光通信、映像伝送ビジネスの実務者向け専門情報サイト

光通信ビジネスの実務者向け専門誌 - オプトコム

有料会員様向けコンテンツ

関西圏における新データセンタの建設【NTT、NTT GDC、NTT Com】

データセンタ/LAN 無料

 NTTは9月29日、NTTグローバルデータセンター (以下、NTT GDC)を通じ、総額約400億円を投じて京都府内に「京阪奈データセンター(仮称)」(以下、同データセンタ)を建設すると発表した。
 NTTは「本データセンタにおいて、NTTコミュニケーションズ (以下、NTT Com)が2025年度下半期よりサービスを開始する予定だ」としている。

 大阪を中心とした関西圏は、データセンタ事業としては、アジア・パシフィック最大規模である首都圏に次いで急速に成長している市場だ。企業のDX(デジタル・トランスフォーメーション)が進む中、IoTやソフトウェアの開発検証の拠点の拡大や、XaaSなどの事業者のサービス拠点の設置など、地元企業だけでなく、国内外企業から幅広い需要がある。さらに、グローバルで大規模クラウドビジネスなどを展開するハイパースケーラーからも、中部・西日本の顧客を対象としたビジネスを拡大する上で、関西圏へのサービス拠点の拡大が求められている。これらの需要の高まりにより、関西圏の市場規模は2026年に電力容量で約500MWにまで拡大する見込みだ。これらの需要に応じるため、NTT GDCは、京都府内に同データセンタを新設し、NTT Comがデータセンタ関連サービスを提供する予定だ。
 また、NTTグループは、光を中心とした革新的技術を活用した高速大容量通信、膨大な計算リソースなどを提供可能な、端末を含むネットワーク・情報処理基盤の構想であるIOWN (Innovative Optical and Wireless Network)の研究などに取り組んでいる。IOWNの研究および商用サービスの開発を加速するため、同データセンタを活用していく予定だという。
 NTT は「NTTグループは、今後も一層高まると想定される関西圏のデータセンタ需要に応えるとともに、IOWNの早期実現をめざしデータセンタ事業への投資を拡大していく」との方針を示している。

データセンタの概要

立地
 同データセンタは、京都府相楽郡の災害リスクが低い海抜約94mの平地で、大阪市、京都市、奈良市の中心からいずれも車で1時間以内にアクセスできるエリアに建設される。

建物
 建物は地上4階建て免震構造で、合計30MW(当初6MWから順次拡大)のIT機器向け電力容量を10,900m2(4,800ラック相当)のサーバルームに安定供給する。データセンタの国際標準Tier III基準相当の電力・空調・通信設備の冗長化、災害対策、充実したセキュリティを備えるほか、省エネ型の設備の充実により、サステナブルで安全なサービスを提供する。

ネットワーク
 低遅延、大容量のバックボーン回線やアクセス回線の冗長化により高信頼の通信サービス提供はもちろん、各種クラウドやユーザ拠点間を柔軟に接続できるコネクティビティを用意する。さらに、ユーザの要望に応じて他社ネットワークやISPを選択できるキャリアニュートラルなコネクティビティを提供する。

再生可能エネルギーの提供
 地球温暖化の原因である温室効果ガスの排出量を削減するために、同データセンタでは、ユーザの要望に応じて再生可能エネルギーを使って、CO2排出量を実質ゼロにできる体制を準備している。

IOWNの実現に向けて
 同データセンタは、NTTグループの研究開発施設に隣接して建設することにより、IOWNの研究をさらに推進する。協賛企業などとともに商用化に向けた実証実験を行い、将来的には「電力効率を100倍に※1」、「伝送容量を125倍に※2」、「エンド・ツー・エンド遅延を200分の1に※3」するオールフォトニクス・ネットワークなどの実現に寄与する。
 NTTは「すでに同様な取り組みを行っているNTT Comの『東京第11データセンター』(東京都武蔵野市)に続き本データセンタにおいても、IOWNの試験環境を拡大することにより、NTTの研究資産を効率的に活用でき、研究成果の早期実用化を加速する」との考えを示している。

※1:フォトニクス技術適用部分の電力効率の目標値
※2:光ファイバ1本あたりの通信容量の目標値
※3:同一県内で圧縮処理が不要となる映像トラフィックでのエンドエンドの遅延の目標値

データセンタの完成イメージ図