NokiaとDatabricksが、自律型ネットワーク向け統合データプラットフォームを実証
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NokiaとDatabricksは6月24日(エスポー)、AIドリブン型自律型ネットワークをサポートするために設計された、基盤に依存しない統合データ プラットフォームの実証実験(PoC)を共同で成功裏に完了したことを発表した。
この共同開発により、通信事業者は断片化されたデータ環境をシンプル化し、リアルタイム分析を大規模に展開することで、意思決定の迅速化、ネットワークパフォーマンスの向上、運用効率の向上を実現できる。
NokiaとDatabricksは「このPoCは、長年にわたる業界の課題を解決するものだ。通信ネットワークは通常、それぞれ独自のデータアーキテクチャを持つ数百ものサイロ化された運用・ビジネスサポートシステムに依存しており、ドメイン全体でAIを一貫して適用することが困難だった。AIとマルチエージェント システムを真に活用するには、通信事業者はコードの書き換えを必要とせずに、異なるクラウド環境やオンプレミスインフラストラクチャでシームレスに動作する共通のデータプラットフォームを必要としている」と説明している。
このPoCにより、DatabricksとNokiaは、ネットワークデータをAIエージェントに供給し、自動化されたドメイン横断的な意思決定を行うために必要な、膨大な規模とリアルタイムのデータ取り込み速度を効率的に処理できる共同アーキテクチャを開発できることが確認された。
NokiaのAI・自律型ネットワーク担当CTOであるOguz Sunay氏は「Databricksとの提携は、次世代自律型ネットワークに必要なデータ基盤の構築に向けた大きな一歩となる。クラウド環境全体で共通の柔軟なデータプラットフォームを実現することで、通信事業者はAIの導入を加速させ、より効率的で強靭かつ持続可能なネットワークを構築できるようになる」とコメントを出している。
Databricksの通信業界担当グローバル責任者であるNevash Pillay氏は「通信事業者はますます複雑化するネットワークを管理しており、データをより一貫性のある方法で活用する必要がある。Nokiaとの協業は、統合データプラットフォームがいかに運用をシンプル化し、ネットワーク領域全体でAIの価値を引き出すことができるかを示している」とコメントを出している。
POCについて
NokiaとDatabricksのエンジニアリングチームは、リアルタイムのパフォーマンス管理ユースケースに焦点を当て、クラウド上でティア1通信事業者の規模に迅速に対応できるよう、分析データの取り込みをシミュレーションした。彼らの取り組みは、通信事業者が様々な環境でデータドリブン型サービスを構築・運用する方法をシンプル化するための、いくつかの重要な技術的ブレークスルーをもたらした。
コーディングの複雑さを排除したクロスプラットフォーム データパイプライン:
データパイプラインは一度作成すれば、変更を加えることなく異なるプラットフォームに展開できる。テストでは、同じデータワークフローがDatabricksと、Apache Flink、Kafka、Icebergをベースとしたオープンソーススタックの両方でシームレスに動作し、リアルタイムストリーミング、バッチ処理、クエリタイムデータ製品をサポートした。
ベンダニュートラルなデータロジック設計:
特定のプラットフォームへのロックインを回避するため、Nokiaのエンジニアは、Pythonで抽象的でプラットフォームに依存しない式を用いて変換ロジックを開発した。コアロジックを「Platform-specific connectors (実行基盤ごとの接続アダプタ)」から分離することで、同じデータワークフローを複数の環境で再利用できるようになった。
環境を横断した自動展開:
チームは、展開時にワークフローを自動的に適応させるカスタムコンパイラを検証した。対象環境に基づいて、抽象ロジックをDatabricks向けのDelta Live Tablesやオープンソースシステム向けのFlink SQLといったネイティブフォーマットに変換し、Platform-specific connectorsを追加することで、手作業による再作業を排除し、デプロイメントまでの時間を短縮した。
AIを活用した新規データプロダクトの生成:
