InfraXとEricssonが、UAEのスマートユーティリティを推進するための覚書を締結
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Ericssonは10月31日(ドバイ)、ドバイ電力水道局(PJSC)のデジタル部門であるDigital DEWAの子会社であるInfraXと、GITEX Global 2025において、アラブ首長国連邦(UAE)の公益事業セクターのデジタルトランスフォーメーションを加速するための覚書(MoU)を締結したと発表した。
Ericssonは「この覚書は、IoTと自動化のユースケースの共同開発、専門知識の共有、そして現在の効率性を向上させ将来のアプリケーションにも対応可能なスケーラブルなソリューションの提供を通じて、UAE向けにスマートでコネクテッドな公益事業を構築するというInfraXの戦略を支える」としている。
InfraXは、DEWAの業務を最高水準の信頼性で支える、高度なデジタルサービスと通信インフラを提供する。InfraXは、専用IoTライセンスを通じてUAEにおけるIoTネットワークとサービスの商用化を可能にし、DEWAと外部企業のデジタルトランスフォーメーションを支援する。Ericssonは、ネットワークの近代化、自動化、そしてミッションクリティカルな接続における豊富な経験を、この成長重視の協業に活かす。
InfraXのCOOであるRashid Alahmedi氏は「こうしたパートナーシップは、ドバイの公益事業分野のデジタルトランスフォーメーションを推進する上で不可欠だ。InfraXの堅牢なネットワークインフラとEricssonの技術革新を組み合わせることで、ドバイのデジタルトランスフォーメーションというミッションを支える、安全で持続可能なインテリジェントなエコシステムの構築に向けた重要な一歩を踏み出す」とコメントを出している。
Ericsson のGCC責任者のPetra Schirren氏は「InfraXとの覚書は、アラブ首長国連邦のパートナーと協力し、社会に長期的な価値をもたらすデジタルトランスフォーメーション イニシアチブに取り組むという当社のコミットメントを反映している。公益事業固有のユースケースの共同開発、専門知識の共有、グローバルな実績、そして協働的なイノベーションを通じて、デジタル技術がスマート ユーティリティへの移行をいかに支援し、スケーラブルなアプリケーションを提供できるかを示すことをめざしている」とコメントを出している。
Ericssonは「この覚書は、公益事業業務のデジタル化を導くためにEricssonとInfraXが行っている継続的な取り組みに基づいている。これは、業界全体にわたるより広範なコラボレーションの基盤として機能し、イノベーションとスケーラブルな成長の機会を創出する」としている。
編集部備考
■UAEのInfraXとEricssonがGITEX Global 2025で締結した覚書(MoU)は、ユーティリティ分野のデジタル化が次の段階に進んだことを象徴する一例だ。これまでIoTの導入は、工場や物流など産業領域での効率化を主眼として進められてきたが、今回の提携は、電力や水道といった「公共インフラ」を対象に、IoTと自動化の活用を制度的に推進する枠組みを示した点で重要だ。
 InfraXは、ドバイ電気水道公社(DEWA)のデジタル通信部門として、すでにUAE政府からIoTネットワークの商用ライセンスを付与されている。そこにEricssonの通信技術と運用ノウハウが加わることで、スマートメータリングや漏水検知、需要予測など、ユーティリティ特有のユースケースをスケーラブルに実装する基盤が整う。単なる技術導入ではなく、「公共IoTの社会実装」を国家規模で進める試みといえる。
 近年、世界各地でユーティリティ分野のスマート化が進んでいる。欧州ではスマートグリッドが再エネ政策と一体化し、アジアではスマートシティ計画の中で上下水や交通制御のネットワーク化が進行中だ。中東では、資源依存からの脱却を掲げる国家戦略の中で、ユーティリティのデジタル化が“新たなインフラ投資”の柱となっている。こうした動きは、IoTが産業用途を超えて「社会基盤の最適化」に使われる段階に達したことを示している。
 今回のMoUで注目すべきは、技術仕様よりも「共創」と「スケーラビリティ」が中心に据えられている点だ。ユーティリティのスマート化は、通信事業者やメーカーだけで完結しない。行政、電力、水道、規制当局といった多様なプレイヤーが連携しなければ、実装の持続性が担保できない。InfraXとEricssonが掲げる「ユースケース共創」は、そうした複合的なエコシステム形成へと広がる基盤となる可能性も有る。
 今後の焦点は、データ主権とセキュリティの在り方だ。公共インフラの運用データは国家資産でもあり、リアルタイムで制御するシステムは高い信頼性が求められる。その一方で、IoTがもたらすデータ分析の恩恵は、需給最適化や災害対応など幅広い社会的効果を生み出す可能性を秘めている。UAE発の取り組みは、こうした課題と可能性を両立させる“公共IoTのモデルケース”として注目されるだろう。
 スマートユーティリティ化は、通信の進化だけでなく、社会インフラの設計思想そのものを変える。エネルギー効率や資源循環の最適化にとどまらず、都市のレジリエンスや行政サービスの在り方にも波及する。InfraXとEricssonの提携は、IoTの本質が「接続」から「社会設計」へと拡張していく過程を示す好例であり、通信と公共の連携がもたらす新たなイノベーションの方向性を示唆している。




