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NEC、工場のIoTデバイスをリアルタイムに制御する高信頼無線ネットワーク技術を開発

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ExpEtherで機器を集中管理・製造ラインの柔軟な変更が可能

 NECは5月25日、工場の製造現場などの機器(センサ・ディスプレイ・ロボットなどのIoTデバイス)を、無線環境でリアルタイムに遠隔から集中制御し、製造ラインの柔軟な変更を可能にするネットワーク技術を開発したと発表した。
 近年、IoTの普及により、工場の製造現場等では、膨大な数のセンサや製造機器などが無線ネットワークに接続されており、これらの機器をリアルタイムに制御することが求められている。
 そこで今回、工場のようなロボットや金属による電波の反射・減衰などが起こりやすい過酷な環境でも、コンピュータと製造機器との安定した無線ネットワーク接続を実現する技術を開発したという。
 この技術は、通信のロスが頻発する可能性のある工場内の無線ネットワーク環境において、再送せずに正しい情報を伝送する「非再送型冗長符号化」方式を適用することで、安定的な無線接続を実現している。

背景

 NECのネットワーク技術「ExpEther」(エクスプレスイーサ)は、コンピュータとデバイスを接続する際に、通常はコンピュータの筐体内部で利用されるシリアルバス規格PCI Expressを有線のイーサネットを通じてコンピュータの筐体外まで伸長することで、遠隔地であっても低遅延で接続することができる技術。これにより、サーバやワークステーションなどのコンピュータをサーバ室など1ヶ所に集めて集中管理し、デバイスのみを現場に配置して、有線のイーサネットで接続できる。
 ExpEtherにより各種機器のリアルタイムな遠隔制御が可能となる。しかし、工場のような作業現場では、機器が有線でつながっていることによる作業効率の低下、製造ラインの頻繁な変更により、有線ネットワークの敷設が困難だ。一方で、IoTにより、工場内のセンサやロボットアームといった製造機器のネットワーク接続へのニーズが高まるとともに、無線の導入も進みつつある。
 今回開発した技術は、ExpEtherを無線化し、低遅延かつ安定した通信を実現するもので、工場における機器の集中管理だけでなく、柔軟な移動が可能になるなど、製造ラインの即時変更にも対応できる。

新技術の特長

「非再送型冗長符号化」方式を採用し、消失したパケットを復元

 パケットロス(パケットの途中消失)が頻発する無線環境では、消失したパケットの再送を繰り返すことにより、コンピュータとデバイスとの間のExpEtherによる通信に遅延が発生し、コンピュータとデバイスの接続断が発生してしまうことが課題だった。
 今回、ExpEtherの無線区間において、消失したパケットを再送することなく受信側で復元する「非再送型冗長符号化」技術を開発。ExpEtherで通信するデータに対して、電波状況に基づいて一度に符号化するパケット数(符号化単位)を決定し、符号化単位ごとに正しい情報が受け取られるまで符号化パケットを次々と生成して送信する。これにより、PCI Expressの伝送遅延の要求性能(~数10 ms)を満たすことが可能となり、パケットロスの頻発する無線環境でも安定した通信を実現する。

コンピュータシステムの遅延モデルを数式化し、伝送遅延を保証

 ExpEtherを無線環境で使用する場合、PCI Expressの要求性能を超える伝送遅延が発生してしまうと、コンピュータが誤動作するという課題がある。そこで今回、「非再送型冗長符号化」方式を採用した無線通信における符号化単位などの各種パラメーターや電波状況と伝送遅延の関係を数学的にモデル化し、パケットの伝送遅延の推定を可能とした。この遅延モデルを用いて「非再送型冗長符号化」を行う際の各種パラメーターを調整することで、PCI Expressの要求性能を満たすような伝送遅延が保証可能となる。

利用イメージ

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