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5G向け無線モバイルフロントホールの実証実験を実施【NTT、NEC】

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光ファイバと同水準のシステムスループットを実現

 NTTとNECは7月30日、5Gシステム実現に向けた総務省委託研究「第5世代移動通信システム実現に向けた研究開発~高周波数帯・広帯域超多素子アンテナによる高速・低消費電力無線アクセス技術の研究開発~」の枠組みの中で、NTTドコモの協力のもと、5G向けに無線モバイルフロントホール(以下、MFH)伝送の実証実験を行ったと発表した。
 同実験では、5G向け4.5GHz帯対応のC-RAN構成の超多素子アンテナ基地局システムと汎用のミリ波高速無線伝送装置を使用し、システム内の集約基地局 (Central Unit、以下CU) とリモート局 (Distributed Unit、以下DU) 間のMFHを無線化した。この無線化したMFHを使用して5G伝送の実証実験を行い、光ファイバの有線MFHと同水準となる下り5Gbps以上のシステムスループットを達成し、5Gで求められる高速・大容量通信の要件を満たすことを世界で初めて確認した。

システム構成図

無線MFH装置

 現行の4G(LTE)で導入されているC-RAN構成のCUとDUの間の通信には、主に光ファイバが用いられており、CPRI規格によって所要伝送容量などの条件が規定されている。
 一方5Gでは、高速・大容量通信を実現するため、広い帯域幅と多数のアンテナ素子を活用してデータを送受信するMassive MIMO技術が有効だが、CPRI規格に準拠するとMFHでの伝送容量が従来のLTEと比べて大幅に増加する。
 例えば、アンテナ素子数128個(64送受信機)、帯域幅100MHzの超多素子アンテナを備えたDUの場合、CPRI規格では約320Gbpsの伝送容量が必要となる。これはLTE基地局(アンテナ素子数2個、40MHz帯域幅)の60倍以上に相当し、このようなMFHの通信を現在一般的に使用されている10Gbpsの光ファイバで行うためには、多数の光ファイバの設置や多重化などが必要でその敷設場所の確保や敷設費用が課題となる。
 また、高い周波数帯を使用する5GではDUを高密度に設置することが有効とされているが、DUの数が増えるとMFHとして利用する光ファイバも増加します。
 上記の課題に対応するために、両社では5G向けMFHを一般的な光ファイバで伝送可能な伝送容量である10Gbpsに低減した上で、MFHの設置を容易にするため無線化することが有効であると考えたという。

リモート局(DU)のアンテナ部

 通常、MFHの無線化に用いる10Gbps伝送可能なミリ波高速無線伝送装置は、ビル壁面や街灯等に設置する場合、アンテナを含めた装置全体の小型化が必須となる。一般的にアンテナを小型化するとその指向性は広くなるため、無線MFH区間で送受信される信号には、建物等で反射した信号や、同じ周波数を使用する別の無線装置からの信号等の不要信号が混入し易くなる。加えて、DUは高密度に設置されることから、不要信号の影響は一層増大する。そこで、品質低下が生じないための無線MFH区間特有のアンテナ設置条件を明らかにした。
 この実験では、NECの開発した5G向けC-RAN構成超多素子アンテナ基地局システムのMFHを、NTTが明らかにした無線MFH区間のアンテナ設置条件に基づいて無線化することで、光ファイバの有線MFHの場合と同等の下り5Gbps以上のシステムスループットを達成し、5Gで求められる高速・大容量通信の要件を満たすことを確認した。
 今後は、光・無線MFH区間の伝送帯域削減を含む更なる高度化を進めていく予定だという。