MTN SAが、コアネットワークのアップグレードでEricssonのソリューションを導入
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Ericssonは9月29日、MTN South AfricaがEricssonと共同でコアネットワークのモダナイズに成功したと発表した。
Ericssonは「これは、MTNグループのMTN Unified Cloud Acceleration(MUNA)の原則と目標に基づき締結されたコアネットワーク近代化契約に基づき実施された。このモダナイズにより、南アフリカのモバイルインフラには、遅延の低減、データスループットの向上、ユーザ エクスペリエンスの総合的な強化など、様々なメリットがもたらされ、より信頼性が高くシームレスな接続が実現する。
このモダナイズの一環として、MTN South Africaは今年上半期に、Ericssonのクラウドネイティブ・インフラストラクチャ・ソリューション(CNIS)上のデュアルモード5Gコアソリューションから、クラウドネイティブのパケットコアとユーザ管理機能を迅速に導入した。新しいクラウドネイティブ機能の展開に加え、MTN South AfricaとEricssonは、Ericsson NFVIを基盤とする仮想化インフラストラクチャ上で引き続きホストされるその他の様々な機能もアップグレードした。
この近代化プロジェクトは、初期段階で大きな成果を上げている。MTNとEricssonは、Ericssonのパケットコア ゲートウェイ(PCG)ノードとパケットコア ファイアウォールのコロケーションにおける、世界初となるインサービス ソフトウェア アップグレード(ISSU)を完了した。
Ericssonは「このアップグレードはシームレスに実行され、252万のアクティブ ユーザ セッションとネットワークを流れる40Gbpsのデータフローは中断されなかった。このモダナイズでは、アフリカ市場における初のEricsson PCGとISSUも実現した」と説明している。
この初期導入は、Ericssonのクラウドネイティブなクラウド コア ポリシー コントローラー(CCPC)をネットワークに追加することで拡張され、南アフリカおよびアフリカ大陸全体におけるデジタルトランスフォーメーションと自動化の実現に向けたパートナーのコミットメントをさらに強化した。このクラウドネイティブへの進化により、MTN South Africaは従来のポリシー制御システムを変革し、柔軟性、拡張性、運用効率を向上させることができる。
CCPCは、アフリカにおける初のポリシーおよび課金ルール機能(PCRF)として構成され、MTN South Africaが5G NSA向けにリアルタイムの動的ポリシーを実装することを可能にする。さらに、CCPCは5G向けポリシー制御機能(PCF)をサポートし、MTN South Africaが5G SAコアの導入に確実に備えられるようにする。
MTN South Africa はまた、Cloud Container Distribution(CCD)上でContainer-as-a-Service Rolling UpgradeのRolling Upgrade(CaaS-RU)を成功裏に実行し、CCPCが約200万のアクティブセッションを処理している最中でも、中断なくシームレスにアップグレードを完了した。これは自動化の取り組みにおいて重要なマイルストーンに到達したことも示している。
Ericssonは「この成果は、MTN South Africaのクラウドネイティブ インフラストラクチャの堅牢性を示すものであり、ゼロダウンタイムの導入に関する業界のベストプラクティスにも合致している」と説明している。
MTN South Africaのネットワークサービスエンジニアリング&L2サポート担当ゼネラルマネージャーであるSolomzi Mnyaka氏は「Ericssonとのこれまでの共通の成果を基に、今回のコアネットワークの近代化と拡張は、南アフリカにおける現代的で未来を見据えたネットワーク構築に向けた継続的な取り組みにおける重要な一歩となる」とし、「事業の進化とデジタル化を進める上で、適切な技術基盤の確立は不可欠だ。Ericssonのクラウドネイティブなポリシーコントローラとパケットコア ゲートウェイをデュアルモード5Gコアソリューションの一部として導入することで、お客様のご要望への迅速な対応、新サービスの迅速な提供、そして自動化による社内プロセスのシンプル化が可能になる。このパートナーシップは、加入者の皆様のために高い信頼性とパフォーマンスを維持しながら、イノベーションを推進するという当社の重点分野を反映している」とコメントを出している。
