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AIスーパーサイクルの要求が、米国と欧州のネットワークインフラ進化に向けた業界横断的な合意を促す【Nokia】

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 Nokiaは12月16日(エスポー)、通信事業者やデータセンタ インフラ事業者、そしてAIの導入・統合を計画している企業や組織など、米国と欧州の約2,000人のテクノロジーおよびビジネス意思決定者を対象とする調査を企画・委託し、結果が明らかになったと発表した。

 同調査によると、米国と欧州のテクノロジーおよびビジネスリーダーの大多数は、AIスーパーサイクルの需要に対応するには、現在のネットワークに大幅な進化と投資が必要になると考えているという。Nokiaは「調査結果は、次世代ネットワーク機能が不可欠であり、ますます複雑化するAIワークロードに対応するためには最新化が必要であるという、コネクティビティ・エコシステム全体の共通認識を浮き彫りにしている。これは、将来のAIイノベーションの基盤となるデジタル基盤を強化するために、業界と政府が一体となって行動を起こす機会となる」と説明している。

 Nokiaの最高技術・AI責任者であるPallavi Mahajan氏は「AIスーパーサイクルの第一波はすでに産業構造を変革し、イノベーションを加速させている。この調査は、将来のAIスーパーサイクルでは、より高度なAIネイティブ・ネットワークと、ネットワーク要件の強化に向けた多額の投資が求められるという、エコシステム全体の明確な認識を示している。AIの進化に伴い、デバイスの相互作用、産業の運営、そして人々の生活やテクノロジー体験を変革する上で、接続性、容量、低遅延性能はますます重要な要素になりつつある」とコメントを出している。

 同調査では、AIがネットワーク要件を再定義する中で、この進化がなぜ重要なのかを説明している。ワークロードはアップリンク中心になり、データフローはより分散化され、レイテンシ、スループット、レジリエンス、セキュリティ、エネルギー効率に対する期待が高まっている。これらの変化は、通信事業者、AIおよびクラウド事業者、ミッションクリティカルな企業だけでなく、国家の競争力や長期的なデジタルリーダーシップにも影響を与える。

 自律走行車やスマート製造ライン、そして監視ドローンや遠隔医療診断に至るまで、AIアプリケーションはエッジで大量のデータを生成し、処理のためにアップリンクに伝送する必要があるため、アップリンクを大量に消費する。これは、ウェブサイトの閲覧や動画ストリーミングなど、ダウンリンク中心の消費者向け用途向けに設計された今日のネットワークに負担をかけている。

 Nokiaは、ネットワークエコシステム全体にわたる連携と、タイムリーなネットワーク投資を可能にする、よりシンプル化され予測可能な規制環境の実現を支援している。Nokiaが委託した調査では、通信事業者、企業、パートナー企業から、AIを効果的に拡張するために次世代インフラに必要な機能に関する視点が提供されている。調査は地域別に分かれたレポートにまとめられている。

米国
 米国は引き続き世界的なAI導入と大量市場での導入をリードしているが、米国の回答者の88%がネットワークインフラの拡大がAI投資に追いつかないのではないかと懸念している。
 回答者は、双方向のデータフロー最適化、拡張された光ファイバ容量、リアルタイムのトレーニングフィードバック、低遅延のエッジインフラを、ネットワークアーキテクチャの近代化とAI成長の次段階を支えるための重要な優先事項かつ基盤として挙げた。

ヨーロッパ
 ヨーロッパでは、企業の回答者の86%が、現在のネットワークがまだ広範なAI導入に対応できる体制が整っていないと答えている。調査対象者の3分の2はすでにAIを実稼働で利用していると答え、半数以上がデータ需要の増加に伴うダウンタイム、遅延、スループット制約などの課題を経験している。
 これらの課題に対処するため、回答者は市場間での規制のシンプル化と整合性、適時のスペクトラム利用、市場統合を可能にする競争政策の調整、そしてエネルギー効率の高いAI対応ネットワークへの業界全体の投資の必要性を強調した。

編集部備考

■今回の調査は、テレコムやデータコムが直面している複数の重要な課題を浮き彫りにしている。その中でも「米国の回答者の88%がネットワークインフラの拡大がAI投資に追いつかないのではないかと懸念している」という点は、今後の市場の方向性を考える上で非常に示唆に富んでいる。この点を材料に、調査とは別の視点で業界の構造を考察してみると、最大の論点として、AIの進化速度と、それを支えるネットワークインフラの拡張・実装プロセスとの間に生じている乖離の要因が見えてくる。
 近年、AIはCognitive AIからGenerative AI、さらにAgentic AIへと、わずか数年単位で進化してきた。この変化は単なるモデル高度化に留まらず、データ生成量の増大、双方向トラフィックの常態化、低遅延処理の要求など、ネットワークに求められる前提条件そのものを変えつつある。結果として、従来のダウンリンク中心設計を前提としたネットワークでは対応が難しくなり、エッジインフラや多層キャパシティ設計を含むアーキテクチャ再設計という課題を生んでいる。
 一方でネットワークインフラ側の問題は、既設のネットワークが必要に応じて積み重ねてきた結果のパッチワーク構造であることや、現時点の技術的限界だけでなく、事業戦略の意思決定と実装の時間軸にもある。AIモデルは年単位、場合によっては月単位で進化するのに対し、従来のネットワークインフラは投資判断、設計、建設、運用までを含めると5年から10年単位の時間軸で動く。通信事業者、大企業、データセンタ事業者はいずれも、急速に変化するAI要件を前に、事業判断とインフラ構築・運用が追いつかない段階に入りつつあるのではないか。
 こうした遅れは単なる投資不足ではない。将来要件の不確実性、短期ROIに最適化された評価軸、そして「一度作ると引き返せない」物理インフラ特有のリスクが、意思決定を慎重にしている側面がある。結果として、AI活用を進めるユーザ企業の期待と、それを支えるネットワーク整備のペースに乖離が生じ始めている。
 今回、北米のテクノロジーおよびビジネス意思決定者が「ネットワーク拡張のペースがAI投資に追いつかない可能性」を認識していることが示されたことは、今後の市場を占う上で具体的なヒントとなる。次の一手として求められるのは、単なる設備増強だけではなく、AIインフラや研究開発への継続的投資を前提としたエコシステム構築の更なる強化や、長期視点と即応性を両立した意思決定構造への転換ではないだろうか。AIスーパーサイクルの本質は、技術革新そのものだけでなく、インフラと組織がその変化速度にどこまで適応できるのかが問われている点にある。