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シスコの2020年度事業戦略【3:サービスプロバイダ事業の戦略】

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シスコシステムズ
副社長
情報通信産業事業統括
中川いち朗氏

 シスコシステムズ 副社長 情報通信産業事業統括の中川いち朗氏からは、サービスプロバイダ事業の戦略が語られた。中川氏は「2019年度は主要のサービスプロバイダから大変なご愛好を頂戴し、大幅な二桁成長となった。2020年度もこの勢いを継続すべく、いよいよはじまる5Gと共に日本のデジタルトランスフォーメーションを実現することをビジョンに掲げ、三つの戦略を推進していく」と話す。
 中川氏が掲げる戦略の1つ目の柱は、5Gビジネスプラットフォームの提供に向けて、テクノロジーそしてビジネス両面で圧倒的な業界のリーダーシップをとっていくこと。2つ目の柱は、サービスプロバイダの真の戦略的パートナーになるために、従来のビジネスプラットフォームの手強に加えて、各種マネージドサービスの共同開発による、トップライン、すなわちサービスプロバイダの売り上げ拡大に貢献する体制を整えること。3つ目の柱は、5Gプラットフォームを軸に、企業間で新たなビジネスモデルを創造するためのエコシステムによる市場開拓を推進していくことだ。

1つ目の柱、5Gビジネスプラットフォームの提供

 最新のIDCジャパンの調査によると、シスコは日本のSPルータ市場において、約70%のシェアを獲得している。その背景について中川氏は「データトラフィックが大幅に増加していること、そしてより優れたユーザ体験を実現するために、ネットワークのインテリジェンスというものが中央集中型から分散型、いわゆるエンドユーザ側にシフトしている。シスコはこの流れをいち早く把握して、あらたな技術分野への投資を実施してきた。その結果、セグメントルーティング、あるいはオートメーション、セキュリティといった先進的な技術革新を実現している。その成果もあり、今年に入り、国内外の多くのサービスプロバイダ様からご採用、ご導入が相次いでいる。海外においてはT-Mobile様と世界初の5G NR(スタンドアロン)のデータ通信に成功しており、その他、ベライゾン様、KT Mobile様、ヨーロッパのIliad様など、主要な海外サービスプロバイダ様のご支援を5Gの面でも進めている」と話す。
 一方、日本の市場においてシスコは今年2月、ソフトバンクがIPv6でネットワークを統合するセグメントルーティング(SRv6)の世界初の導入について協力していくことを発表している。また今年3月には、楽天の世界初となる完全仮想化クラウドネイティブモバイルネットワーク構築を記録的短期間で実現するイノベーション構想を発表している。中川氏は「ドコモ様の5Gモバイルバックホール構築を支援することも決定した。文字通り、テクノロジーとビジネスの両面で圧倒的な業界のリーダーシップを確立しつつあると自負している」と話す。

2つ目の柱、各種マネージドサービスの共同開発

 シスコでは、サービスプロバイダのビジネス支援体制を大幅に拡充している。
 まず、各社の投資が高まる関連会社を含めた海外事業展開を支援するために、グローバル事業部を直轄に組織しており、アメリカ、ヨーロッパ、アジアの11拠点に日系サービスプロバイダ専任の営業・SE体制を配置している。これにより、現地のサポートに加え、本社部門との戦略のアライン、方針に沿った一貫した支援ができるようになった。
 国内の取り組みとしては、シスコのソリューションを活用することでサービスプロバイダのエンタープライズ企業、あるいはSMB市場向けのマネージドサービスを開発し、そして販売まで一気通貫で支援する専門部隊、ビジネス開発事業本部を設立している。中川氏は「従来からのビジネスインフラを含めた社内システムのご支援に加え、新たな商材開発による売り上げ向上を支援する体制も整え、サービスプロバイダとのより強固な戦略的パートナーシップを強化していきたいと考えている」と話す。
 サービス共創の事例としては、NTT東日本とのギガらくWi-Fiや、NTTコミュニケーションズとのArcstar UCaaS、SD-WAN、SD-LANがある。直近の事例としては、KDDIがCisco Webex Callingを10月31日から提供開始すると発表している。中川氏は「このCisco Webex CallingはKDDI様が日本で初めて提供する中小から大手企業まで柔軟かつ容易に最先端のテレワークを実現できるクラウド型のサービスであり、既に大手企業からも多数の引き合いを頂戴している」と話す。

3つ目の柱、5Gをベースにエコシステムを共創

 モバイルの市場において4Gまでのビジネスモデルは、あくまでB2C、いわゆるコンシューマ市場が対象であり、一定の市場拡大が終わると需要が頭打ちとなるゼロサムの市場だ。対して5Gサービスは、コンシューマだけではなく、企業のデジタルトランスフォーメーションを実現するプラットフォームにもなる。つまり5G時代におけるモバイルのビジネスモデルは、B2CからB2B、あるいはB2B2Xに大きくシフトする。シスコはこれを、ゼロサムからエコシステムへの転換と捉えており、中川氏は「5G時代では、サービスプロバイダとエンタープライズの両方のネットワークが融合していくと考えられており、両者の技術、知見を持ち合わせているシスコは、この間の橋渡し役を担うという風に自負している」と話す。
 現在シスコがB2B2Xを支援している事例としては、THKやドコモと共に製造業のIoT向けサービスOMNIedgeを提供している。シスコはこうしたB2B2Xユースケースを更に拡大すべく、エコシステムパートナーとの共創の場として、5Gのソリューションショーケースも構築する予定だという。中川氏は「今後、交通、あるいは医療、地方創生、そして建設、教育と、異業種の分野においても、様々なパートナーとの連携をより強化して、ユースケースの拡大を図っていきたい」と話す。

B2B2Xにおけるエコシステムのイメージ

 中川氏は「2020年は5G元年。すべてのサービスプロバイダ様が5G展開の準備を着々と進めている。シスコとしては、日本における5G展開をご支援するための万全の体制を整えている。そしてテクノロジー、ビジネスの両面で支えるベストパートナーとして、5Gと共に日本のデジタルトランスフォーメーションを実現するというビジョンに向かって全力を尽くしたい」と述べた。

レポート目次

1:直近一年の総括と2020年度の事業方針

2:カントリーデジタイゼーション

3:サービスプロバイダ事業の戦略

4:中小企業市場に向けた事業戦略