IOWN APNと60GHz帯無線LANにより、コンビナートの高度化を支える大容量・低遅延通信環境を実証【NTT東日本、NTTドコモビジネス、NTTドコモソリューションズ、NTTデータグループ、1Finity、三菱ケミカル】
DX/IoT/AI 無料屋外スマートメンテナンスの基盤構築に向けて
NTT東日本、NTTドコモビジネス、NTTドコモソリューションズ、NTTデータグループの4社(以下、NTTグループ)、1Finity、および三菱ケミカルは4月6日、IOWN APNおよびAIの活用によるスマートメンテナンスの実現を通じて、屋外に設置された工場設備を点検する作業員の負担軽減に取り組んでいることを発表した。
屋外の工場設備においては、通信環境の制約に加え、スマートメンテナンスの活用事例が少ないことから、「通信環境の整備」と「スマートメンテナンスの活用」が相互に進みにくい状態にあった。
こうした課題の解決を目的として、2月に、IOWN APNと60GHz帯無線LAN(WiGig)を活用した大容量・低遅延通信環境の構築について、岡山県の水島臨海工業地帯(水島コンビナート)において検証を実施した。
検証の結果、屋外に大容量・低遅延通信環境を構築することで、外部の計算資源を活用したスマートメンテナンスが実現可能であることを確認した。
NTTグループ、1Finity、三菱ケミカルは「今後は、今回検証した通信環境を基盤として、複数のロボットやデバイスを用いた映像や音声データによる異常検知技術など、スマートメンテナンスの活用事例を拡大し、現場作業員の負荷低減を実際の現場で推進していく」との展望を示している。

