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光トランシーバに見るデータセンタ市場の400Gトレンドと800Gへの挑戦【Finisar】

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 マクニカネットワークスが9月4日に開催した「次世代データセンターネットワーク基盤構築セミナー」では、データセンタ構築・運用に関する最新技術や市場動向が紹介された。セミナーの1つ「データセンター市場における光トランシーバー最新動向」では、世界の光トランシーバ市場で30%以上のシェアを有し、トップベンダの地位を維持し続けているFinisarから、現在の市場動向や、400Gや800Gにおける開発の課題が解説された。

 光トランシーバの売り先でも一番のボリュームとなっている世界のデータセンタ(DC)市場。ここ数年で各シーンにおける伝送速度のアップグレードが進み、これまで10GEだったラック内では25GEが展開、40GEだったラック間では100GEが展開され始めた。そしてDCI、WANといった建屋外のネットワークでは100G/200G Coherentが展開され始めている。Finisar Japan 営業部長の高橋庸輔氏は「2、3年ほど前からトップCloudを中心に25GEや100GEへの移行が始まった。2019年はその流れが顕著になっており、トップCloudによる400GEの展開も加速するだろう。今後、400GEへの展開はその他のCloudやエンタープライズでも展開され、今後2、3年かけて400GEをベースとした新規のDCを構築する動きが加速すると弊社では考えている」と話す。

Dell’OroがまとめたDC市場のポート出荷数の推移を見ると、2019年の時点でポート数は6,000万ポートを超えている。帯域別に見ると25GEと100GEが増え始めており、長年続いた10GE中心のネットワークからの変化が既に始まっていることが判る。


現在のスイッチは1Uの筐体に100Gを32ポート搭載した3.2Tb容量の製品がリリースされている。DCの限られたスペースをより有効に活用することは常に課題となっており、市場からは100Gの次は200Gではなく400Gへのアップグレードという要求が大半を占める。400Gの光トランシーバを32ポート搭載することで、スイッチング容量を従来比の4倍に当たる12.8Tbに高めることが可能になる。現在スイッチベンダ各社は、その実現に向けて積極的に開発を進めている状況だ。

次世代400Gトランシーバへの取り組み

 様々な400G規格がある中でFinisarが先行してリリースを開始するのは、2km以下を伝送する400GBASE-FR8と、10km以下を伝送する400GBASE-LR8だという。高橋氏は「この二つの規格で様々な距離をカバーできるので、これらを先行リリースし、ラック間をMMFで接続するような単距離の400G光トランシーバは、今年から来年にかけてサンプルフェーズから量産リリースをしていく予定だ」と話す。

400Gや次世代100G規格。400Gの変調方式は、従来のNRZから進化し、2通りの振幅スイングで4通りの信号レベルを表すPAM4が推奨変調方式として定義されている。

 短距離の400G製品開発に関してFinisarは、パラレルファイバの本数が少ない規格に注力しているという。高橋氏は「お客様の立場からすれば、100m伝送の規格の中でも16パラレルのリボンファイバを使うものよりは、コストを下げることができる8パラレルや4パラレルの方を望まれると思う。ただ、パラレルの数が少ない場合は、一本当たりの伝送レートを上げなくてはならない点が課題となる。そのために、使用するレーザ自体の性能を上げる光学系の課題が有り、400GではPAM4による多値変調で伝送レートを上げる方法がメインになっている」と話している。
 400Gで使われるレーザの種類を伝送距離の短い順で見てみると、100m以下の伝送については従来通り比較的安価なレーザであるVCSELが使われると予想されている。1km以下の伝送については、従来のパラレル100Gのように4つのレーザチップを並べる方式とは異なる新たなアプローチとして、シリコンフォトニクス上に4つのレーザを形成することで、生産性の向上、コストの低減、低消費電力化、耐ノイズ性の向上を図る方式が考えられている。40km以下の伝送については、従来通りDML(Directly Modulated Laser diode)やEML(Electro-absorption Modulated Laser diode)といった高精度なレーザが使われると見られ、DSPの低消費電力化などの技術開発が求められている。
 高橋氏は「短距離伝送のアップグレードに関しては、従来よりお客様から既設の光ファイバケーブルをそのまま流用したいというご要望を頂いている。例えば10Gから100Gへアップグレードする場合、既設のLCコネクタを使ったファイバ一本の配線から、パラレルのリボンファイバを使った配線に引き直す必要がある。そこで弊社では、トランシーバ内部にVCSELと合分波器を内蔵したWDM技術によって一本のファイバで伝送が可能になるSWDM4という規格の製品持っており、既設のファイバ一本を流用して10Gから40G/100Gにアップグレードできるソリューションをご提供している。SWDM4の製品は今年の前半からボリュームが出始めているので、400Gについてもリリースしていこうと考えている」と話す。

