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NTT Comが超大容量400Gbps伝送の長距離化に成功、商用環境への導入にも目途

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フィールドトライアルで世界最長1,907kmの伝送を実現

 NTTコミュニケーションズ (以下、NTT Com)は5月24日、商用環境に敷設した光損失と光非線形性を低減させた新しい光ファイバケーブルを用い、世界最先端の高度デジタルコヒーレント光伝送技術および伝送路設計技術によって、400G光信号による波長多重伝送を実施し、世界最長となる1,907km(札幌から大阪までの伝送距離に相当)の長距離伝送試験に成功したと発表した。

 今回伝送に成功した距離は、商用環境での利用を考慮に入れても十分な伝送距離を担保できる長さに相当するため、基幹の光通信網を担う既設の100G伝送網に光回線容量が現行の4倍となる400G対応のアップグレードを実施する技術的な目途がついたことになる。
 400G伝送網は、4K/8KあるいはVRなどの大容量映像配信の普及やIoTの爆発的拡大に伴う大容量トラヒックの流通に資する世界最高レベルの基幹網の構築を可能にする。さらに、既設の100G伝送網をそのまま用い、伝送方式の変更によって400G化を実現するため、敷設のコストを低く抑えることが可能になる。

背景

 近年の映像データの流通拡大やクラウド技術の進展に伴う基幹光通信網におけるトラヒックの急激な増大に対応するため、NTT Comは世界に先駆けて、デジタルコヒーレント光伝送技術を用いた1チャネル当たり100Gの光伝送システムを導入してきた。
 また映像コンテンツの高精細化やIoTの普及などに伴い、今後ネットワークを流通するデータは更に大容量になることが想定されているため、既に100G伝送網を活用した400G伝送のフィールドトライアルを実施し、成功も収めている。
 そして今回、さらに新技術を投入し、400G伝送を実用段階に近づけるための長距離化に成功したという。

実験のイメージ

実験のイメージ

実験の内容

 本実験においては、400G光信号生成のため、光の位相と振幅の両方に情報を乗せることで情報量の増大を実現する16QAM変調信号とサブキャリア多重を利用している。これにより、既設の100G伝送網を用いながら、光回線あたりの容量を4倍に拡張することが可能となる。また今回は、より実用化に近づけることを考慮し、商用環境に敷設された光ファイバ伝送路を用いた実験環境を構築し、NTTネットワークサービスシステム研究所が研究開発したブレード型小型・省電力トランスポンダを用いて、400G伝送を実施した。
 なお、伝送の長距離化を実現するため、ブレード型小型・省電力トランスポンダには非線形光学効果による光の波形劣化を低減する技術である「デジタル逆伝搬信号処理技術」を実装しており、高精度な誤り訂正技術と併用することで、長距離伝送中に生じる波形歪みの補正を可能にする。
 このような環境下において100GbEを多重して生成した16QAM光信号を最大12波多重し、商用伝送路を1,907km伝送した後に信号品質を測定したところ、エラーがなく伝送に成功していることを確認したという。

非線形光学効果により光の波形は劣化する。それを低減する「デジタル逆伝搬信号処理技術」は、受信した光信号をデジタル信号に変換し、デジタル信号処理で仮想的に光ファイバを逆向きに伝搬させて光ファイバによる線形および非線形歪みを同時に補償する。

非線形光学効果により光の波形は劣化する。それを低減する「デジタル逆伝搬信号処理技術」は、受信した光信号をデジタル信号に変換し、デジタル信号処理で仮想的に光ファイバを逆向きに伝搬させて光ファイバによる線形および非線形歪みを同時に補償する。

今後の展開

 同社は、インターネットのバックボーンにおける通信容量の飛躍的な増大を支えるため、100G伝送網の400G対応の実用化に向けた品質向上などを積極的に推進していくとしている。
 また、400Gおよび400G超の光伝送技術の発展に合わせて、400GbEなどの超高速イーサネット信号の収容が可能な大容量伝送システムや、高性能な光ファイバ伝送路を含めたネットワークの検討を進めていくという。

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