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Nokiaが、AIデータセンタのパフォーマンスとAI対応自動化を強化するため、ポートフォリオを拡充

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 Nokiaは11月13日(エスポー)、AIワークロードの接続における高まるパフォーマンスと拡張性への需要に対応するため、データセンタ・ネットワーキング・ポートフォリオを拡充・強化するとともに、AIを活用してデータセンタ運用の効率性と信頼性を向上させることを発表した。

 Nokiaは、高性能データセンタ スイッチの新製品である7220 Interconnect Router(IXR)シリーズと、イベント ドリブン オートメーション(EDA)管理プラットフォーム向けの強化された運用向け人工知能(AIOps)ツール スイートを発表した。
 同社は「これらのイノベーションを組み合わせることで、エージェント型AIアプリケーションの需要増加に伴う高度なAIトレーニングおよび推論ワークロードをサポートするために必要な、卓越したパフォーマンスと信頼性を実現する」としている。

 エージェント型AI対応アプリケーションの出現と普及は、データセンタの要件を変革し、ネットワーキング ソリューションの急速な進化を促している。AIはこれらの進歩を牽引しており、ネットワークイノベーションと運用変革の両面で大きな機会をもたらす。これらはまさに、Nokiaのデータセンタ スイッチング ポートフォリオの最新開発の原動力となっている。

 Nscaleの最高収益責任者であるTom Burke氏は「AIイノベーションの加速する中で、Nokiaとのパートナーシップは、引き続き大きな事業上のメリットをもたらしている。Nokiaの技術を活用することで、Nscaleは両社の共通のお客様へのサービス提供能力を強化する。今回の発表は、Nokiaのリーダーシップをさらに強化するとともに、両社が協力することで、高度なAI技術を活用するお客様のニーズに最善の形で応えられるという自信を深めるものだ」とコメントを出している。

 650 Groupの創業者 兼 テクノロジーアナリストであるAlan Weckel氏は「Nokiaの新製品7220 IXRスイッチファミリーに搭載された1.6 TEインターフェースの速度は、エージェント型AIの台頭によりデータセンタのネットワーク要件が変化している中で、市場において最適なソリューションとなっている。NokiaのEDAプラットフォーム上で動作するエージェント型AI搭載のAIOpsは、タイムリーなソリューションであり、要求の厳しいネットワーク環境における運用効率と信頼性の向上を実現する。650 Groupの分析によると、今後AIにとってイーサネットが主要なネットワーク プロトコルになると予測されており、NokiaのUECへのコミットメントも素晴らしいものだ」とコメントを出している。

AIデータセンタ向けのスケーラブルなパフォーマンスと柔軟性
 AIデータセンタにおけるスケーラビリティと高性能に対する膨大な需要に応えるため、Nokiaの7220 IXR-H6スイッチは、800GEと1.6TEのインターフェース速度で最大102.4Tbpsという卓越したスループットを実現し、同一フットプリント内でスループットとインターフェース速度を倍増させる。これらのスイッチはUltra Ethernet Consortium(UEC)仕様に準拠しており、パケットフローの最適化と管理、輻輳の回避、そして最大100万XPUを超える大規模AIファクトリー環境におけるネットワーク効率の向上を目的とした高度な機能を提供する。

新製品7220 IXR-H6スイッチファミリーの概要
 Nokia 7220 IXR-H6ファミリーは、多様な導入シナリオに対応する優れた柔軟性を提供する。液冷式と空冷式の両方のモデルが用意されており、シームレスな統合が可能で、様々なデータセンタ ラック構成に対応する。

 Nokiaは、組み込みネットワーク オペレーティング システム(NOS)とSONiCの両方をサポートするハードウェアを提供する唯一のベンダだ。新製品スイッチは、NokiaのSR Linuxネットワーク オペレーティング システム(NOS)またはオープンソースのコミュニティSONiCで構成でき、データセンタ事業者に幅広いソフトウェアソリューションの選択肢を提供する。Nokiaの専門的な開発・サポート体制により、事業者は、特定のインフラストラクチャ ニーズに合わせてカスタマイズされた信頼性の高いオプションを利用できるため、安心して導入を進めることができる。

AIを活用したネットワーク運用
 常時接続サービスの提供が喫緊の課題となっている中、クラウドサービス プロバイダと企業は共に、データセンタ ネットワーク運用ライフサイクル全体を通してダウンタイムを削減し、回復力のあるパフォーマンスを確保するために、自動化、AIOps、そしてモダナイゼーション戦略を優先している。運用規模と複雑性が増大する今日の環境におけるこれらの要件に対応するため、Nokiaはイベント ドリブン オートメーション(EDA)プラットフォームに革新的なエージェントAI対応機能を導入する。EDA AIOpsは、自然言語インタラクションのシンプルさとエージェントAIの推論能力を組み合わせ、データセンタ ネットワーク環境全体における迅速かつ正確な問題特定、根本原因分析、そして修復を実現する。EDAの広範なリアルタイム テレメトリ、統合デジタルツイン、ドライラン、そしてインスタント ロールバック機能と組み合わせることで、ネットワーク事業者は自信を持って迅速に問題に対処し、データセンタ ネットワークのダウンタイムを96%削減できる(※Bell Labs ConsultingとFuturumの最新レポート「Data center fabric reliability study」による)。