図1:本検証のイメージ図

図2:三菱ケミカル 岡山事業所

図3:60GHz帯無線LAN(WiGig)装置

図4:APN装置
背景
NTTグループ、1Finity、および三菱ケミカルは、持続可能な社会の実現に向けた取り組みの一環として、IOWN Global Forum(以下、IOWN GF)の活動に参画している。これまで3者は、IOWN GFパートナー企業と連携し、ロボットを遠隔操作して、設備点検を代行する機能や要件を含む「Remote Controlled Robotic Inspection」ユースケースのリファレンス実装モデルの開発を進めてきた。2024年には、IOWN APNを活用した遠隔操作型ロボットと、AIによる映像解析を組み合わせた工場点検のモデル実証実験を実施している。
検証の概要
大規模な工場設備が集積するコンビナートでは、安全・安定稼働を維持するため、設備の定期的な屋外点検が不可欠だ。一方で、施設規模が大きい場合には、点検作業に多くの工数を要するほか、高所作業などの転落の危険が伴う点検も存在し、現場作業員の負担軽減は長年の課題となっていた。
また、従来のコンビナートでは、通信環境に制約があることから、屋外におけるスマートメンテナンスの取り組みは十分に進まず、スマートメンテナンスが進展しないことで通信環境の高度化も進まないという悪循環、いわばデッドロックの状態に陥っていた。
近年は、ローカル5Gなどの無線技術の活用に向けた検討も進んでいるが、日本では無線免許の取得などの制度面での対応が必要となることから、通信環境の整備に向けて依然として高いハードルが存在していた。
今回、IOWN APNと、免許不要の無線通信技術である60GHz帯無線LAN(WiGig)を組み合わせることで、コンビナートにおいて、大容量・低遅延な通信環境を構築した。具体的には、三菱ケミカル岡山事業所からNTTグループ東京都内のビル間(約700km)を接続するIOWN APN環境を構築するとともに、岡山事業所内において、WiGigを用いた約2km区間の無線通信環境を約6時間で構築した。
検証における各社の役割
【NTTグループ】
岡山事業所―東京都内のビル間におけるIOWN® APN環境構築、短期間でのWiGig無線環境構築、およびセンサからの映像・音声データの品質検証
【1Finity】
IOWN APNネットワーク構築に関する技術的知見、および関連機器の提供
【三菱ケミカル】
工場設備点検に必要となる通信環境の機能要件・非機能要件などの定義、および実験場所の提供
検証内容と結果
【IOWN APN環境の構築】
検証場所である岡山事業所-東京都内のビル(約700km)の接続には、NTTドコモビジネスが提供する「docomo business APN Plus powered by IOWN」を活用した。本サービスはIOWN構想に基づいて、光を中心とした革新的技術を活用することで、100Gbpsの伝送に対応可能な大容量・低遅延な通信環境を実現する。また、従来の光ネットワーク設備の有効活用ができることから、国内全域の敷設難易度の高いエリアに対しても構築が可能となり、高い品質・信頼性を担保する。本検証では、東京~大阪以外の地域におけるコンビナートに対して、IOWN APN環境を提供できた。
【WiGig環境の構築】
岡山事業所内において、APNの末端から検証場所までの約2km区間に、無線中継器18台を用いて、WiGig無線通信環境を構築した。本環境は、約6時間という短時間で整備した。検証場所において、上り伝送量最大900Mbpsの無線通信環境を実現した。また、高周波帯通信における課題とされてきた、移動する人や車両・ロボットが有するセンサへの無線接続も可能であることを確認した。
【4Kカメラを用いたデータ伝送実験】
4Kカメラ8台を用いた映像データの同時伝送を実施した。(合計約400Mbpsのデータ通信)約2kmにわたるWiGig無線通信区間と、往復約1,400kmのAPN通信区間を組み合わせた構成において、エンド・ツー・エンドで0.1秒未満の低遅延でデータ伝送が可能であることを確認した。また、屋外環境においても、複数のセンサから取得される映像や音声などの大容量データを同時かつリアルタイムに収集できた。
今回の検証結果により、通信環境の制約を抱えていたコンビナートにおいても、屋外スマートメンテナンスが実現可能な大容量・低遅延通信環境が構築できること、ならびに遠隔地に配置された計算資源であるデータセンターなどと接続可能であることが分かった。
これにより、遠距離環境でのシームレスな映像配信や、各種デバイスを用いた映像や音声などのデータの同時取得だけでなく、マルチモーダルAIを用いた高精度かつリアルタイムな状態把握に基づく、AIによる巡回点検業務支援の実現が期待される。これらの取り組みは、屋外スマートメンテナンスの高度化、および社会実装の加速に向けて、通信・計算インフラ整備の重要性と有効性を示すものとなる。
今後に向けて
NTTグループ、1Finity、三菱ケミカルは「屋外スマートメンテナンス基盤の本格的な展開に向けて、高精度カメラやロボットを複数台同時に制御可能な安定した通信環境のさらなる高度化を図っていく。あわせて、複数拠点におけるマルチオペレーションに向けたネットワーク環境、ならびにマルチモーダルAI処理に対応したコンピューティング基盤の実現に向けた検討および実証を進めていく」との展望を示している
各社のコメント
NTTドコモビジネスの執行役員 ビジネスソリューション本部 第三ビジネスソリューション部長である山口 尚氏は「今回IOWN APNによる通信環境の構築は、”未来のコンビナート”の実現に向けた確かな前進であると確信している。IOWN APNによって地理的制約を解消することで、日本が直面する深刻な労働力不足という社会課題の解決に大きく貢献できると考えている。本基盤を通じて、地域の現場で培われてきた技術や知見をデジタル化し、世界へと展開可能なスマートメンテナンスとして実装することで、産業の持続的な高度化を力強く推進していく」とコメントを出している。
1Finityのフォトニクスシステム事業本部 本部長である松井 秀樹氏は「今回の取り組みは、当社がミッションクリティカル分野で培ってきたネットワーク技術を、社会課題の解決に向けてパートナーの皆さまと共に発展させる大きな一歩となった。IOWN APNが持つ圧倒的な低遅延・高信頼の特性が、プラント設備のスマートメンテナンスにおいて実効性をもって機能することを確認できたことは、産業の在り方を大きく変える可能性を示すものだ1Finityはこれからも、現場と社会に真に価値をもたらすネットワークのかたちを追求し、サステナブルでレジリエントな産業基盤の実現に向けて、パートナーの皆さまと共創を加速していく」とコメントを出している。
三菱ケミカルのエグゼクティブコンサルタントである葛城 俊哉氏は「屋外で大量のデータを取得・活用するには、通信環境の構築が最大の課題だ。本検証は、その解決策を提案したものだ。条件はそろったので、今から”ものづくり”の新しい在り方への挑戦が本格化していく。多くの企業がこの取り組みに参画することを期待している」とコメントを出している。