QSFP-DDやOSFPに注力

 400G光トランシーバに関してフィニサーは、二年前にCFP8をリリースしている。ラボや計測器、コアルータで採用されきたCFP8だが、今後の市場では、より小型、低消費電力のフォームファクタであるQSFP-DDやOSFPが求められることから、フィニサーではこの二つをリリースするという。
 QSFP-DDは400G光トランシーバで一番小型のフォームファクタであり、QSFP28と共通のポートを使用できる点が特長だ。トランシーバのピンの位置により、機器側がQSFP-DDかQSFP28かを自動的に判別するので、ユーザはマルチレートのポートを容易に運用できる。これは100Gから400Gへのアップデートを容易にするだけでなく、例えば、400GのポートにQSFP28を実装することで特定の加入者には100Gのサービスを提供する、といった分け方が簡単にできる。
 一方のOSFPは、QSFP-DDに対してサイズは少し大きくなるが、放熱の面で優位性が有るので、例えば伝送距離により熱問題が発生するような場合に適している。ただし、従来の光トランシーバのポートには実装できないので、マルチレートは難しい。
 高橋氏は「市場からはQSFP-DDの要求が高いので、弊社ではリリースに向けて加速しているところだ。もしOSFPの需要が先行した場合でも、スペースや排熱の点でハードルが高いQSFP-DDで造り込んだ技術であれば、すぐにOSFP向けに活用できるので、弊社が市場から遅れることはない」と話す。

OFCやECOCでの展示風景。Finisarでは二年ほど前からこうした展示会で400Gのライブデモを実施しており、例えば400G QSFP-DD LR8/FR8 であれば10kmのファイバケーブルスプールを通して実際にエラーレートに問題がないことを来場者に見せている。

 DC外の長距離400Gについて様々なソリューションが議論されている中、Finisarでは長期的にはコヒーレントのインターフェースが必要になると考えているという。高橋氏は「80kmの400G規格はIEEE P802.3ctとして標準化のワーキングは始まっており、弊社でも開発を進めている。様々なお客様の状況を加味すると、80km伝送はDCIで非常に重要であり、場合によって100kmを超えるとなると、コヒーレントの技術が必要になるだろう。どのようなフォームファクタであれ消費電力をどうやって落とすかが一番重要であり、特にコヒーレントに関してはDSPの消費電力が多くを占めるので、DSPベンダによる低消費電力化、そしてどのくらいのサイズで光トランシーバを造り込めるかという点でDSP自体の小型化も重要な技術となってくる」としており、「一方で、40km以下であれば、コヒーレント技術を使わなくても光部品の性能や精度、造り込みによって実現できると考えている。弊社では400GBASE-ER8の製品も開発対象になっている」と話す。
 現在のDCIは、コヒーレント技術を使ったトランスポンダボックスで80km、100km、もしくはそれ以上の距離を100G、200G伝送するのがメインだ。ここで使われている光トランシーバはCFP2であり、DSPが外付けになるCFP2-ACOが採用されている。高橋氏は「今後は光トランシーバにDSPを内蔵するDCOへの流れが有り、Finisar では200G CFP2-ACOの次として400G CFP2-DCOを開発している。その更に先として、トップCloudも含めてお客様から望まれているのは、DCIをより効率的でリーズナブルに構築するための400G QSFP-DD DCOだ。QSFP-DDならばQSFP28等とポートが共通なので、例えばスイッチのポートを一つアップリンク用に空けて400G QSFP-DD DCOを実装すれば、そこから直接80kmや100km以上の伝送が可能になる。これにより、トランスポンダボックスを使わずにスイッチから直接トランスミッションを行えるというのは、お客様にとって相当なメリットだ。これはCAPEXを減らす非常に重要なテクノロジーとソリューションになるので、今後2、3年で市場の見方も変わってくるのではないか」と話す。

800G実現への議論と現状

 400Gが立ち上がってくる中、Finisarを含めた光トランシーバメーカでは、ユーザから求められている800G光トランシーバをどのように開発していくかの議論が既に始まっている。800Gの規格化には今後三年は必要と言われており、小型化を進めてきた現状の光トランシーバのサイズで800Gが実現できるのか、また、DSPの小型化や低消費電力化といった課題も有るという。高橋氏は「信号品質の確保は400Gの段階でも相当シビアになっており、800Gはプラガブルにするのか、それともオンボードオプティクスのように基板に直接構成する方式等を取らないと信号品質の課題をクリアできないのかといった点も、議論を継続しているところだ。弊社はBOAというオンボードオプティクスのソリューションをご提供しているので、オンボードが求められるのであればBOAをベースに800G光トランシーバの開発ロードマップを考え直すことになる。もしプラガブルのまま進むのであれば、光トランシーバを大きなサイズに戻すのかという議論になる。そもそも、現状はPCB上の配線だが、800Gになるとラインレートが一本当たりボーレートで100Gbaud、これに多値変調を加えて例えば200Gbpsで動くことになると、ノイズが本当にシビアなる。極端なことを言うと、従来、チップとモジュールのコネクタ部分をPCBの配線で結んでいたのを、実験室で使うような物理的にシールドされたFly-Overケーブル等で繋がなければ、プラガブルで適切に動かないのではないかといった様々な見解が技術的課題として出ている。また、25Tb容量のスイッチチップが実現できないと800Gベースのアーキテクチャが組めない」としており、「このように、DC市場における高速化、高密度化が、光通信市場を継続的にドライブしているのは間違いないので、弊社は今後もこのDC市場に注力していく」と話している。

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