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シスコの2020年度事業戦略【4:中小企業市場に向けた事業戦略】

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SMB事業のブランド強化と営業活動の取り組み

シスコシステムズ
執行役員
SMB・デジタル事業統括 兼
東京2020マーケティング担当
鎌田道子氏

 シスコシステムズ 執行役員 SMB・デジタル事業統括 兼 東京2020マーケティング担当の鎌田道子氏からは、中小企業市場に向けた事業戦略が説明された。
 シスコでは2016年度より、SMB事業に統括した製品ポートフォリオであるCisco Startを拡充している。これは毎年二桁成長を成し遂げており、特にクラウド型ネットワークソリューションであるCisco Merakiが市場で高い評価を得ている。またCisco Webex製品でもSMB市場に特化した小型の端末、ライセンスモデルをラインアップしている。鎌田氏は「SMBの働き方改革を担うために、もう一つ必要な要素としてのクラウドセキュリティの製品も日本語化およびポートフォリオの拡充に努めてきた」と話している。
 全世界で認められているシスコのネットワーク技術、そして機能群をベースにしたSMB事業は、万全な製品体制と開発能力を有している。課題としては、これまで中小企業のユーザがシスコ製品に触れる機会が少なかったことが挙げられていた。そこでシスコは、東京2020のオフィシャルパートナーとして、また有名タレントを使ったプロモーションにも注力してきた。鎌田氏は「より分かり易い、幅広い裾野のブランド強化を実施した結果、我々のコンタクトセンターにはお客様の問い合わせが非常に増えており、認知度の拡大、需要喚起までを一連の流れで提供することができた。ただし今後の課題もあり、マーケティングによるブランドの強化およびお客様の問い合わせは非常に増えたのだが、その後の営業活動への一気通貫のモデルというのが今まで無かった。そこで本年度から、マーケティングから商談のクローズまでを一気通貫で可能な組織としてバーチャルデマンドセンターを立ち上げた」と話す。このバーチャルデマンドセンターではデジタルマーケティングが強化されており、市場や顧客のニーズをデータ分析してスコアリングし、顧客に必要な情報を提供して支援する体制が整えられたという。
 また、オンラインでの販売チャネルも立ち上げている。シスコの主要な販売はパートナー企業を通じて行われるが、この販売チャネルでシスコ自身がユーザの声をダイレクトに受け取ることによって、パートナー企業にもより支援しやすい環境を整えることができたという。鎌田氏は「パートナー支援強化としては他にも、SMBパートナーコンシェルジェというサービスを立ち上げ、よりSMBのお客様へ迅速に提供できる体制を整えた」と話している。

顧客の規模に合わせた販売戦略

 SMB市場と言っても、10名以下のオフィスから1,000名近いオフィスまで存在する。シスコでは、これらを一つのSMB市場としてターゲッティングするのは難しいと判断し、大きく3つの販売体制を整えたという。
 1つ目は新しいオンラインチャンネルの開拓だ。具体的には、スモールビジネスや個人店舗も含めた中小企業向けに最適化した無線LAN装置Meraki GoをAmazonで販売を開始している。これにより、従来は敷居の高いイメージの有ったシスコ製品をSMB向けに提供し易くなった。鎌田氏は「こちらの主なターゲットは、ネットワーク構築運用を自分で検討されるお客様だ。我々のお客様の多くは、ネットワークは活用が難しく、もし失敗するとセキュリティの問題が有るとして、アウトソースを望まれるケースが多い。その一方で、コストを抑えて自分で運用したいという事業者も増えてきている。そのニーズに応えるべく、初めてオンラインの購入サポートサービスを提供した。この取り組みによって売り上げの貢献もあるが、それ以上に我々シスコシステムズが直接お客様の声を聞き、お客様が必要な情報や、パートナーにお渡しする情報を、より潤滑に提供できる体制が整った」と話している。
 2つ目は、通常のパートナーにおけるSIサービス。これはCisco Startの発売以来、継続的に力を入れている分野であり、SMBの製品の説明やプロモーションの提供、そしてパートナーからエンドユーザに迅速に提案できる体制といった面が強化されている。
 3つ目は、中小企業において非常にブランドが高いパートナーとのアライアンス、そして連携によるマネージドサービスの展開だ。通信事業者やリコーといった、販売チャネルを全国に持っているパートナーと、新しくマネージドサービスを作り、強化して提供していくという。鎌田氏は「これによってSMB事業の働き方変革に貢献できることを願っている」としている。協業サービスの事例は、NTT東日本とのギガらくWi-Fiや、KDDIとのCisco Webex with KDDI、リコーとのRICOH ゲストWi-Fiジェネレータ for Cisco Merakiなどがあり、サービス内容の強化も含めて順調に進展している状況だ。

鎌田氏は「SMB事業の最大の課題は、お客様企業のIT管理者が不足していることだ。それでもネットワークの要望は、大規模の企業と変わらない。そういったお客様に迅速でより安全・安心というブランドで提供するために、様々なパートナー企業との連携、そして自分で構築したいというお客様に向けにオンラインを提供する。これがSMB事業の戦略となる」と話している。

レポート目次

1:直近一年の総括と2020年度の事業方針

2:カントリーデジタイゼーション

3:サービスプロバイダ事業の戦略

4:中小企業市場に向けた事業戦略