットワークオペレーターに分散アプローチを通じて多様で柔軟なオプションを提供すると考えている」とコメントを出している。
 ACG Research CEO 兼プリンシパル アナリストのレイ・モータ(Ray Mota)氏は「シスコは自社のインターネットを支えるコストを変えようとしている。ハードウェア、ソフトウェア、光学系、シリコンにまたがるイノベーションにより、次段階のインターネットで大規模に機能させるための運用コストをお客様が管理しやすいようにする。2020年に向けて、運用効率を提供するタイミングは非常に重要になる」とコメントを出している。

Cisco Silicon One を搭載した Cisco 8000 シリーズプラットフォームの発表
– 業界をリードするパフォーマンス

 新しいハイエンド ルータCisco 8000シリーズは、Cisco Silicon One Q100が搭載される初のプラットフォーム。これは、サービスプロバイダや Web スケール企業が5G、AI、IoTの時代に大規模ネットワークを構築、運用するコストを削減できるように設計されている。主な特徴は次のとおり。

  • 400 Gbps 以上に合わせて最適化され、単一ラック ユニットで10.8 Tbps 以上を実現できる。
  • 新しいクラウド強化型Cisco IOS XR7ネットワーキング オペレーティング システム ソフトウェアが採用されており、オペレーションをシンプルにし、運用コストを削減できるように設計されている。
  • 重要なインフラストラクチャの信頼性に関するリアルタイム インサイトのための、統合された信頼技術によって強化されたサイバーセキュリティを提供する。
  • サービスプロバイダは一層の帯域幅スケールとプログラマビリティを獲得し、消費電力と設置面積の制約が最も大きなネットワーク ロケーションであってもTbpsを提供できる。

グローバルカスタマー開発とトライアル

 Cisco 8000シリーズの開発とトライアルにおいて、シスコは先進的なユーザと連携している。中東・北アフリカ地域の代表的な通信サービスプロバイダであるSTCがこの新技術を最初に採用したほか、ComcastとNTTCommunicationsをはじめとする各社と世界中でトライアルが進行中だという。

400G以上のための光学機器

 シスコは「将来のデジタル イノベーションに対応する新しいインターネットの構築には、シリコンと光学テクノロジーの継続的なブレークスルーが求められる。シスコは両方の分野に最先端の知的財産を有する、業界内でも唯一の存在だ」としている。
 ポート レートが100Gから400G以上に増加すると、インターネット インフラストラクチャの構築と運用のコストで光学が占める割合が大きくなる。ルータとスイッチのポート レートが増加し続ける中で、業界の最も厳しい信頼性と品質の要件を満たす光学機器をユーザが確実に利用できるように、シスコは有機的に投資している。
 シスコは、自社の認定プログラムを通じて光学機器が業界標準を完全かつ確実に満たし、あらゆる運用条件下において、シスコ以外のすべてのホストでも動作するようにする。シスコは「このプログラムにより、お客様はシスコ以外のホストが配備されたアプリケーションでもシスコの光学製品を利用でき、シスコの製品が信頼性と品質の基準を満たすことを確信できる」としている。
 さらに、シリコンとシリコン フォトニクスの進歩に伴い、従来は個別シャーシベースのソリューションで提供されていた機能をプラガブル フォーム ファクタで利用できるようになる。この変化は、運用の簡素化という点で、ネットワーク事業者に大きなメリットを提供する可能性がある。シスコは、コスト、消費電力、設置面積を削減し、ネットワークの運用を簡略化するデータセンタ ネットワークおよびサービスプロバイダ ネットワークのアーキテクチャ的移行を実現するために、シリコン フォトニクス テクノロジーに投資しています。

柔軟なビジネスモデルでインターネットのコストを変える

 シスコは、柔軟な利用モデルを提供する計画についても発表した。これはまず、シスコの光学系ポートフォリオで確立され、次に Cisco IOS-XR ソフトウェアの分割が続き、今後は Cisco Silicon One も含まれるようになる。この新しいモデルは適応力が高く、ネットワークを構築するユーザにコンポーネント、ホワイトボックス、統合システムの選択肢を提供する。このアプローチは、ネットワークの構築時に個別テクノロジー要素と集約テクノロジー要素を選択する事業者の発展性と適合し、卓越したビジネス価値を提供するインターネットの新しい経済性を生み出す。