Ericsson South Africaの責任者であるSandile Dhlomo氏は「私たちは#AfricaInMotionビジョンに基づき、アフリカ大陸におけるデジタル接続の未来を形作ることに尽力している」とし、「記録的な速さで大規模なコアネットワーク変革を成功させ、クラウドネイティブなポリシーコントローラと5G SA対応のパケットコア ゲートウェイを含むデュアルモード5GコアをMTN South Africaのライブネットワークに導入したことで、拡張性、耐障害性、そしてサービスの俊敏性を重視した完全なクラウドネイティブ コアへの移行を支援している」とし、「このソリューションは、通信事業者のセッション管理、モビリティ管理、ポリシー制御機能を強化するとともに、将来の5G SAの基盤を構築する。MTNと協力することで、南アフリカ全土における収益化、ネットワークの進化、そして充実したユーザ エクスペリエンスをサポートする、より柔軟で自動化されたポリシーフレームワークを実現していく」とコメントを出している。
Ericssonは「当社とMTNの長年にわたるパートナーシップは、1990年代初頭にまで遡り、継続的なイノベーションと相互支援に基づいて築かれてきた。MTN South Africaは、Ericssonの顧客として初めてCCPCをPCRFとして導入したことで、この関係はますます深まり、両社の連携はさらに強化されている。これは、アフリカ大陸全体における包括的かつ持続可能な接続性を促進するというEricssonの#AfricaInMotionビジョンにも合致している」と説明している。
編集部備考
■今回のニュースリリースでは、「252万のアクティブ ユーザ セッションとネットワークを流れる40Gbpsのデータフローは中断されなかった」「CaaS-RUを成功裏に実行し、CCPCが約200万のアクティブセッションを処理している最中でも、中断なくシームレスにアップグレードを完了した」という”中断なし”が何度か強調されているので、本コーナーではこの観点から考察したい。
日本の通信利用者からすれば、「サービスが止まらないのは当然」と感じるかもしれない。実際、日本市場では24時間止まらないネットワークが当たり前という意識が根付いており、NTTなど大手事業者も長年にわたりその水準を維持している。だが、グローバルでは必ずしもそうではなく、特に小規模事業者や、ネットワークの整備が遅れている国では、深夜帯に数分間の計画断を許容するケースも珍しくない。そのため、本ニュースリリースのように”中断なし”を明言することには、高度なネットワークであることを示し、また今後のサービス展開の柔軟性(5G SA/6Gへの布石)を示す材料ともなる。
今回、MTN South Africaが実施した”中断なし”の事例からは、アフリカのTier1通信事業者において「安さ重視」だけでなく「品質・信頼性重視」の必要性が増してきたことを感じさせる。これまで低価格を武器にアフリカ市場でシェアを広げてきたベンダのソリューションが存在感を示してきた一方で、経済やデジタルサービスの高度化に伴い、特に南アフリカのような先進市場では安定稼働が事業者の競争力を左右する段階に入ってきたといえる。
もっとも、MTN South Africaは特に先進的な事業者なので、彼らの取り組みがアフリカ市場全体のトレンドとまではいかないだろう。ニュースリリース内にも「アフリカにおける初」といった表現が複数見られるので、彼ら自身がこの事例を「先進的・先駆的」なものとして位置づけている。ただ、アフリカの通信市場に関するニュースを読むと、高度なサービスに対する需要の高まりや、通信の先進国との差を埋める取り組みを強調する内容が散見される。それらを含めて考えると、今回のニュースリリースは、アフリカ市場における信頼性志向の強まりに対する先進事例であると同時に、同市場を牽引する事業者が示した現時点の最適解とも言えるので、同地域の他事業者が参考にする、あるいは競合として対応せざるを得ない可能性は高いだろう。
MTN South Africaの”中断なし”がアフリカ市場に広がることは、長年にわたり”中断なし”を当然として磨き上げてきた日本の技術・ソリューションにとって、グローバルに活躍できる場が広がっていることを意味する。日本の「当たり前」の一つである”中断なし”が、世界の競争力になりつつあることを示す潮流の一つとして、アフリカ市場に注目したい。