 NokiaのIPネットワーク事業担当 SVP 兼 ゼネラルマネージャーであるVach Kompella氏は「AI導入の驚異的な増加は、データセンタの運用方法を劇的に変革させ、ハードウェアと運用ツールの絶え間ない進化を促している。Nokiaは、高性能スイッチ7220 IXR-H6シリーズの新製品と、進化したEDAプラットフォームを発表できることを嬉しく思っている。これらのプラットフォームは、高度なエージェントAIを活用し、変化のスピードに対応できる信頼性の高いネットワーク運用を実現する。本日は、Nokiaのデータセンタ・ネットワーキング・ポートフォリオにおける数々のマイルストーンの一つだ。これにより、世界中のお客様に、AIのスーパーサイクルを支えるための更なる技術革新をお届けできることを楽しみにしている」とコメントを出している。

 Nokia 7220 IXR-H6スイッチは2026年第1四半期に発売予定。Nokia EDA AIOps機能は、本日デモを開始し、2025年末までに導入予定。

編集部備考

■AIワークロードの爆発的な増大は、データセンタとネットワークの境界を曖昧にしつつある。従来はサーバ資源を中心に議論されていた“AI の処理能力”は、今やネットワーク側にも同等レベルのパフォーマンスと柔軟性を求めるようになった。大規模学習モデルのトレーニングは、多数のアクセラレータ間で膨大なデータを同期させるため、内部ファブリックに低遅延・高スループットを要求する。さらに推論の分散化が進む中で、データセンタ間の接続性能や信頼性、運用の自動化は AIサービス提供の前提条件となりつつある。こうした背景のもとで、「AIデータセンタ向けネットワーク」は通信事業者・クラウド事業者双方にとって戦略基盤となり、今後の通信インフラ進化の焦点に浮上している。
 しかし、この領域は課題も多い。まず性能面では、スケールアウト型AIシステムが数十万規模のXPUを相互接続する環境を想定し始めており、データセンタ全体でTbps級の帯域を確保する必要がある。次に、実装面では電力・冷却・ラック密度の調整、空冷/液冷の混在など、物理層の複雑性が増している。また、ネットワークOSや運用ソフトウェアの多様化により、統合管理と自動化の需要が高まっている。特にAI時代の運用は、人手による障害検知・復旧ではもはや限界があり、AIOpsを前提とした運用体系への移行が避けられない。こうした“性能・密度・運用”の三重負荷は、すべてのデータセンタ運営者が直面する共通テーマであり、技術ベンダ側の対応力が問われる領域でもある。
 今回 Nokia が強化したポートフォリオは、まさにこれらの課題に応える形で設計されている。同社はこれまで通信キャリア向けIPルータや光トランスポートで高スループット・高信頼性を提供しており、そのノウハウをデータセンタ内部ファブリックに応用する形で、スイッチ製品・OS・AIOpsプラットフォームを一体として拡張した。高密度の 1.6Tイーサネット対応や液冷/空冷の双方をカバーする筐体設計、SONiCを含む複数 OSを選択できる柔軟性など、“AIデータセンタの多様性”を前提とした構成は、従来のネットワーク機器ベンダとは異なるアプローチといえる。また、EDA(運用自動化プラットフォーム)に代表されるAIOpsの強化は、キャリア領域で長年磨いた運用技術をデータセンタ向けに転用したものだ。
 今回のポートフォリオ拡充は、単なる高性能スイッチの提供ではなく、Nokiaが“AI 時代のデータセンタとネットワークをつなぐ総合プラットフォーマー”としてのポジションを強化したといえる。オープンOS対応、高密度ファブリック、運用自動化、冷却方式の柔軟性といった要素は、どれも AIデータセンタの変化を正面から捉えた設計思想に基づく。既存のキャリアネットワークとAIデータセンタを橋渡しし、将来的なエッジ/クラウド統合にも拡張余地を残す点は、通信業界のプレイヤーにとっての重要な選択肢となり得る。
 AIによってネットワークとデータセンタが一体のシステムとして再編されていく中、Nokiaの戦略は“通信インフラ企業としての強み”をデータセンタ領域へと広げることに成功している。AIとネットワークの融合が今後の競争軸となる中で、Nokiaがどこまで存在感を示せるかは、通信業界全体の潮流にも影響を与えるだろう。