このプロジェクトでは、AIがいかに運用を効率化できるかも実証した。シンプルな自然言語によるプロンプトを用いることで、インテリジェントなデータファブリックエージェントが新規データプロダクトを生成し、人間の検証を要求し、パイプラインを自動的にデプロイできる。これにより、手作業を減らしながらイノベーションを加速できる。エージェント環境では、同じメカニズムを他のエージェントも活用し、データファブリックエージェントと(エージェント間)通信することで、オンデマンドで動的なデータプロダクトを作成できる。
エージェント環境向けに構築されたデータファブリック:
【クエリ時データプロダクト】データの複製ではなく、読み取り時に派生メトリクスを計算し、フィルタを適用し、集計、エンリッチメント、または結合を行う。
【ゼロコピー共有】クロスドメインデータの利用を軽量かつリアルタイムで行う。
【クラウド上の上位時間層に選択的にデータを供給するメカニズム】この上位層では、エージェントが過去のイベントに対する根本原因分析などの事後的なタスクを実行する。
今後の展望
NokiaとDatabricksは「自律型ネットワーク機能の強化に関する協業を継続し、AIアプリケーションが大規模なネットワークデータにリアルタイムでアクセス、相関分析、そしてそれに基づいてアクションを実行する未来へと、通信事業者が移行できるよう支援していく」との考えを示している。
編集部備考
■今回発表された技術の本質は、「データ処理ロジック」と「実行基盤」を分離した点にある。開発者はDatabricksやApache Flink、Apache Icebergといった個別のデータ基盤を意識することなく、統一された方法でデータ処理ロジックを記述できる。記述したロジックはコンパイラによって各実行基盤に適したネイティブ形式へ変換され、必要なプラットフォーム固有の接続部(platform-specific connectors)が付与されるため、環境ごとの書き換えは不要となる。
この仕組みにより、通信事業者は既存のデータ基盤や運用資産を維持したまま、新たなAIワークロードや自律型ネットワーク向けアプリケーションを展開できる。すなわち、新しいデータ基盤への全面移行を前提とせずにAI活用を進められるため、運用資産の再利用性が高まり、結果として基盤への依存度を低減し、マルチクラウドやハイブリッド環境への対応、さらにはOPEX削減にもつながる可能性を示した点に今回のPoCの意義がある。
■今回のPoCは、「3GPPによる下位レイヤ(ネットワーク)の標準化」と「TM Forumによる上位レイヤ(OSS/BSS/API)の標準化」の間で、これまでベンダやSIerごとに個別実装されてきた「データ処理の実装レイヤ」を抽象化した。
これまでも、3GPPの規格に基づいてネットワークからデータを収集し、TM ForumのOpen APIなどを介してOSS/BSSへ連携する仕組み自体は整備されてきた。しかし、その中間で行われるデータ処理は標準化の対象外であり、「データをどのように整形するか」「リアルタイムに特徴量を抽出するか」「DatabricksやApache Flink、Apache Icebergなど異なるデータ基盤へどのように最適化して実行するか」といった処理は、導入する製品やクラウド環境ごとに個別実装する必要があった。そのため、実行基盤を変更すれば、データ処理ロジックも作り直さなければならず、AI活用やシステム移行の大きな障壁となっていた。
今回、NokiaとDatabricksは、この実装レイヤにプラットフォーム非依存の抽象化レイヤを設けることを実証した。開発者は背後で動作するデータ基盤を意識することなく、データ処理のビジネスロジックを一度だけ記述すればよい。そのロジックはコンパイラによって各実行環境に適したネイティブ形式へ変換され、必要なプラットフォーム固有の接続部(platform-specific connectors)が付与されることで、環境ごとの手作業による書き換えを必要とせずに実行できる。
言い換えれば、3GPPがネットワークを標準化し、TM Forumが運用モデルやAPIを標準化してきたのに対し、今回のPoCは、その両者を支えるデータ処理の実装レイヤに可搬性をもたらす可能性を示したと言える。通信事業者は特定のクラウドベンダやデータ製品へ過度に依存することなく、既存のデータ資産や運用基盤を生かしながらAIネイティブな運用へ移行しやすくなる。
通信業界の標準化は、これまでネットワーク機能やAPI、情報モデルを中心に進められてきた。しかしAIがネットワーク運用の中心となる時代には、それらを流れる「データ処理ロジック」の可搬性も重要な設計要素となる。今回のPoCは、通信時代の「ネットワークの標準化」、クラウド時代の「APIの標準化」に続き、AI時代に求められる「データ処理の抽象化」という新たな方向性を示した点で、自律型ネットワークを支える次世代データ基盤の姿を示唆するものとして注目される。
(OPTCOM編集部)



