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光ネットワークの構築・運用管理に必要な光伝送信号パラメータの深層学習を用いた推定技術を開発【富士通研究所】

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 富士通研究所、Fujitsu Laboratories of Americaと富士通研究開発中心は3月12日、光ネットワークの構築・運用管理を容易にするため、光受信器の入力信号から光伝送信号パラメータを直接推定する技術を開発したと発表した。今回、パラメータを推定するための学習の際に、光通信システム特有の課題となる光伝送信号の特性の偏りによる影響を解消して光信号対雑音比(以下、光SN比)や転送速度といった光伝送信号のパラメータを、深層学習技術を活用して学習する技術を開発した。光ネットワークを模擬した伝送実験系を構築し、約1万個のデータによって光SN比は1%の誤差で、変調方式とシンボルレートは5%の誤差で推定可能なことを実験検証した。
 この技術を用いることで、光ネットワークの構築や運用中に問題が発生した際に、専門家が専用の測定器を用いて数日かけて行っていた作業を、分単位の時間で行えるようになり、構築・運用管理の容易化に貢献する。

開発の背景

 ICT社会を支える光ネットワークの通信トラフィックは、今後、インターネットに接続される端末とともに爆発的に増大する。これらのデータを収容するため、光ネットワークには新しい光伝送技術が次々と適用されており、今後、さらなる多様化・複雑化が考えられる。そのため、光ネットワークの構築・運用管理を容易にする技術が求められている。

課題

 これまで、光ネットワークを構築する際や、運用で問題が発生した際には、本分野の専門家が専用の測定器を現地に持ち込み、原因究明のための測定・調査を行う必要があった。大容量化・長距離化を目指す光ネットワーク内の光伝送信号の種類や機器の設定パラメータはますます複雑化するため、構築や問題の解決に数日の時間を要する可能性もあり、迅速な光ファイバネットワーク構築・管理の大きな課題となる。これを解決するため、光ネットワークの状況を遠隔から監視・モニタリングできる技術の開発が求められている。しかし、専用測定器を使うことなく運用管理者が必要な情報を測定するには、光信号特有の性質により実現に課題があった。

図1 今回開発した技術の概要

開発した技術

 今回、遠隔の光受信器における光伝送信号からネットワークの構築・運用に必要となる光伝送信号パラメータ(SN比、変調方式、シンボルレート)を測定する技術を開発した。
 開発した技術では、光受信器の受信信号を深層ニューラルネットワークへの入力データ、専用測定器で測定した結果を教師ラベルとし、深層ニューラルネットワークが専用測定器の測定結果を再現するように学習することで、光伝送信号パラメータを推定する。ここで、受信した光伝送信号には、レーザ周波数などの信号特性に偏りが生じるため、そのまま学習データとして利用すると、偏った状況に特化した学習となってしまい、推定誤差が大きくなってしまう。そこで、光伝送信号を元に状態を変えた信号を仮想的に生成した。たとえば、レーザ周波数を変えたデータを仮想的に多数生成し、それらを合わせて学習データとすることで、様々な状況を学習結果に反映することが可能となり、推定誤差を小さくすることが可能となった。

図2 今回開発した技術の概要

効果

 今回、実際の光ネットワークに適用される光受信器を模擬した伝送実験系を構築し、約1万個のデータによって光SN比は1%の誤差で、変調方式とシンボルレートは5%の誤差で推定可能なことを実験検証した。この技術を用いることで、これまで専門家が専用の測定器を用いて数日かけて行っていた作業を、遠隔かつ分単位の時間で推定できるようになると期待される。

今後

 今後、実際のネットワーク環境での実証を進め、2019年度以降の製品化を目指すという。また、光ネットワークの自動運用に向けて検討を進めていくとしている。